彩られたおとぎの国
「眩しっ……」
もしかして天国!? と思って辺りを見渡したらそこには知ってる景色があった。
「生きてる……私戻って来たんだ」
安堵から脱力して地面に座り込んだ。ちゃんと制服着てるしスクールバッグも持ってる。
そうだ! 慌ててスクールバッグの中から携帯を取り出す。
「――年九月十五日よじ、にじゅっぷん」
何度確認しても同じ。
「良かったー」
時間は全然経ってない。戻って来たら未来でした。なんてことがあったらどうしようかと思ってたんだよね。短い間に長い夢を見ていたみたい。
「あ、橋本」
呼ばれて顔を向ければクラスの男子。
「大丈夫か? そんなとこ座り込んで」
「え、あっ大丈夫。ちょっと転んじゃって」
慌てて誤魔化す。
「ならいいけど。ほら」
手を差し出されて少し戸惑ったが掴んで引っ張ってもらった。
「ありがとう」
「気をつけろよ」
「うん」
「あ、これお前のか?」
拾ってくれたのはあの四つ葉のネックレス。トリップしたのが嘘じゃなかった証。
「ありがとう」
受け取って鞄にしまった。
「手、怪我してんじやん。足より手、先についたの?」
「あ、本当だ」
これって王子様を殺すなんて出来なくて剣を投げ捨てたときにつくった傷だ。
「気づかなかったのかよ」
「うん。絆創膏あったはずだから貼っとこう」
えーと、あった。
「貼ってやるよ」
私の手から取り上げて貼ってくれた。
「てか、お前家この辺だっけ?」
「ボーっとしてたら道間違えちゃって」
「はぁ、ほんとどんくさいな」
「うるさい」
「危なっかしいから送ってく」
え、何この急な展開。あの木には恋の神様でもいるんじゃ?あの光ってた穴が気になって見てみると穴なんかなくてハートのシールが貼られていた。
「どうかした?」
「ううん、なんでもない」
少し前を行く彼に追いついて隣を歩く。
そいうや、行く前最悪な日だとか思っていたような気がする。向こうでは何日も過ごしたから今日なのに、遠い昔のよう。まぁいやなことわざわざ思い出す必要もないんだけど。
ドキドキしながら会話していたらあっという間に家に着いた。
「ここだから。ありがとう」
「どういたしまして。気を付けろよ」
「わかってるよ」
「橋本と話せてよかった」
「えっ」
「じゃあな」
待ってよ、それどういう意味? なんてことは聞けないまま行ってしまった。
急激な展開が起こりすぎてついていけない。
急いであの本を探した。
そして意外とすぐに見つかった。
「えっと……」
目次を見ていると「幸せの木」というのがあった。
もしかして……そう思ってその項目を読み始めた。
+
それは人を幸せにする木。
自分の経験出来なかったことしたかったことを、別の世界で叶えてくれる。
その幸せに飲まれることなく帰って来られた者には褒美が与えられる。
(2014/01)
あなたはこれを読んで何色を感じましたか?