｢友達の子供可愛かった〜！｣

中学の同級生と久々に会ってくる！
ご機嫌な表情でそう告げられたのは3日前だっただろうか。本当に楽しみだったのか、今朝は随分と張り切った朝食が出された。
帰って来てからは朝よりもずっと機嫌が良く、子供好きで匂わせなんて発想は欠片もない5つ下の名前は、本心から楽しそうに俺に話を聞かせてくれる。

｢1歳半のお腹ってふにふにでね、抱っこさせてもらったんだけどこっちに来た瞬間嬉しそうな顔をしてくれて！別れる時も、ニコニコでばいばいしてくれたの！｣

そう語る名前は、何だかだんだん語彙力が下がっているような気がするが、可愛いので問題ない。

｢へぇ〜、仲良くなれて良かったじゃないの｣
｢うん！また会いたいなぁ｣

心底嬉しそうに友達の子供を可愛がる姿に、心の中で親戚か？と突っ込みを入れる。
にしても、お嬢さんは御自身の左手の薬指に居座るそれをお忘れなんじゃなかろうか。そりゃあ、俺が博士課程を修めた上で会社が軌道に乗るまで結婚は待って欲しいとは言いましたけども。
ただ前に1度だけ、俺達もそろそろかなぁ。なんてかまをかけたら怒られたことがある。

『私の年齢や、周りの目を気にして結婚したがいいかなってこと？それなら私は断るよ。確かに駿貴くんと幸せな家庭を築いていきたいとは思ってるけど、駿貴くんにその気がないなら嫌だ。私の思う幸せな家庭は、駿貴くんが余計なこと抜きにして心から私と結婚したいと思ってくれて初めて成り立つから』

ぐうの音も出ず、素直に謝ったのをよく覚えてる。5つも離れてるとは思えない程、真っ直ぐでしっかりしてる女性。俺には勿体ないくらい、俺より大人な女の子。本当に頭が上がらない。
俺が別のことを考えてるなんて気付きもせず、楽しそうに友人と子供の写真を見せてくれる名前。
うん。俺の幸せはやっぱりここにあるわ。

｢名前｣
｢んー？｣
｢明日、結婚指輪買いに行こうか｣

実は1か月前から来店予約をしていた。
なんて事実を教えたら。
随分前に貴方がスマホで、とある指輪に釘付けになっていたのを忘れられず、必死にブランドを調べ尽くして2ヶ月前やっと見付けた。
そんなことまで教えたら。
嬉しいのか困惑しているのか泣きそうになりながら、そんなつもりじゃ…と、アワアワしている顔も少しは綻んでくれるだろうか。

｢俺と結婚してください｣
｢不束者ですがよろしくお願いします｣