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滅び


眠りから醒めた時、そこには白衣を着た知らない男がいた。
「暇だ」
男は煙草を灰皿にこすりつけ火を消し、こちらを見た。
「詰まらない。そう妃(ヒメ)も思わないか?」
「…………」
 突然そんな事を言われても意味がわからない。
「柚木(ユギ)、妃に説明をしてやってくれ」
男に呼ばれ、別の男――柚木が現れた。
「はいは~い了解しました、所長」
陽気な声で返事をすると、私を見てニコッと笑った。
「君の名前は妃波(ヒナミ)、所長は妃って呼んでる。あ、僕は柚木ね、名乗るの忘れてた。あと……」
柚木は数秒間をとった。
「あとね、君は世界を左右する重要人物だから」
「……何で?」
「んー何でだろうね」
柚木はおどけた表情を見せた。
「柚木、外を見せてやれ」
所長は目を柚木からカーテンの閉められた窓に移した。
「了解しました、所長」
わざとらしく敬礼をして、私を窓の側まで連れて行く。
「これが“今”」
そう言って柚木はカーテンを一気に開いた。
外――そこには、崩れた建物の破片――瓦礫と血にまみれた死体だけがあった。
「理解出来ないかあ。そうだよね、ここは戦争したんだよ」
「…………」
「君が、お偉いさんを殺しちゃうから」
「私が……?」
「そ、戦争で君を奪い合う事に反対していたすごーい、お偉いさんを君が殺したの。だから、君を奪い合う戦争を世界が始めたんだよ」
「私が人を殺した……」
「仕方ないよ。もともとそんな風にプログラムされてるんだから」
「柚木、余計な事は言うな」
所長は柚木を睨んだ。
「あーそうだ柚木。アイツはどうだ」
「あの子を想ってか 、ぼーっとしてます」
「こんな状況で会えるとは思わんがな」
「そうですね」
「ねぇ、何でこんな事になったの?」
 潤んだ眼で懇願する。
「仕方ないな。言いたくないが、少し言ってしまったからな」
「いやー愛だね。妃のいうことはなんでも聞いちゃう」
 柚木が軽くちゃかしを入れる。
「妃、お前にはとあるデータが組み込んである。組み込んだ数日後ぐらいに、脳でデータの処理が上手くいかず、暴走した」
「その暴走がねーすごかったんだよ」
柚木が愉しそうにこちらを見て話す。
「突然光放ってさー建物一つ破壊しちゃったんだよ」
「それで、世界の奴らがお前を欲しがった。それで戦争を起こすことのないように、偉いさんがしたんだ」
「まーお偉いさんが妃を手に入れたいがためなんだけどね」
「それで見にきた偉いさんにお前は突如光を放って、殺した」
「……私が殺した……それで、こんな戦争が……」
「そうだよー。妃は世界を戦慄させる物凄い人物なんだよ」
「そんな……」
「柚木、妃をそこまで苦しめるな」
「あ、失礼しましたー」
「戦争はこれからだ」
――こんなに此処が荒れているのに。まだこれから?
他のとこまで滅びさせるの?
「所長、また一つ滅びたみたいです」
電話をしながら柚木がいう。
――このまま滅び続けたら、世界はどうなってしまうのだろ。
「さぁ、防衛も兼ねて攻撃開始しますか」
終わらない戦争は続く。

戦争の終わり、目に映る世界は滅びか――。
一体滅びの果てには何があるのだろうか――?

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