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SSのログ

カツリ、カツリと特徴的な靴の音が廊下の向こうから聞こえてくる。
「……シ……ホーエンツォレルン准将」
「――これは閣下、いかがなさいましたか?」
士官学校時代の後輩にして、今や同じ貴族連合軍の下で戦うエリザベート・フォン・ホーエンツォレルンを見かけたファーレンハイトは、すれ違わずに彼女を呼び止める。
「卿の遊撃隊は、メルカッツ提督の指揮直属になったのだとか」
「あれはメルカッツ提督が私の遊撃隊をブラウンシュバイク公が解体する前に守ってくださるためになさったこと……異存はありません」
なるほど、表向きはそうだよな……とファーレンハイトは納得する。
「では、シシィとしては?」
すると、一瞬彼女は目を見開いた。
しかしすぐ真顔に戻る。
「……そうですね……なかなかアードには追いつけないなぁ、でしょうか……では、これで」
エリザベートは、敬礼をしてからファーレンハイトの前を辞した。
ファーレンハイトは、上手いこと身長差を利用して表情を読み取らせなかった彼女の代わりに唇を噛む。
そう、彼女は「アード、助けて」と頼るような人ではない……遊撃隊の男たちを率いる軍人なのだ。
――彼女は、もっと評価されるべきなのに。
アード、と紡ぐ彼女が自分と同じ立場で指揮を取れたら………どんなに心強いか。
しかし今は、彼女が毎日使っている慎ましやかなバラのハンドオイルの香りだけが、その場に残っていた。
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