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「アリババくん」
 いつも泣きそうな時に彼はやって来る。
「なんかあった?」
 そう言って彼は笑う。
 ばか。ますます泣きそうになる。
「別に何もない」
「ふーん。ならいいけど」
 彼は私をギュッと抱きしめた。
 ずるいよ。
「ばか」
「こっち向いて?」
 彼は私の唇に唇を重ねた。
「んっ」
「好きだよ、イリヤ」
 いつも彼は私のほしい言葉をちゃんとくれる。
 あの人がくれなかった言葉や行動を、ちゃんとくれるの。
 あの人と比べちゃダメだってわかってる。なのに比べてしまう。
 ごめんね。アリババくん。
 まだ忘れられないの。
 涙が溢れて止まらなかった。
 彼は何も言わずずっと私を抱きしめてくれた。

「彼に名前を呼んでほしくて」

 私に彼氏が出来たことを祝福してくれたあの人が、やっと私の名前を呼んでくれたこと忘れないよ。


(13/02/13)
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