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inzm

悩み


「ねえ、鬼道。寒くない?」
 あいつはそう言っていつもオレの手を握った。しかもくったくのない笑顔で。
 どうすればそんなに自然に手を繋げるんだ……?オレは悩んでいた。こんなのオレらしくないことくらいわかってる。無理矢理でも握ればいい。ただ手を握るだけなのに、あいつには嫌われたくなくてどうしても握れないでいた。

「佐久間!」
 校門の前で携帯を見ながら立っているあいつの名前を呼んだ。
「鬼道やっと来た。待ちくたびれたんだけど」
「寒いのにわりぃな」
「まあ別にいいけど。好きでやってることだし。さ、帰ろう」
 サラッとそういうこと言う。こっちは色々悩んでるっていうのに。なんて言えないからただ「ああ」とだけ返す。
 そして佐久間が言うことになんとなく相槌を打ちながらオレはまた手を繋ぐことを考えていた。
「……ねえ、鬼道聞いてる?」
「ああ、悪い。ちょっと考え事してた」
「もう、ちゃんと聞けよな。せっかく一緒に帰ってんだから」
「そうだな」
 オレがこんなに悩んでるというのにこいつというやつは。とはいえこんなことでとも思う。
「何考えてたの? 悩みなら聞くけど」
「え、あ、大したことじゃねーよ」
「えー気になる」
「なんでもいいだろ」
 言えるわけない。恥ずかしすぎる。
「ふーん、ねえ」
「ん?」
「寒いから手貸して」
 そう言って勝手にオレの手を握った。しかも何故か恋人が手を繋ぐ感じで。
「ちょ、誰かに見られたらどうするんだよ」
いやなんでオレが散々悩んでたことサラッとやるんだよ。
「平気平気。鬼道だって繋ぎたかったんでしょ?」
 お見通し確信犯かよ。ムカつく。
 カッとなってキスで佐久間の口を塞いだ。
 手を繋ぐだけで散々悩んでたクセに大胆だなと自分でも思う。でも勝手に体が動いていた。どうか嫌われませんように。


(20/11/12 はるか昔の書き直し)
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