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彩られたおとぎの国


 昔から大好きでよく読んだ本がある。それはこの町に伝わる伝説をまとめた本。その中でも特に好きなのが、童話の世界に行っちゃう話。童話の世界の主人公になるなんて夢みたいで楽しそう。でも帰って来られなくなるから木が光ってても覗いちゃいけませんって書いてあるの。絶対ではないし、木が光ってたら覗いちゃうよ。まぁ現実にそんなことはないけど。それどころか全く刺激がないの。
 高校生になったら彼氏が出来るって漠然と思ってたけど実際は気配もない。恋愛はいつも片想い。もっと楽しいことしたいし、恋がしたい!
そいうやあの本最近読んでないなぁどこにしまったかな。

   +

「今日は九月十五日だから九と十五を足して二十四番。にじゅう……よんばん……は、橋本(はしもと)か。橋本どこだ? あ、いたいた。はい読んで」
 最悪だ。普通に十五番の人で良かったじゃん。
 授業で最悪なことがあったその日の放課後。
「彩波(いろは)! ごめん、掃除代わって」
 帰る準備をしていたら友達に声をかけられた。
「えー」
 今日は早く帰るつもりだったのに。精神的ダメージで疲れたから帰って寝たい。
「彼氏から急に呼び出されて……ホントごめん! 今度彩波が当番のとき代るから」
「仕方ない。いいよ」
 友達が納得するような断る理由も見つからないから引き受けた。
「ありがとう彩波」
 友達が笑顔で駆け出していくのを見送った。


「はぁ」
 帰り道、一人ため息をつく。
 掃除のあと「ちょうどいいところにいた!」なんて笑顔で先生に呼び止められてしまって準備室の片付けを手伝わされてしまった。当番代わってもらうだけじやなくてなんか奢ってもらおう。
 なんて放課後のことを振り返ってたら、ボーっとしてたみたいでいつもと違う道を歩いていた。
「ここどこだっけ?」
 現状把握のために辺りを見回す。
「あれ?」
 公園の木が光っているのが目についた。
「なんだろう」
 気になって公園へ向かう。
「すごい」
 その木の幹に穴が空いていて、その穴から光が漏れていた。中に何かあるのかしら? 気になって覗いてみようと穴に顔を近づけたら、眩しい光に包まれた。


   +


 0.童話の世界である。
 1.主人公なのでちゃんと物語を完成させなければならない。
 2.その世界で死んでしまったら現実には帰ることは出来ない。
 3.物語がクリア出来なかった場合も現実に戻ることは不可能である。その世界で生きて一生を終える。
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