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名前設定
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あれだけ暫く恋人は要らないと言っていた名前に彼氏が出来た。それも女の私が心底羨ましくなる程の色白美人。
あ、どうも、名前の友人Aです。
実は先日、名前に彼氏が出来たと発覚しまして。中学からの友人達の中でも特に仲が良くて、ちょこちょこ連絡を取っては頻繁に会ってる名前について知らないことは殆どないと思っていたからショックを受けてまして。それも発覚の仕方も、まぁ〜そこそこにショッキングでして。
いつでも話を聞いてくれる名前に甘えて、この日は遅い時間に電話をかけたら案の定話を聞いてくれたんだけど。スマホを置いてトイレに行ってる間にどうも寝落ちたらしい名前。名前を呼んでも返事が返ってこないから、寝たのかな〜と思った次の瞬間に聴こえてきたのは知らない男の声だったのです。
『すみません、彼女寝ました』
「えっ、誰?」
『彼氏の河村です』
いや誰だよ。なーんて言葉を飲み込んで大人の対応をして通話を切った私を褒めてくれる人が1人くらい居ていいと思う。私えらい!
斯くして、翌日名前に問い詰めたら、紹介する。と言われて今に至るのだが。
「で、いつから付き合ってるの?」
「んーと、いつから?」
「半年前から」
聞いてない。その間、何度か電話したりご飯に行ったりしたのに何にも聞いてない。確かに私も気を利かせて、名前が言い出すまでは合コンに誘ったりするのは辞めてたけども。
一言くらい言ってくれたっていいじゃん。口には出さなかった言葉を見透かしたように、私だけには言ったつもりだったんだけど言ってなかったけ?と首を傾げる大切な友達。
私だけに言うつもりだったんだ。ふーん。ま、この子はしっかりしてそうで、ぽや〜っとしてる所があるからね。しょうがないわ。
「改めまして、名前さんとお付き合いさせて頂いてます。河村拓哉です」
「名前の1番の友達です」
ちょっと大人気ない気もするけど、そんなこと気にしない。
大学時代に学科が一緒でね、と話す名前に、へーとかふーんと適当に相槌を打つ。私が聞きたいのはそこじゃない。
「ねぇ、何で付き合おうと思ったの?男紹介するって言っても今はいいの一点張りだったのに」
ほ〜んの少しだけ込めた嫌味に気付いているのかいないのか、うーんと考え始める名前。考える時に、口がちょっとだけへの字に曲がる所は昔と変わらない。
「1番はー、タイミング、かなぁ?他にも色々あるけどあの時は、そろそろ視野を広げてもいいかもって思い始めた時だったから」
そう。やっと出来たチャンスに食らいついたのがこの男ってわけね。はぁ〜、前が向けるようになったら、私が1番にこの子に見合う良い男を紹介するつもりだったのに。
名前の向かいの席でブラックコーヒーを飲むカワムラさんと、彼の隣は照れくさいからと私の隣に座ってオレンジジュースを飲む名前。どうせだし、聞きたかったことを聞いてやろう。
「カワムラさんは、この子の元彼知ってるんですか?」
「はい、散々聞かされてたんで」
リラックスした顔が一気に居心地の悪そうな顔に変わる名前を無視して、続けて質問を投げる。
「この子が別れてから適当だけど本気で言ってた恋人の条件知ってます?」
「元彼以上に最高な人ですよね」
そう。元彼以上。無茶苦茶だと思った。
この子の元彼は完璧な人だった。年齢に対して少し若く見えるイケメンだし、明るくて名前をリードしつつ、頭の良さと歳上の包容力と嘘が付けないお世辞も言えない性格で、この子の甘えベタも天邪鬼も全部包み込んでた。何より名前だけを一心に愛してたし、2人は心から愛し合ってた。
名前はいつも自分には勿体ない人だって言ってたけど、私はこんなにもお似合いのカップルは他に居ないと今でも思ってる。
「じゃあ別れた理由も?」
「ねぇ、それ今必要な話?」
「一身上の都合で結婚を考えられないから、名前の人生の責任を負えない」
名前の言葉を無視して私の質問に答えるカワムラさんは、どこまでも穏やかな表情。この様子だと元彼がどんな人かも聞いてたんだろうけど、その先が読めない。そこがなんかムカつく。
「で?貴方はこの子の人生の責任を負えるの?」
「そうですねぇ」
カワムラさんが名前に視線を向けたのを見て、それに合わせるように私も、オレンジジュースを見つめる彼女の横顔を見る。彼女が別れ話をされた日に、私に電話口で言ってた言葉を思い出す。
私の人生は私にしか負えないのに。私はあの人に幸せにして欲しかったんじゃない。籍は別でも同じ墓に入れなくても、一緒に幸せでいたかっただけ。
昔から結婚に対してあまり興味はない子だったから、余計言葉に重みを感じたのをよく覚えてる。
「僕には自分の人生しか責任を負えません。他人の生き死にまで干渉する気は更々ないですし、責任を負うとか軽々しく無責任なこと、ここで言える勇気も勢いも僕は持ち合わせてないので」
ただ、名前さんが、僕と居て幸せだと思ってもらえる努力を現在進行形で行ってる最中です。
「カァ〜ッ!歯が浮くかと思ったよ!」
「もー。拓哉に向かってあんなこと言うと思わなかった」
すみません、この後仕事があるので僕はこれで。
諭吉を1人置くと、私に会釈、名前に右手を上げてカワムラさんはカフェを出た。なんだ、意外と気ぃ利くじゃん。
カフェを出て、店員さんにあまり気を使わなくていいファストフード店でポテトを貪る三十路手前の女2人。
「真面目そうな人だね」
「見た目だけね」
「え、あの面で不真面目なの?」
「不真面目って言うか、真面目に不真面目?」
なにそれ。かいけつゾ□リじゃん。
そんなことを思ってる私を他所に、QuizKnockって知ってる?と言いながらスマホでYouTubeを開き始める名前。
「クイズ、なんて?」
「QuizKnock。クイズを題材にしてるwebメディアなんだけど、YouTubeもやっててね」
隣に移動する名前からイヤホンのLを受け取って耳にあてる。身を寄せ合ってYouTube鑑賞会が始まった。
「アンタの彼氏、ヤバイね」
「ふふ、頭おかしいよね」
これはちょっと口が悪いこの子なりの褒め言葉。こういう時に面白いって返す時はだいたいお世辞。ふーん、ちゃんと好きなんじゃん。
「ねぇ、あの時はタイミングって言ってたけど、それ以外にも大きな理由があるんでしょ?」
でなきゃ、この子が忘れるためだけに適当な人と付き合うとは思えない。
「うん。前の人のこと全部聞いてくれてたから、それを分かっててもってのは凄く大きいよ。あとはー、…ふふっ、優良物件なんだって」
「優良物件?」
1人で思い出し笑いしてるけど、めちゃくちゃ気になるから1人でその思い出を楽しむのはやめてほしい。
「そ。優良物件」
「気になる言い方しないで教えなさいよ」
「んー、また今度ね」
晴れやかににこにこと最後の小さなポテトを口に放る顔を見てると、この子が幸せなら何でもいっか。と思えてくる。詳しいことは今度会った時に徹底的に聞き出せばいいしね。
それに自分の恋話を他人に話すのが苦手な名前の恋話を聞く相手が1人減ったんだからちょこちょこ聞いてあげなきゃだし。
まぁ何にしたって
「カワムラさんに飽きたら私がいい男紹介したげる」