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tkrb

特別


「ねえ燭台切、今日誕生日だよ?」
 二人きりになってどれくらい経っただろう。我慢できなくなってついに自分から言ってしまった。
「うん、そうだねえ」
「そうだねじゃなくて!」
 いや、そうなんだけど、みんなでお祝いしてくれたし忘れられてるわけではないから……でもやっぱり個人的にも祝われたい。
「なくて? 言ってくれなきゃわからないな」
 わざとだ。この人わざと黙ってたんだ。ニヤニヤと笑ってる。悔しい。
「もー……おめでとうって言ってほしい」
「あっそれだけでいいんだ?」
「みんなでお祝いしてくれたし贅沢は言わない。でもちゃんと二人きりでというか、特別なおめでとうはほしいなと思って……」
「――っ、まさかそんなかわいいこと言われるとは思ってなかったよ。誕生日おめでとう」
「ありがとう」
 負けた、と思ったんだけどこの照れた反応を見るに負けてはなさそう? 勝ったとか負けたってなんだよって話なんだけど。
「プレゼントを要求されると思ったから意外だったな」
「あるの? プレゼント」
「あるよ。ほしい?」
 ああ、だからあの反応だったのかと納得した直後、また形勢逆転みたいな態度。ムカつく。
「そりゃああるならほしいというか、中身は気になるよ」
「そうだなあ、じゃあ、僕のこと好きって言って」
 ムカつく、ムカつくけどこの人には勝てない。だって好きだから、だから特別なおめでとうがほしかったわけだし。
「――すき、大好き!」
「よく出来ました。僕も愛しているよ」
 笑顔で私の頭をくしゃくしゃと撫でながら、彼は小さな箱を差し出してくれた。


(19/05/08)
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