original
Share.灰×黒
僕は、白でも黒でもなくて灰色。
対立した二つが交わった証拠。
だけど僕は両親を知らないからわからない。
気付いたら一人だった。
だから僕の国(せかい)を創った。
誰にも邪魔されない自由な国。
僕に刃向かうとね……しんじゃうよ?
***
黒い国と白い国。対立する二つ。
国と色の違う人間は嫌われる。
***
「イリ様。私が新たにお世話させていただきます、シキです」
また新しいのだ。あ、前の捨てたんだっけ。
「私は気に入らないですか? 私はイリ様の瞳(め)好きですけどね」
「何を言ってる?」
「私は、そのイリ様の無気力な瞳が好きだと言ったのです」
なんだコイツ? 捨てられたいのか?
「ふふ。私を捨てるおつもりですか? 可愛いですね」
「――意味不明だな。面白いから捨てない。ちょうど暇つぶしが欲しかったからね」
「そうですか。良かったです」
シキはにっこりと微笑んだ。本当にわからない。
こうして、僕とシキの生活は始まった。
***
「シキ、外に出たい」
そう言ったらシキは街に連れてってくれる。
シキがいけない時はシキにお土産を買って帰った。そしたらシキは笑ってくれる。なんだか嬉しい気持ちになった。
***
僕はある日、気になる子ができた。可愛い女の子。
だから毎日その子に会いに行った。
シキはついてこなかった。でもそんなこと気にならなかった。
帰ったらちゃんと話を聞いてくれたから。
なのに、なにか足りなかった。
前と変わらないのに、充実してなくて満足もなかった。
そんなの最初からなかった気がする。でも、僕は充実や満足を知ってたんだ。なんでだろう?
「お帰りなさいませ、イリ様」
「ただいま、シキ」
「……――」
あれ? なんでなにも言わないの?
「シキ?」
呼びかけてみるけど、なにも言わない。顔も笑ってない。
どうして?いつものシキなら笑ってくれたのに。
「ねぇシキ?」
もう一度声をかけた。
「はい、イリ様」
そしたら無表情で返事した。
なんで無表情なの?
「――……必死な瞳」
しばらくしてシキがぼそりとつぶやいた。
必死? 僕が?
「一ヶ月でそんな風になるとは」
「えっ?」
「ははは。可愛い」
シキが笑った。わけがわからなかった。
「わからない? イリ様は私に恋をしたのです」
シキはどうしてそう僕の心がわかるんだろう?
そんなことより、僕がシキを好き?
なんで……わからなさすぎて頭の中がぐちゃぐちゃだ。
「今日はもう休んで下さい」
そう言われて僕は眠りに就くことにした。
でも寝れなくて、ベッドの上でずっと考えた。
――……!? そうか、足りなかったのは愛だったんだ。僕の知ってた充実と満足はシキの愛だったんだ。
僕はシキの言う通りシキが好きなんだ。
気付いた僕はシキのところに行こうと部屋の扉を開けた。
「イリ様」
そしたら何故か目の前にシキがいた。
「シキ、ごめんなさい」
僕は泣きそうになりながらシキに抱きついた。そしたら、シキは優しく抱きしめてくれた。
「わかればいい。イリはもう、一人じゃない」
シキは囁いた。
***
僕はもう一人じゃない。
誰にも邪魔されない国を今度はシキと二人で守るんだ。
僕とシキを邪魔するとね……しんじゃうよ?
end.
(10/10/20)
原型は多分もっと前
僕は、白でも黒でもなくて灰色。
対立した二つが交わった証拠。
だけど僕は両親を知らないからわからない。
気付いたら一人だった。
だから僕の国(せかい)を創った。
誰にも邪魔されない自由な国。
僕に刃向かうとね……しんじゃうよ?
***
黒い国と白い国。対立する二つ。
国と色の違う人間は嫌われる。
***
「イリ様。私が新たにお世話させていただきます、シキです」
また新しいのだ。あ、前の捨てたんだっけ。
「私は気に入らないですか? 私はイリ様の瞳(め)好きですけどね」
「何を言ってる?」
「私は、そのイリ様の無気力な瞳が好きだと言ったのです」
なんだコイツ? 捨てられたいのか?
「ふふ。私を捨てるおつもりですか? 可愛いですね」
「――意味不明だな。面白いから捨てない。ちょうど暇つぶしが欲しかったからね」
「そうですか。良かったです」
シキはにっこりと微笑んだ。本当にわからない。
こうして、僕とシキの生活は始まった。
***
「シキ、外に出たい」
そう言ったらシキは街に連れてってくれる。
シキがいけない時はシキにお土産を買って帰った。そしたらシキは笑ってくれる。なんだか嬉しい気持ちになった。
***
僕はある日、気になる子ができた。可愛い女の子。
だから毎日その子に会いに行った。
シキはついてこなかった。でもそんなこと気にならなかった。
帰ったらちゃんと話を聞いてくれたから。
なのに、なにか足りなかった。
前と変わらないのに、充実してなくて満足もなかった。
そんなの最初からなかった気がする。でも、僕は充実や満足を知ってたんだ。なんでだろう?
「お帰りなさいませ、イリ様」
「ただいま、シキ」
「……――」
あれ? なんでなにも言わないの?
「シキ?」
呼びかけてみるけど、なにも言わない。顔も笑ってない。
どうして?いつものシキなら笑ってくれたのに。
「ねぇシキ?」
もう一度声をかけた。
「はい、イリ様」
そしたら無表情で返事した。
なんで無表情なの?
「――……必死な瞳」
しばらくしてシキがぼそりとつぶやいた。
必死? 僕が?
「一ヶ月でそんな風になるとは」
「えっ?」
「ははは。可愛い」
シキが笑った。わけがわからなかった。
「わからない? イリ様は私に恋をしたのです」
シキはどうしてそう僕の心がわかるんだろう?
そんなことより、僕がシキを好き?
なんで……わからなさすぎて頭の中がぐちゃぐちゃだ。
「今日はもう休んで下さい」
そう言われて僕は眠りに就くことにした。
でも寝れなくて、ベッドの上でずっと考えた。
――……!? そうか、足りなかったのは愛だったんだ。僕の知ってた充実と満足はシキの愛だったんだ。
僕はシキの言う通りシキが好きなんだ。
気付いた僕はシキのところに行こうと部屋の扉を開けた。
「イリ様」
そしたら何故か目の前にシキがいた。
「シキ、ごめんなさい」
僕は泣きそうになりながらシキに抱きついた。そしたら、シキは優しく抱きしめてくれた。
「わかればいい。イリはもう、一人じゃない」
シキは囁いた。
***
僕はもう一人じゃない。
誰にも邪魔されない国を今度はシキと二人で守るんだ。
僕とシキを邪魔するとね……しんじゃうよ?
end.
(10/10/20)
原型は多分もっと前