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海外の版権作品系

カーン…ことジョン・ハリソンが目覚めさせられた時以来、彼が意識せずともあらゆる女性が彼に寄って来た。
ー人間よりも、超人の方が好き…か。
久方振りの現世、更に同胞のいない寂しさを紛らわしがてら、彼女らの望むことをしてやった。
しかし、次第に飽き飽きしていた。
ー面白くない。
単調であり、かつまた“感情”が鬱陶しい。
彼女らの向けてくる、猫が主人に向けてくるような“感情”が。
たまに湧き上がってくる怒りで、彼女らを殺してしまいたくなるが、未だ自分が表立って行動することが“上”から認められていないため、抑えることしか出来なかった。

******

数日後、ジョン・ハリソンはその“感情”を向けてこない女性と出会った。
「初めまして、ジョン・ハリソン司令官」
涼やかで耳に残る声音を持つ女性だった。
「ー君は?」
「あなたの補佐官になりました、エステル=カーソンと申します」
ー“上”の奴らめ、監視を向けて来たか。
ジョン・ハリソンは、呆れたようにエステルを見た。
「ーまぁ、好きにするといい」
「ありがとうございます」
エステルは、嬉しそうな表情をする。
飾らないその笑顔に、ジョン・ハリソンは無意識に笑い返してしまった。

エステルとの日々は、とても穏やかだった。
彼女が横にいたら、鬱陶しい“感情”を向けてくる女性は寄ってこないからだ。
エステルは仕事と割り切っている故か、ジョン・ハリソンのプライベートには介入してこない。
仕事だけの、さっぱりした関係。
ー至極、心地よい。
ジョン・ハリソンは、つかの間…寂しさを忘れることができた。
「ーエステル、その手のあざは?」
ある日、ジョン・ハリソンはエステルの手に青黒いあざができているのに気付く。
「…あ、これは…ちょっと、机でぶつけてしまって…」
エステルは、さっと手を隠す。
「ー馬鹿な、机程度でそんなあざはできまい」
「本当ですってばっ…」
声を荒げたエステルの様子に、ジョン・ハリソンはそれがただならぬことを察する。
「ーエステル、何故声を荒げる?」
「あなたには、関係ありません…」
「部下が健康な体であることを気遣うのも、上司の仕事かと思うが」
エステルのプライベートに入りつつあることは、ジョン・ハリソンも充分自覚していた。
ーしかし、エステルのことを知らねば。
もっとエステルのことを知りたい、今までどの女性にも湧かなかった“感情”が湧く。
「…分かりました、では仕事が終わり次第…秘密にして下さるというなら…お話します…」
エステル、それだけ言って仕事に戻って行った。

夕刻、仕事が終わるとジョン・ハリソンはエステルと共に家に戻った。
家…といっても、本当に必要最低限のものしかないし、ひどく殺風景だ。
「ーエステル、そのあざはどうした?」
「…上司にされただけです、あなたに私を派遣した上司に」
「ー何故?」
「さぁ…全く分かりません」
エステルは、首を横に振る。
「ー何故私に言わない?」
「…あなたには、関わりありませんし…。上司には、病にかかっている弟の治療費を援助してもらっているという恩もありますから…」
「ー弟?弟がいたのか?」
「ええ…15になる弟が」
エステルは、自分が弟と共に孤児院で育ったことをジョン・ハリソンに話した。
「ーそうか、そのようなことが…」
「だから、私は…」
エステルは、その先の口を閉ざした。
ジョン・ハリソンは、エステルを抱きしめる。
「もういい、話すな。辛かったろう…」
エステルは、そっと涙を流す。
「ごめんなさい…」
ジョン・ハリソンは、流れるエステルの涙を指で拭う。
そして、自然とエステルとキスをしていた。
「エステル…」
そのまま、2人は恋人の夜を過ごした。

******

次の日、2人はエステルの弟を見舞いに行った。
そして、彼が長くないことを知らされる。
落ち込んでいたその日のエステル以来、ジョン・ハリソンは彼女を見なかった。
数日後、ジョン・ハリソンの前にエステルの過労死の知らせが届けられた。
「エステル…!」
ジョン・ハリソンは、信頼できる人物から彼女は上司に毒殺されたのだと聞いた。
ジョン・ハリソンの監視上任務の規約違反により…という理由で。
「…エステル…!!」
ジョン・ハリソンは自らの過ちを悔いる。
エステルは自分に身上を知らせてはいけなかったのに、彼がそれをさせてしまった。
彼が忌みていた“感情”…“愛“により。
「エステル…すまぬ…」
ジョン・ハリソンはエステルの弟に血を与えつつそう呟いた。
「エステル…」
その声は、悲しげで、何かを思っていた…。


そして、後に“愛”が弱点である人類に反逆することを決意したのだった…。








→あとがき

彼が人類の弱点は…“愛”、と言い切ったのは…自らそれを経験しているからだと思って書いてみました。

彼がエステルを蘇らせなかった理由は、辛いあまりにすぐに思い出にしてしまったのもあるし、また彼女に会えなかったからです…裏話ですが(笑
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