ko-chan
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「....分からん」
本屋の中をぐるぐるぐるぐる。隅から隅まで回ったはず。あまりにもぐるぐるし過ぎてそろそろ目が回りそう。だと言うのに、目当ての本が見付からない。本の種類をアルファベットや数字で区分されていれば、もっと早くに見付けられたと思う。検索機に表示されたのは店内の簡略地図のみ。検索機で印刷して出てきたのも、目当ての本があるであろう場所が黒く塗られた店内の簡略地図。
「どこだよぉ」
この本屋に来たのは二度目。商業ビル内にあるこの本屋は割と広めで、置かれる本達はバラエティに富んでいる。ここなら昨日発売されたばかりのマイナーな漫画もあるだろうと踏んで訪れたのだが。お目当ての本は一向に見つからない。
方向音痴とか、地図を見るのが下手とか、自力で探すセンスがないとか。全部分かった上で先ずは自分で探し出して、見付けて、実物に触れる時の小さな感動を味わいたかったんだよ。思わず小さく溜息を吐く。いい加減諦めて店員さんを頼ろう。レジはどっちだっけ。
「あの。良ければ一緒に探します」
中肉中背。いや、平均より若干丸めだろうか。声をかけてくれたその人は、私より少し若そうな男性だった。
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夕飯を食べたついでに参考書を買いに来ただけのつもりだった。
エスカレーターを降りてこの本屋に入ろうと思った時から、迷ってる人が居るなぁと思ってはいた。この階一帯が本屋になっているから迷うのも無理はないかとも思いつつ、真っ先に求めている参考書のコーナーに行く。どれがいいかとパラパラと捲って、自分に合った内容かどうか確かめている最中に、どこ?とか、えぇ?って小さい声で唸りながら二回も同じ人が通って行ったら、流石に気になるでしょ。何で店員さんに聞かないんだろうとかさ。漫画のコーナーに移動してみると、まだ見付からないみたいで、溜息をつく姿があまりにも悲壮感が漂ってるから、何か可哀想に思えてつい声をかけたんだけど。
「いいんですか?」
救世主が現れた!みたいなキラッキラな視線を向けてくる女の人は、俺と年齢は変わらないくらいに見える。本当に困ってたんだろうなぁ。そこまで困ってるなら店員さんを頼ればいいのに。
「その紙見てもいいですか?」
「はい。お願いします」
ん?これ新刊コーナーじゃね?エスカレーターを降りて直ぐの所に分かりやす〜く置かれてるやつ。
「多分、こっちですね」
後ろをトコトコ着いてくるその人を新刊コーナーまで誘導して、同じタイトルの本を探す。ビックリするくらい直ぐに見付かった。
「これじゃないですかね?」
「うそ..何回も見に来たのに...」
うそでしょ。何回も見に来たのに見付けられなかったってこと?逆に凄いと思うよ貴方。
ありがとうございます!と頭を下げるその人に、流石にそんな失礼なことは口に出さず、いえいえと笑って大人らしい対応をする。