ここ数週間それぞれがそれぞれ忙しい。気付けば皆が帰った夜のオフィスで1人パソコンと向き合う。一昨日からここでも家でも向き合い続けてるこのパソコンも、私の顔など見飽きたことだろう。
いいか、私だって見飽きてるんだ。ドライアイじゃない筈の私が目がしょぼしょぼするくらいには見飽きたんだよ。

…何考えてるんだ私は。
自分に呆れて小さな溜息を1つ零してから、人口涙液が入ったプラスチックの小さな容器に手を伸ばす。
上を向いて、目薬を持った手をセット。反対の手を瞼に持っていこうとした所で、もう待てないと人口涙液が落ちてくる。
落ちてくる人口涙液を見ながら気付いた事が1つ。
眼鏡を外してない。

ポタリ。眼鏡の外側に水滴が1つ。そして私は、上を向いたまま脱力して目を閉じてから、大きな溜息を1つ。

｢もう〜！！誰か眼鏡取って！！！｣

誰も居ないのを良いことに、いつもなら絶対に言わない子供みたいなワガママを空虚に向かって言い放つ。

｢はいはい、叫ばなくても聞こえてますよ｣

自分の喉からﾋｭｯと風が通る音を聞いて目を開けると、上下逆さの我らが神が、私の眼鏡を奪っていく。

｢目薬も差しましょうか？｣
｢イエ…大丈夫デス｣
｢そうご遠慮なさらず｣

そう言うと私の手から目薬を奪って、両眼に素早く1滴ずつ差した。自分でやるよりずっと速い。

｢パチパチしてくださいねー｣
｢はひ…｣

何でよりにもよってこの人がここに？さっき帰ったのでは？せめて伊沢さんならまだ笑えたのに。