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凍想


 海岸。
 風で波が暴れてるのを二人座って眺める。
 つい色々考えてしまって会話が途切れる。
 俺は真っ黒だ。
 気付いたら目の前に闇があった。
 それが当たり前だったけど、それじゃダメで。なんとなく一筋の光が自分を救ってくれる気がしてもがいている。
 でもどうしたらいいのかわからない。
 この感情は一体何?
「イリヤ?」
「ごめん、考え事してた」
 白龍に名前を呼ばれて我に返る。
 前は純粋な気持ちでこの人の隣にいたのに今は違う。好きなのに好きになってほしくない。
「そう。あっ」
 白龍の手がこちらに伸びてきて思わず払いのけてしまう。
「急にごめん。ゴミ付いてたから」
「こっちこそごめん。そんなつもりじゃ」
「びっくりしたよね。謝らないで」
 白龍は優しい。
 ただ今は触れないでほしい。
 この闇から抜けるまでは。
「イリヤあの時と一緒の目してる」
「あの時……?」
 どの時を指しているのかわからない。
 今、どんな目してる?
「俺が思わずキスしようとした時」
「――ああ」
 あの時か。

 あの時、突然黒ルフにまとわれている自分が怖くなって震えていた。
 そこに白龍がやってきた。
「イリヤ……?」
 見られてしまった。どうしよう。
「……大丈夫だ。気にするな」
 近付かないでほしい、そう思って立ち上がったら体がふらっとしてしまった。
 やばい、その瞬間、白龍に抱きしめられた。
「白龍……」
 逃げようにも力が出ない。
 しかも目が合ってますます動けない。
 えっちょっと――。
 キスされそうになって思わず白龍を突き飛ばした。
 闇なんか知らず信じてくれていて、その優しさがつらくて、嬉しいはずの好きな人からのキスを拒んでしまった。

 あの時も今と同じ気持ちだったような気がする。だから同じ目か。
 ずっとそうなのにまだ孤独と上手く付き合いきれていない。
 だからこそ、誰かの愛が怖い。
 もがき探す光はまだ高い空の向こうにある。その空は凍っていて降ってきてくれない。
「ごめん、嫌なこと思い出させた?」
「いや、別に。あの時悪かったのは俺だし」
 白龍は悪くないから謝らないでよ。
「そんなことないよ。だってイリヤをそうさせたのは俺でしょう?」
 時を戻すことは出来ない。
 でもどうしてもあの時……て思ってしまう。
 白龍を傷付けずに逃げる方法があったはずなのに、とか。
 出会わなければよかったんじゃないかって思ったときさえもある。
 それでも色んな事を抱えて進むしかない。わかってる。
 だから、この闇から抜けるときが来たら、瞬きもしないで全ての記憶を刻みたい。
 甘い夢だと笑われるかもしれないけど、そう思ってる。
「なんか重い空気にしちゃって悪いな」
 沈黙に耐えられなくて無理やり笑う。何か話していないとすぐ考え込んでしまう。
「そんなことないよ。一緒にいれるだけで楽しいから」
「そっか。そうだな」
 嘘ついてごめん。
 今はまだ本当のこと言えない。この気持ちを見せることは出来ない。
 嘘によって生まれる幻想。
 この幻想は白龍を傷付けず、自身を保ってくれる。
 そうだ嘘をつくのは自分のためだ。
 ふらっと立ち上がって、白龍のそばを離れる。
 色々考えていたらそばにいることが怖くなった。
 どうして? 俺は何を恐れている?
 離れて立ち尽くす自分に思う。
 突然離れて立ち尽くす俺に白龍は何も言わない。
 それに泣きそうになる。
 いつか、高く凍りついた空を破って光を見つけるよ。
 そして、ちゃんと白龍の隣<そこ>に立つから。
 白龍を見つめ誓う。
 それまで待っててほしい。
 そして今はそこに立てない自分を、偽り続ける自分を許してほしい。

 大好きだから。

 今はまだ、
 Don't love me. Don't touch me.
 Don't kiss me. Don't believe me.
 この黒ルフがなくなるまで。

 全て幻想であればいいのに――。


(13/07/30)




イメージ曲:FROZEN SKY / Question?

歌詞

未音源化で未DVD化のコンサートでしかフルが披露されていないためこのフルバージョンは聞くことは出来ないのですが、ようつべさんで検索すると少クラで披露した短いのがあるので聞けます。

この曲がとっても好きでHDDにある少クラをリピっていたら突然龍イリでは!?となったので書かせていただきました。

イメージというか歌詞そのままでは?という感じになってしまってあまり上手くいかなかった。難しいね。


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