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inzm

単純


 試合終わりボクは駆け出していた。
「蘭丸!」
「バカ、苗字で呼べって」
「あ、ごめん。霧野くん」
「だいたい嬉しそうにしてんじゃねーよ!」
 なんか怒ってる?
「えっと、」
「練習試合だっていうのに挑発しすぎなんだよ」
「あ……ごめんなさい」
 今日はボクのいる天河原中と彼のいる雷門中の練習試合だった。そうボクらはライバル。
 ライバルだから挑発だって当たり前のことで、この関係がバレないためには必要なこと。
 けれど、心苦しかった。別にやりたくてやってるわけじゃないのに怒らないでよ。
「ちょ、泣くなよ」
 思わずこぼれた涙に蘭丸は慌てていた。
 少しの間があって、蘭丸はボクのサングラスを外して指でそっと涙を拭ってくれた。
 バレるの気にしてたクセにこういうことするんだからずるい。
「悪かった」
 そして優しく頭をなでてくれる。
「ほんとだよ、そっちだってこっちのこと煽ってたじゃん」
 なんて言いつつ、いつもは荒っぽい蘭丸が優しくて嬉しかった。
 男は涙に弱いって言うけどほんとだね。
「何笑ってんだよ」
「え、内緒」
 恥ずかしい。
「お前は単純(バカ)だからな。すぐ顔に出る」
「バカって言うな!」
 わかってるバカだよ。照れて名前を呼んでくれないのが可愛いって思ってるし、意地悪な言葉も照れ隠しだと思ったら全然苦じゃないって思ってるから。
「まあ、そこがお前のかわいいところじゃん」
 頭をわしゃわしゃと撫でて蘭丸は笑った。
 それに釣られてボクもも笑った。


(20/11/12 はるか昔の書き直し)
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