バレンタイン


　甘ったるい空気になるバレンタインデーが嫌いだった。数日前から女子がそわそわする感じも含めて。
「イリヤちゃんはチョコつくらないの？」
　お昼休み、バレンタインの話題になったところでシーリーンにたずねられた。
「つくらないよ」
「なんで？」
　なんでって。どう考えたってそんな柄じゃないだろ、と思うがいつだって彼女はこうだ。
「あげる人いないから」
「じゃあ私にちょうだい！」
「はっ？」
「それで、一緒にチョコつくろ」
「……」
　彼女にチョコをあげるのは構わないとしても、なぜ一緒につくる必要があるのか。
「ねっ、いいでしょ？チョコづくり手伝って」
　そうだ、彼女は料理が不器用だった。
「……しかたない」
　諦めた。それに彼女の笑みを見ていたらバレンタインもいいかもしれないと思えてくる。きっとこのあと後悔するとは思うが。


おわり
(15/02/17)