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言葉の魔法


 そうだって言われるだけで本当にそんな気がしてしまう。言葉の魔法って素晴らしい。

「ねぇ、イリヤお姉さん」
「ん?」
「恋人ってなあに?」
「恋人かー……じゃあ恋人ごっこしよう」
「恋人ごっこ?」
「恋愛がどんなものかわかるかもしれない。アラジンが彼氏で俺が彼女」
「ふふっ彼氏かー二人なんだから俺なんて言わなくていいよ」
「そうだね」
「イリヤちゃんって呼んだら恋人っぽくなるかな? というか恋人ってどんなことするの?」
「んーどんなことするんだろう」
「キスとか?」
「えっキス……」
 普通にジュダルとのキスのし過ぎでキスは挨拶だと思っているイリヤだが、今は別問題である。
「うん、キス」
 目をキラキラさせてるアラジン。
「普通キスってドキドキしてするものだし」
 いくら挨拶でも恋人ごっこ中だよ? 意識ちゃうしさ。とイリヤは無邪気なアラジンに少し戸惑う。
「ドキドキ?」
「そう! ドキドキ!」
「うーん、キスしたらドキドキするかも」
「いや、そういうことじゃなくて――」
 言い終る前にイリヤはアラジンにキスされた。
「えへへっ甘いね。あとふわふわした気持ちになるんだね。柔らかい唇くせになるねーおっぱいもいいけどキスもいいね」
「おっぱいさわりもキスも無暗にしちゃいけないよ」
「どうして?」
「いや、どうしてって恋人にするものだから?」
「じゃあイリヤちゃんにはしてもいいんだよね」
 さらにアラジンの目が輝く。
「そういう意味じゃな――」
 遅かった。
 つぶした胸にもふもふされている。
「やっぱりぺたんこにしてるから柔らかくない」
「文句言うならどいて」
「やだ。文句言わない」
「はぁ」
「もっと恋人ごっこ楽しもうよ。イリヤちゃんは僕の彼女だよ?」
 そう言って再びキスされた。

 好きな人と結ばれるって大変そう。好きならどんな苦労も乗り越えられるのかな。イリヤは複雑な気持ちだった。

 言葉は魔法だけど、いい魔法とは限らない。
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