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名前設定
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早起きが苦手な名前さんが昨朝四時半過ぎにバタバタと家を出て行った。その日の内の二十三時前に帰ってきた彼女はぐったりとした様子でだらだらと風呂に入り、スキンケアやら何やらを済ませたら、二十五時を少し過ぎた頃にのび太くん並の速さで入眠した。
そして翌日となる本日十六時。起きる気配が全くない。飯も食べずトイレにも行かず。泥のように眠っている。十三時頃に一度目を覚ましたが、スマホで時間を確認しただけで、また直ぐに眠ってしまった。
昨日の彼女はこの部屋に居ない間、従妹の結婚式のために田舎へ帰っていた。一泊することを提案したけど、頑として日帰りだと聞かない彼女に、俺は口を閉ざすしかなかった。
親子仲が悪いのかと言われるとそうではないが、両親や親族と価値観が合わないらしい。その旨を主張はせず、ニコニコしていることに徹しているのだそう。良い子のフリも大変だな。
ヘッドボードを背もたれに、イヤホンを耳に挿し込んで動画を見ていると、名前さん何度目か分からない寝返りを打った。
「....」
あ、起きた。また寝るかな。
「ん゙..」
身体が重いのだろう。ゆったりとした動作で起き上がって俺のカワウソを抱き締める名前さんは、ゆらゆらと上半身が前後左右に揺れて安定しない。
「おはよ」
「...ん」
目を開けたり閉じたりを繰り返してる名前さんに腕を広げると、俺を跨いで全体重を預けてくる。隅へ置き去りにされたカワウソを横目に、俺の肩にもたげてきた頭を撫でると、ぐぎゅる、と名前さんの腹が鳴った。
「ごはん..」
「目玉焼きなら冷蔵庫にあるよ」
名前さんが作ってくれるような半熟じゃないし、両面焼きだけど。
目玉焼きって意外と難しい。当たり前の様に両面焼きにするもんだと思ってたし、どうやったら半熟になるのか、卵二個分じゃ分からなかった。
「パン焼く?」
「やく」
小さな背中を二回ぽんぽんと優しく叩くと俺の上から降りてく。ぽてぽてと覚束無い足取りで寝室を出る名前さんの後ろを着いていく。まだ眠いんだろうな。
名前さんが顔を洗ってる間に焼き上げたトーストは、こんがりキツネ色に焼き上がった。マーガリンを薄く塗って、レンジで少し温めた目玉焼きを頑張って乗っける。塩胡椒を軽く振ったら完成。目玉焼きトースト。紅茶は名前さんがお気に入りのやつ。
「んん〜、いい匂い!ありがとう」
やっと目が覚めたらしい名前さんに頭を撫でられて悦に入る。美味しいと幸せそうに笑う名前さんにまた喜びに浸る。この人が笑うと俺も嬉しい。
「夕飯どうする?」
「名前さんが好きな物食べよう」
そろそろトイレットペーパーが切れそう。他に買う物あったっけ?パンも無くなりそう。買い物してる内にまたお腹空くかな?あとで昨日の写真見せて。夕飯の時に見せたげる。
何気無い会話が弾む。疲れているハズなのに、嫌な顔一つせず予定になかった買い出しに行こうと言ってくれる。今日も名前さんが隣に居る。
「ちょっぱやで準備するね〜」
少し気の抜けた可愛らしい素顔から綺麗で大人っぽい女性に様変わりしていく姿は、いつ見ても魔法みたいで不思議に思う。女の人って凄いな。
「お待たせ」
本当にこの人が俺の彼女なんだ。
水戻しモードに入った名前さんが笑いかけてくれる度に信じられなくてドキドキする。名前さんはその内慣れるよって言うけど一生慣れない気がする。
「今日も綺麗です」
「綺麗にしてる時だけ〜?」
「メイクしてない時はかわいいです」
俺の素直な言葉に照れる姿もかわいい。普段はしっかりしてる名前さんが、こんな表情を俺だけに見せてくれるのが嬉しくて思わずニヤける。あー幸せ。
「昨日お友達に俺のこと言いました?」
「言えないよ!噂の波は怖いんだから!」
「..次は俺も一緒に行く」
はいはい。と、あやす様に笑って頭を撫でられれば、もう何も言えない。惚れたもん負け。だから、俺の負け。
「追々ね。いつか晃樹の御両親にも御挨拶しに行かなきゃだし」
「よっしゃ」
だから、貴方も負け。
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