tkrb
夜桜
「綺麗……」
眠れなくて水でも飲もうと部屋を出て、偶然扉の隙間から見えた鶴丸の寝顔がとても綺麗でそっとそばに近寄った。
「女性が夜這いとは、大胆だね?」
しばらく見つめていたらニヤッと笑って鶴丸が手首を掴む。
「ちょっと起きてたの!?」
思わぬ展開にびっくりした。と同時にそれだけではないドキドキが襲ってくる。自分から足を踏み入れておいてなんだけどこの状況はやばい。
「寝ようと目を閉じたら足音が聞こえたから」
「もー!」
この人はすぐ驚かせたがる。
「ちょっと驚かせたくて。いつも主は俺のこと綺麗だって言うけどそんなに綺麗か? 綺麗なやつは他にもいるだろう」
「私の中では鶴丸が一番綺麗だと思ってるから」
「紅白に染まった俺を見て悲しそうに綺麗だと呟いた姿を見た時は中々くるものがあったな」
血が滴っている姿を見て、それが綺麗だと思ったのは初めてだった。
いつも不安で無事を祈っていて怪我なんて少しもしてほしくないのに、その時は雄姿が煌めいていて、弱っているのが儚げな綺麗さを演出していた。
「で、なんで夜這いなんか?」
「夜這いじゃないです。寝れなくてたまたま通りかかったら鶴丸の寝顔が見えたから」
「見えたからってめずらしくもないし入ってくる必要はないと思うけど」
「そうなんだけど、綺麗だったからっていうのじゃ理由にならない?」
「俺にはわかんないね。そうだ」
鶴丸は起き上がるとそのまま私の手を引いて外に出た。
「どこに行くの?」
「とっておきの場所だ」
そう言って連れて来られた場所は屋根の上。
ひょいひょいと上る鶴丸にあっけにとられつつなんとか手助けのお陰でたどり着いた。よく屋根からの景色は最高だと聞いていたけれど、これ上ってるみんなすごいな。
「俺より断然綺麗なものを見せてやるよ、ほら」
視界に広がるのはとても綺麗な夜桜だった。
「すごい」
「今日は月も満月に近いから明るくて綺麗に見えるだろう?」
「うん、すごいね鶴丸」
本丸からこんな景色が見られるなんてびっくり。昼間に縁側から見る桜もほのぼのとした雰囲気で好きだけどこれもいいな。
「気に入ってくれたようで何より。しばらく眺めていれば眠くなるだろう。ここで寝てしまっても部屋まで運んでやるから安心しろ」
寝れない私に付き合ってくれる鶴丸優しい。
「ありがとう。でも寝顔を見られるのは恥ずかしいから寝てしまわないようにしよう……」
絶対ブスな気がするから見られたくない。好きな人にはいい自分しか見せたくないっていうアレ。
「人の寝顔は見ておいてか」
「寝てなかったじゃん」
「ははは、そうだな。しかし恥ずかしがる必要はない。俺はきみのどんな姿もかわいいと思うし愛しいとも思っているからな」
「え、あ、」
ついさっきまで冗談みたいな感じで笑っていたのに、突然真剣にそんなことずるいよ……。
「驚いたか? やっぱりかわいいな」
「からかってる?」
「いや、冗談抜きで思ってるよ」
そんなこと言われて鶴丸の顔を見れるわけなんてなくて、背を向けて空を見上げる。
桜同様星空はとても綺麗で、心落ち着かせてくれそうな気がした。
けれど落ち着け自分、と言い聞かせても逆効果、そう思うほど体温は上がって一向に落ち着いてくれない。
これはますます眠れなくなった。
(19/04/07)
修正7/12
「綺麗……」
眠れなくて水でも飲もうと部屋を出て、偶然扉の隙間から見えた鶴丸の寝顔がとても綺麗でそっとそばに近寄った。
「女性が夜這いとは、大胆だね?」
しばらく見つめていたらニヤッと笑って鶴丸が手首を掴む。
「ちょっと起きてたの!?」
思わぬ展開にびっくりした。と同時にそれだけではないドキドキが襲ってくる。自分から足を踏み入れておいてなんだけどこの状況はやばい。
「寝ようと目を閉じたら足音が聞こえたから」
「もー!」
この人はすぐ驚かせたがる。
「ちょっと驚かせたくて。いつも主は俺のこと綺麗だって言うけどそんなに綺麗か? 綺麗なやつは他にもいるだろう」
「私の中では鶴丸が一番綺麗だと思ってるから」
「紅白に染まった俺を見て悲しそうに綺麗だと呟いた姿を見た時は中々くるものがあったな」
血が滴っている姿を見て、それが綺麗だと思ったのは初めてだった。
いつも不安で無事を祈っていて怪我なんて少しもしてほしくないのに、その時は雄姿が煌めいていて、弱っているのが儚げな綺麗さを演出していた。
「で、なんで夜這いなんか?」
「夜這いじゃないです。寝れなくてたまたま通りかかったら鶴丸の寝顔が見えたから」
「見えたからってめずらしくもないし入ってくる必要はないと思うけど」
「そうなんだけど、綺麗だったからっていうのじゃ理由にならない?」
「俺にはわかんないね。そうだ」
鶴丸は起き上がるとそのまま私の手を引いて外に出た。
「どこに行くの?」
「とっておきの場所だ」
そう言って連れて来られた場所は屋根の上。
ひょいひょいと上る鶴丸にあっけにとられつつなんとか手助けのお陰でたどり着いた。よく屋根からの景色は最高だと聞いていたけれど、これ上ってるみんなすごいな。
「俺より断然綺麗なものを見せてやるよ、ほら」
視界に広がるのはとても綺麗な夜桜だった。
「すごい」
「今日は月も満月に近いから明るくて綺麗に見えるだろう?」
「うん、すごいね鶴丸」
本丸からこんな景色が見られるなんてびっくり。昼間に縁側から見る桜もほのぼのとした雰囲気で好きだけどこれもいいな。
「気に入ってくれたようで何より。しばらく眺めていれば眠くなるだろう。ここで寝てしまっても部屋まで運んでやるから安心しろ」
寝れない私に付き合ってくれる鶴丸優しい。
「ありがとう。でも寝顔を見られるのは恥ずかしいから寝てしまわないようにしよう……」
絶対ブスな気がするから見られたくない。好きな人にはいい自分しか見せたくないっていうアレ。
「人の寝顔は見ておいてか」
「寝てなかったじゃん」
「ははは、そうだな。しかし恥ずかしがる必要はない。俺はきみのどんな姿もかわいいと思うし愛しいとも思っているからな」
「え、あ、」
ついさっきまで冗談みたいな感じで笑っていたのに、突然真剣にそんなことずるいよ……。
「驚いたか? やっぱりかわいいな」
「からかってる?」
「いや、冗談抜きで思ってるよ」
そんなこと言われて鶴丸の顔を見れるわけなんてなくて、背を向けて空を見上げる。
桜同様星空はとても綺麗で、心落ち着かせてくれそうな気がした。
けれど落ち着け自分、と言い聞かせても逆効果、そう思うほど体温は上がって一向に落ち着いてくれない。
これはますます眠れなくなった。
(19/04/07)
修正7/12