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SSのログ

海に沈む夕焼けを見ることのみで様になる男はそういない。
……と、恋人のアーダルベルト・フォン・ファーレンハイトを見て思う自分がいた。
仕事の関係で行く自分と、ファーレンハイトの休暇を合わせて取って訪れたのが、このイスタンブールという歴史のある異国の街だった。
そして、そこで久しぶりにファーレンハイトと長く共に過ごすことができて、この上ない幸せを噛みしめる自分もいる。
もちろんファーレンハイトは顔だけ、性格だけというどちらかのみの男ではなくどちらも兼ね備えた魅力的な男性であるから、見惚れて幸福を感じるのは至極当然なのだろう……。
「……どうした、疲れたのか?」
不意にその意中の男性から声をかけられて、びっくりする。
「いいえ……!まだまだ夜のモスク巡りでもできるくらい元気よ……!」
「そんな君の国の洋館巡りと同じテンションで行くものではないと思うが……」
故国の幽霊が出る屋敷の人気ツアーのことを言われ、黙り込んでしまう。
「……素直に言っても、笑ったりしない?」
「その前置き、なんだか怖いな」
「夕日を見つめるアードは、とてもかっこいいなぁって思ってたの」
今度は、ファーレンハイトが驚く番だった。
「君はこの綺麗な夕日を見ないで、俺を見ていたのか」
恋人のいじらしさに、ファーレンハイトはフフッと笑う。
「久しぶりに会ったもの……お昼のエジプシャン・バザールは交渉に集中してたからあなたを見れなかったし」
――その姿に、俺は見惚れていたんだが……。
バザールの中の異国のスパイスやスイーツ、そして美しいトルコランプに囲まれている彼女に夢中になる自分がいたのは……彼女は知らないだろう

「それは……まぁ仕方ないな」
「でしょう?素敵な恋人の顔を、もっと見つめさせて頂戴な」
そうして、ファーレンハイトの頬をそっと両手で包んだ。
ファーレンハイトは、その動作の隙に彼女の唇を奪う。
「……っつ、アード?」
「見つめるのは、君だけか?」
「え……どういうこと?」
「俺にも、見つめさせてはくれないのか?そうだな…………顔だけじゃなく」
それを聞いた彼女は、ランプに明かりが灯るようにボッと頬を赤らめたのだった。
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