tkrb
大切
「主が誰を想っていても、おれは主が好きだよ」
鯰尾に言われた言葉がぐるぐると回る。
私はまだ、あの人が好きなんだろうか。鯰尾よりも大切なんだろうか。
鯰尾が一番大切で、一番好きな人のつもりだった。つもりなだけなのかな。
「特別な好き、だと思うんだけどなあ」
あの人とはもう会えない。もうこの世にはいないから、だから別次元の話。とはいかないか。
「心の声が漏れてるんじゃない?」
「わ、鯰尾!」
「驚かせてごめんね、返事がないから勝手に入って来ちゃった」
「あ、声かけてくれてたのにごめんなさい考えごとしてて」
どうしよう、まさか本人が登場するとは思わなかった。今、どんな顔して会えばいいのかわからない。
「いいよ、おれのこと考えてくれてたみたいだし」
「え、あ、」
そういうのずるい。
「違った?」
「違わないけど……」
「よかった。特別な好きだと思うっていうのは一種の暗示なんじゃないかなって思うんだ。それで自分を締め付けてる」
私が鯰尾を好きだって思い込もうとしてる……?
「……鯰尾はどうして、私がそうだって思うの?」
「今にも泣きそうな顔してるから。おれが好きだと言う度に返ってくる好きは、幸せそうな感じがしないんだ」
なんでそんなこと言うの? 私は幸せだよ。たしかにちょっとだけあの人のことを思い出すことはあるけど。
「それこそ、思い込みじゃないの!? 自分が一番にはなれないって勝手に思ってるか、二番目であってほしいっていう願望押し付けてる」
「じゃあ、主はあの人より俺のこと好きなの!?」
「なんで比べるの、もう会えないんだよ? この世にはいないんだよ? 忘れてしまえばいいの?」
「忘れろなんて言ってない」
「だったら」
ついカッとなってしまう。どうしてこうなるの。
「二人とも落ち着いてくれ」
「骨喰……」
言い争う私たちの前に現れたのは骨喰藤四郎であった。
「すまん、立ち聞きするつもりはなかったんだが、あまりにも大きな声で言い争っていたから」
「ごめんなさい」
人に聞かれる可能性を考えていなかった。
「相手を思っているからこそ、それだけ熱くなれると思うんだ。それに相手が好きだと言ってくれているんだからありがたく信じてみればいいだろう?」
「……そうだね、おれは主が無理して誰かを好きになることがあってほしくないんだ。だからつい……ごめん」
「鯰尾……私こそごめんなさい。そんなつもりなかったけどどこかで彼のこと思い出してたんだと思う」
鯰尾は私のことを真剣に考えてくれてたのに、ちゃんと返せてなかったんだなぁ。
「ゆっくりでいい、急いでおれのこと好きになる必要なんてないから。おれはずっと主のそばにいる」
無理に好きでいるつもりなんてなかったけれど、永遠なんてないと焦って、それが無理をしているように見えていたのかもしれない。
「ありがとう」
「これが惚気を見せつけられるというやつか」
「あっ、ごめん骨喰」
うっかりいるの忘れてた……恥ずかしい……。
「構わない。二人は仲が良い方が似合ってる」
「ありがとう」
今は鯰尾の言葉を信じて少しずつ幸せを積み重ねていこう。
(19/04/07)
修正7/12
「主が誰を想っていても、おれは主が好きだよ」
鯰尾に言われた言葉がぐるぐると回る。
私はまだ、あの人が好きなんだろうか。鯰尾よりも大切なんだろうか。
鯰尾が一番大切で、一番好きな人のつもりだった。つもりなだけなのかな。
「特別な好き、だと思うんだけどなあ」
あの人とはもう会えない。もうこの世にはいないから、だから別次元の話。とはいかないか。
「心の声が漏れてるんじゃない?」
「わ、鯰尾!」
「驚かせてごめんね、返事がないから勝手に入って来ちゃった」
「あ、声かけてくれてたのにごめんなさい考えごとしてて」
どうしよう、まさか本人が登場するとは思わなかった。今、どんな顔して会えばいいのかわからない。
「いいよ、おれのこと考えてくれてたみたいだし」
「え、あ、」
そういうのずるい。
「違った?」
「違わないけど……」
「よかった。特別な好きだと思うっていうのは一種の暗示なんじゃないかなって思うんだ。それで自分を締め付けてる」
私が鯰尾を好きだって思い込もうとしてる……?
「……鯰尾はどうして、私がそうだって思うの?」
「今にも泣きそうな顔してるから。おれが好きだと言う度に返ってくる好きは、幸せそうな感じがしないんだ」
なんでそんなこと言うの? 私は幸せだよ。たしかにちょっとだけあの人のことを思い出すことはあるけど。
「それこそ、思い込みじゃないの!? 自分が一番にはなれないって勝手に思ってるか、二番目であってほしいっていう願望押し付けてる」
「じゃあ、主はあの人より俺のこと好きなの!?」
「なんで比べるの、もう会えないんだよ? この世にはいないんだよ? 忘れてしまえばいいの?」
「忘れろなんて言ってない」
「だったら」
ついカッとなってしまう。どうしてこうなるの。
「二人とも落ち着いてくれ」
「骨喰……」
言い争う私たちの前に現れたのは骨喰藤四郎であった。
「すまん、立ち聞きするつもりはなかったんだが、あまりにも大きな声で言い争っていたから」
「ごめんなさい」
人に聞かれる可能性を考えていなかった。
「相手を思っているからこそ、それだけ熱くなれると思うんだ。それに相手が好きだと言ってくれているんだからありがたく信じてみればいいだろう?」
「……そうだね、おれは主が無理して誰かを好きになることがあってほしくないんだ。だからつい……ごめん」
「鯰尾……私こそごめんなさい。そんなつもりなかったけどどこかで彼のこと思い出してたんだと思う」
鯰尾は私のことを真剣に考えてくれてたのに、ちゃんと返せてなかったんだなぁ。
「ゆっくりでいい、急いでおれのこと好きになる必要なんてないから。おれはずっと主のそばにいる」
無理に好きでいるつもりなんてなかったけれど、永遠なんてないと焦って、それが無理をしているように見えていたのかもしれない。
「ありがとう」
「これが惚気を見せつけられるというやつか」
「あっ、ごめん骨喰」
うっかりいるの忘れてた……恥ずかしい……。
「構わない。二人は仲が良い方が似合ってる」
「ありがとう」
今は鯰尾の言葉を信じて少しずつ幸せを積み重ねていこう。
(19/04/07)
修正7/12