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恋愛は往々にして〜その後


 桜舞う木の下で空を見上げる彼女を見かけた。卒業式が終わり同級生たちは写真を撮ったり アルバムに寄せ書きしたりと忙しそうなのに、彼女は一人。まるで違う時間が流れているようだ。
「吉木」
 声をかけた。
「木崎くん」
 少し驚いたような表情を見せる。
「一人なんだ?」
「騒ぐような友だちいないから。木崎くんはいるんじゃないの? 福住くんとか」
「あいつは倉木とどっか行った。それに騒ぎ疲れた」
「友だちの多い自慢?」
「まさか」
「冗談」
 いつの間にか返事をするだけでなく冗談を言うまでになっていた。
「桜、卒業式に咲くとか奇跡だよな」
「うん」
「やっぱ吉木桜似合うわ」
「なにそれ」
「なぁ、卒業記念にアドレス教えてくれる?」
 今しかないと思った。もう話す機会なんてないだろうから。
「またいきなり。じゃあ教えたら第二ボタンくれる?」
「いいよ」
 アドレスと第二ボタンの不思議な交換が成立した。
「おーい、優!」
「どっか行ってた福住くんが呼んでるよ」
「みてーだな。じゃ。……卒業おめでとう」
「木崎くんもおめでとう」
 彼女は桜のように可愛らしい笑みを俺に向けた。

(14/03/14)
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