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original

Amour.


 暗闇。

 ――……っ。

 何か聴こえた。
 それが何なのかはわからない。
 声か音か。
 それを確かめようと意識を集中するけれど、集中が続かず、意識が時々途切れてしまう。

 ここは一体何処なのだろうか。

 その前に、自分は誰なのだろうか……。


      *


 少し大人っぽい少年――歪(ヒズミ)は抱きかかえていた、幼めの少年――暁琶(あきは)を柱に括り付けた。

「アキが悪いんだ。俺を裏切るから」
歪は鎖を鍵で固定する。
「そうだ。アキのせいだよ」
それに対し暁琶は何も答えない。眠っているのだろうか。
「あとでたっぷりと嫉妬の愛をあげるよ。アキ」
そう言って歪は部屋を暗くし、出て行った。


 暁琶が目覚めた時、そこは暗闇で、夢を見たのだけど思い出せない時のような感覚だった。
「…………」
 何故、此処にいるのか考えてみるけど何も思い出せない。
 暫くすると、突如明かりがついた。
「――……!?」
「起きた?」
「誰」
「忘れちゃったわけ? 歪だよ」
「……ヒズミ」
「何かショック。ま、仕方ないか」
「?」
「アキが悪いんだよ」
「アキ?」
「自分の名前も覚えてないのかぁ。暁琶、それが君の名前」
「何でお前はオレを縛ってる」
「アキが俺を裏切ったから。わかりやすいでしょ?」
「裏切った?」
「そ。約束破ってあんなとこ行っちゃうから、全部忘れちゃったんだ」
「ちゃんと説明しろっ!!」
「怒んないでよ。俺たちは約束したんだ。二人で研究所を潰すって。なのにアキは別の人と行っちゃった。で、捕まえて記憶消されちゃったの」
「もう一人は?」
「死んだよ」
「……っ」
「アキは優しいなぁ。それがいけないんだ。アキ、俺のために眠って。俺だけのものになって」
「何言ってんだ」
「……ごめんね」
 歪は暁琶に銃を向けた。
「おいっ……」
「アキ……――」

 引き金を引いた。
 それと同時、「やめろー、ヒズ――」暁琶の叫び声が聴こえて、最後の方は銃声音と重なった。

「アキ……」
 歪の瞳から、暁琶の瞳から、一筋の涙が流れていた。


      *


 アキは死んじゃった。
 でも最後は俺の名を呼んだ。俺が頭にあった。
 だからいいんだ。
 もう誰にも渡さない。
 アキは俺のものだ。

 きっとこの気持ち、アキには理解出来ないんだろうな。


――fin.
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