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追想


「きっと思い出せるよ」
「うん」
 2人で約束した。事故で失った記憶を思い出せるように、思い出の場所に行こうと約束した。

   *

 少年と少女手を繋いで歩く2人。
「あそこまで競走ね!」
 そう言って手を離し走ってた少女。
 その後ろで、爆発音がした。
 慌てて振り返った少女の目に少年は映らない。
 少年は車と車の衝突の爆発に巻き込まれていた。
 あのとき、手を離していなければ、一緒に走っていれば少年が命を落とすことなんてなかったのに。
 少女の瞳からポロポロと涙が零れ落ちる。
「あああああ」
 少女は叫び声を上げた。
「大丈夫? 泣かないで?」
 幼い少年が少女の前に現れた。
「だれ?」
 なんだか懐かしい感じを少女は覚えた。
「天使!」
 少年――天使は笑う。
「びっくりした? あのお兄さんはお姉さん守れて嬉しいって思ってるよ? 手を離したこと後悔してないよ」
「えっ……」
「だから泣かないで」
 そう言われても、少女の涙は止まらなかった。大好きな彼がいなくなったのだ。
「お姉さんが思い出したこと、お兄さんに伝えておくね。叫んでたのは思い出したんだよね」
 そう、少女はあの失っていた記憶を取り戻していたのだ。
「うん、ありがとう天使さん」
 少女は笑った。

   *

「ちょっとやりすぎたかな。怒られちゃうかな」
 天使は空から少年の遺体に寄り添う少女を見てつぶやいた。
「でも、心残りじゃかわいそうだし」
 少女に少年との記憶を戻したことも、お互いの気持ちを伝えたことも間違いじゃなかった。そう天使は自分に言い聞かせた。


 本当は約束を叶えてあげたかったけど、僕の力じゃ死期は変えられなかった。ごめんね。あの時僕を守ろうとしてくれてありがとう、お姉ちゃん。


end.


(2013.03.05 Twitter 5RTお題即興)

制作時間1時間半くらい。
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