いくらでした？レシートください。
いくつか言葉を並べてみたが、結構ですの一点張り。挙句の果てには

｢そんなに豪遊してそうに見えますか？｣

と、からかわれる始末。大人しく、ありがとうございます と ご馳走様です を伝える。満足そうに 苦しゅうない と胸を張る姿に思わず笑ってしまった。

｢僕は泊まりますけど、どうします？｣
｢私も今日は泊まろうと思ってます｣
｢じゃあ｢私がソファ使うんで、河村さんは仮眠室使ってください｣..はい｣

私なりの圧は河村さんにも通じるらしい。牛丼のお礼にはならないけど、これくらいはさせて欲しい。

ゴミを片付けてパソコンと向き合うと、河村さんは隣で動画用の問題制作を始めた。
なるほど、それで戻ってきたのか。1人で納得して、今度こそ集中する。


終わったのは、午前1時を過ぎた頃。終わった開放感から伸びをすると、お疲れ様でした。と優しい声。河村さんはとっくに終わっていたらしい。

｢お疲れ様です。気にせず先に寝て頂いてかまわなかったのに…｣
｢見てたかったんで。シャワー浴びるならどうぞごゆっくり。僕は寝ます。おやすみなさい｣
｢お、おやすみなさい…｣

お言葉通りゆっくりシャワーを浴びて、撮影部屋を開けると、私が寝るはずのソファで河村さんが寝息を立てていた。


｢外すの忘れるくらい眠いなら仮眠室使えばいいのに…｣

眼鏡がかけられたままの寝顔に文句を1つ送って、起こさないように眼鏡を外す。
眼鏡を外して長い前髪をよければよく分かる綺麗な顔立ちとキメの細かい白い肌に、この人もしかしてお姫様なのでは？なんて思ったり。
欠伸を噛み殺して、少しの間だけ寝顔を眺める。

｢今度お礼させてくださいね｣

掛け布団をかけ直して、ソッと撮影部屋の扉を閉めた。
朝ご飯を買うために早起きしなきゃ。