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白龍はイリヤの綺麗に塗られた爪を見つめる。
女の子がこういうことをするのは知っていたし、イリヤが女の子なのもわかってる。
けれど、違和感。
「変か?」
イリヤが首を傾げる。
「嫌、別に……そんなことはないけど」
綺麗だとは思う。けれど、素直に綺麗だと言うことが出来ない。
「やっぱり珍しいことはするもんじゃないな」
イリヤが困ったように笑う。
「そんなことない。なんかこう……上手く言えなくて」
「そっか」
いいよ別に。無理しなくて。
とは言えなかった。
そして「モルジアナにはちゃんと言うくせに」という言葉を飲み込んだ。
壊したくないんだ。今までを、この瞬間を。
「――いいと思うよ」
ぼそっと白龍が言った。
「ありがとう」
それをイリヤは聞き逃さなかった。その一言が嬉しくてしかたなかった。
「青。」
白龍の瞳の色。イリヤの心の色。
(13/02/13)