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inzm

そよ風ステップのようにかわしたい


 夜、そろそろ寝る時間。鳴り響く携帯電話。10分前くらいからひっきりなしに鳴っている。
 着信相手はわかってる。半年前にインターネットで知り合ったみおりだ。みおりは天馬の全てを知りたがった。あらゆる手段で天馬と連絡を取った。
 最初は丁寧に対応していたものの最近はどうしたものかと悩んでいる。無視は心苦しい。
「はい、松風です」
 だからいつも無視しきれずに電話に出てしまう。
『みおりんのこと嫌いになったかと思ったよ……?』
「ごめん」
『ねぇ迷惑?』
「……うん」
 耐えきれず本音が出てしまう。
『天馬たん……ひどいよぉおおお』
 みおりが泣き出した。
「俺、みおりちゃんの気持ちわかんないからさ、上手く言えないんだけど……アピールするならもっと方法あるんじゃないかな」
『ふぇっ』
「なんでも真剣にやれば届くって信じてる。真っ正面から向かっていけば届くよ。何回ぶつかってもあきらめなければ成功する」
 サッカー部であった色々なことを思い出す。
「みおりちゃんは不器用なだけ。不器用だから間違っちゃったんだよ」
 なにも言わず泣き続けるみおりを天馬は慰める。どんなにひどいことをされても放っておくことが出来なかった。
 どのくらいたっただろう。無言のまま流れていく時間。
『……天馬たん』
 みおりが沈黙を破った。
『優しいね。いつもまっすぐでうらやましいよ。ありがとう』
 みおりはそう言って天馬の返事も聞かず電話を切った。
「電話切れちゃった……」
 明日、円堂監督に話を聞いてもらおう。そう決めて天馬は眠りに就いた。

 そよ風ステップのように上手くかわせたらいいのに――。


fin.


(12/05/30)
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