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original

Lily×Iris


 綺麗な花が二つ。
 水に浮かぶ沢山の花びら。
 また堕ちた。
 また一つ命が消えた。


     †


 真っ黒な髪、赤い何かを鋭く捉える右眼と虚ろな左眼、真っ白な服。
 少年はただ、朽ちる花を見つめていた。
「今日一体どれだけの花びら堕ちただろう?」
「さぁ? そんなことどうでもいい」
 部屋に入って来た、白髪、碧眼、黒服の男が答える。
「怖いなぁ。お兄ちゃんは」
「黙れ」
「もうだいぶなくなったね、花びら」
「…………」
 少年が懸命に話かけても、彼は答えない。
「これ、全部散っちゃったらどうなるの?」
「…………」
 やはり答えない。けれど確かに表情は歪んだ。少年の問いで。
「なんで、外に出ちゃだめなの? ねぇお兄ちゃん?」
「…………」

 少年は知らない。
 花びらが堕ちる意味も、彼の想いも。
 花びらに込めた意味、それは、“復讐”。
 大切な者を消し去った、人間どもへの“復讐”。
 もうあとには引けない。止めることは出来ない。
 契約だから。
 彼の大切な人が全ての人間の身代わりになった日、彼は神ととある契約をした。
 二種類の花に全ての人間の命を宿し、花が散るたび、その命を消す。
 その代償は自らの命。
 自分の命もその花に宿してくれと。
 神は喜んで了解してくれた。
 これで人間に罰が下る。
 身代わりになれなかった自分にも。


 ――だからもうあとには引けない。


      †


 また一つ堕ちた。
 残るは二つの花の花びら一枚ずつ。
 ぐったりした少年と彼の命。
 人間は消える。
 全て消えるのだ。

 そして、
 ――また一つ堕ちた。


――fin.

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