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original

Love the distorted


 支配する僕、依存する君。

   ***

 大好きな人を殺した。
 一度、僕から離れた罰。
 これでずっと一緒だね?
 僕のこと好きだって言ってくれたから、安心した。
 僕を好きじゃないあなたには興味ない。
 殺したのは大好きだからだよ。
 殺害にも愛があれば快感すら得られる。多分一方的だろうけど。

 大好きな人を殺したその夜、真っ赤に染まった僕は雨でそれを洗い流していた。
 好きな人がいなくなるみたいでほんとは嫌だったけど仕方ない。
 明日休みだから別に急ぐ必要もなかったんだけどなんとなく。大体学校あってもサボればいいし。大学生って楽。
 ふと、人の気配を感じた。
 辺りを見渡すと傷ついた少年がいた。
 街灯に照らされた君のお腹の辺り血が染み出して赤く染まっている。腕も怪我している。
 刺されたんだろうか? 動けるならたいしたことないのかな?
 次々に浮かんでくる疑問と湧き上がる不思議な感情。
 答えを出すのにそう時間はかからなかった。
 ああ、僕はそんな君を見て一目惚れしたんだ。
 何も知らないけど君を自分のモノにしたいと思った。

「どうしたの?」
 濡れた君は弱った子猫みたいで放っておけなかった。
「……」
「風邪ひいちゃうよ?」
「……」
 雨のせいで泣いているのかどうか判別出来なかった。
「すぐそこの家だからおいで?」
 どうせ返事してくれないと思ったから手を差し出した。
 戸惑う君。
「んー、じゃあついてきて」
 頭をポンポンとして歩き出そうとしたとき、君が弱々しく僕の服の裾を掴んだ。
「ふふっ……大丈夫、おいていったりしないから。ゆっくり歩こう。でもその傷は早く手当てしなくちゃだからあまりゆっくりしすぎもだめだけど」
 あまりに可愛い君に笑みが零れる。
 ようやく安心してくれたのか君は小さく頷いた。
 何もしゃべらず歩く。ここで君の機嫌を損ねたりでもして逃げられたら困るから。僕は君を手に入れるんだから。
 その間さっき殺したあの人のことを考えていた。
 綺麗だった。
 綺麗な顔に無残な身体。
 不釣り合いがたまらなくいい。
 しばらく眺めてこの目に焼きつけたあと保存に向かないから身体も綺麗にした。
 そして二人だけの秘密の部屋に飾った。
 ちゃんと処理したからしばらくは大丈夫。
 いらなくなったらちゃんと火葬してあげよう。
 両親とは縁を切ったと言っていたし、自殺したから遺言に沿って葬式などはせず火葬しましたって報告すればいい。
 案外早くいらなくなるかもしれないから準備しておこう。
 ごめんね。仕方ないんだ。出会っちゃったから。
 狂っていると自分でも思う。

 家についたら君をお風呂に入れて汚れを落として傷口を消毒、しっかり手当てした。思ったより傷が浅くて安心した。これなら病院に行かなくても大丈夫そう。
 君は何もしゃべらず素直に僕に身を任せていた。
 服は僕の物を貸してあげた。少し大きかったけど小さいよりマシだ。良かった。
「僕は怜(れ)桜(お)。君は?」
「……る、か。瑠(る)海(か)だよ」
 初めて話してくれた。
「瑠海か。いい名前だね」
「ありが……と」
 消え入りそうな声。
「あっ瑠海いくつ?」
「十六」
「中学生かと思った」
「酷い! 高二だよ」
 ちょっとからかったら怒られた。
 やっぱり幼く見られるから気にしてるんだろう。
 怒られたけど緊張も解けたみたいだし良かったのかもしれない。
「怜桜くんは?」
「十九。大学一年だよ」
「ふーん」
「なんだよ、それ。ねぇ瑠海、どうしてあそこにいたか聞いてもいい?」
「えっと……」
「嫌なら話さなくていいよ」
「ちゃんと聞いてくれる? ひいたりしない?」
「しないよ」
 出来る限り優しい声で答える。
「あのね、瑠海、好きな人がいるの……それでね、その人に構ってほしくてついこうしちゃうんだ……いつもなら遊びに行くのやめて抱きしめてくれるのに……」
 夜に遊びに行くって浮気かよ。
「今日はしてくれなかったんだ?」
「うん……だから……腕だけじゃなくてお腹もやったのに……」
 自分でやったのか。いつもやってるから大怪我そうに見えても大丈夫だったんだ。
「寂しかったよね。今日は僕が代わりに抱きしめてあげる」
 ぎゅっと瑠海を抱きしめた。
「怜桜くん……ひかないの?」
「なんで? ひかないよ」
 だって僕も狂ってる。
「……そう言えば」
「どうした?」
「どうして怪我してないのに血が服についてるの?」
 ああ、忘れてた。瑠海があまりに魅力的だから。
 そうだ。僕はあの人を殺したんじゃない。愛を誓って僕だけのモノにした。それだけ。
「大好きな人と永遠の愛を誓ったから」
 少し迷ったが素直な瑠海に嘘は吐けなかった。
「殺したの?」
 瑠海は素直だね。そして頭がいい。そんな悲しそうな顔しないでよ。
「そうだね」
「寂しくないの?」
「ないよ。ずっと一緒にいれるから。別に会話なんかなくても、僕を好きな気持ちが変わらないだけで幸せだよ」
「そうなんだ……」
「僕のこと怖くないの?」
 興味を持ったように感じたが、「瑠海もやる?」とは聞けなかった。瑠海なら無理心中とかしそうで怖かった。
 瑠海を失うことを恐れている。
「怖くない、よ」
「強いね、瑠海は」
 瑠海の頭をわしゃわしゃと撫でた。
「えへへ」
 瑠海が笑った。笑ってくれた。
 このまま僕のモノになってくれないかな。
「もう夜遅いから寝よう? 今帰っても一人でしょ?」
「うん」
 慣れない環境で不安そうな君と手を繋いでダブルベッドに二人で仲良く寝た。

   *

「……」
「おはよう」
 眠そうに目をこする瑠海に優しく声をかける。
 もうすぐお別れだね。
「あ、瑠海携帯光ってるよ」
 枕元に置かれた瑠海の携帯が光ってることに気づいて指を指す。
「ありがとっ」
 瑠海が携帯を見る。
 恋人からの連絡だろうか。
 あ、嬉しそうな顔してる。恋人なんだね。
「りゅーくんからだった。帰っておいでって」
「彼氏?」
「うん! 隆(りゅう)登(と)って言うんだよ」
「へーそうなんだ。かっこいい名前だね」
 思ってないけど瑠海が喜ぶ顔が見たかった。
「りゅーくんに言っとくね」
「よし、じゃあ起きようか」
 あーあ。お別れ。
「お腹すいた」
「フレンチトースト作ってあげる」
「わーい!」
 子どもみたい。
 いや、僕だってまだ未成年で瑠海とは三コしか違わないけど。
「お風呂場に瑠海の服干してあるから着替えておいで」
「うん」
 血で汚れさらに雨で濡れた服は昨日の内に洗濯して浴室乾燥させておいた。
 瑠海が動き出したので僕も調理を開始した。

 美味しそうにフレンチトーストを頬張る瑠海を見ながら食事したあと、瑠海の彼氏の家まで送ることになった。
 ふらふらと茫然自失で歩いていたからここがどこかわからないみたい。彼氏の家というのは嫌だったがギリギリまで一緒にいれるのは嬉しい。
 彼氏の家まで他愛もない会話をした。それだけで幸せだった。
「あそこだよ」
 彼氏の家見えちゃった。
「じゃあここまでで大丈夫だね」
「うん、ありがとう」
 もうお別れ。だからあんまり遠くなくて残念だった。けど瑠海の家もここからあまり遠くないみたいだからそれは嬉しい。
「瑠海、寂しかったらいつでも家においで」
 頭を優しく撫でる。
「ありがとう怜桜くん」
 瑠海はなんだか恥ずかしそうに笑って「バイバーイ」と手を振った。
 可愛い。
「バイバイ」
 僕も手を振り返した。

   *

 あれから何日も過ぎたが瑠海を忘れた日はなかった。
 自分のほうが寂しくなって大好きだった人を眺めて寂しさを紛らわした。
 ピンポーン。ベルが鳴った。
「はーい」
 インターホンを見ると、なんとそこには濡れて震える瑠海がいた。
 雨なんか降ってないのにどうして濡れてるの。
 慌てて玄関へ行きドアを開けた。
「瑠海!? どうした? とりあえず中入って」
 リビングに向かう途中洗面所でバスタオルを取った。
 それを瑠海に被せて抱きしめる。
「……れ、お、くん」
 泣き出した。
「大丈夫、大丈夫だよ」
 何が大丈夫なのかさっぱりだけど何かに怯え震える瑠海を安心させたかった。
 立ったままもあれだったのでとりあえず着替えさせてソファーに座らせた。
「何があったの?」
「瑠海のわがままでりゅーくん怒らせちゃって水ぶっかけられたの。瑠海が悪いんだけど怖くて逃げてきちゃった……」
「隆登さんっていくつなの?」
 怒られた理由よりそんな卑劣な行為をするやつの年齢が気になった。
「たしか二十三」
「僕より年上かよ」
 しかも社会人ではないか。大人げない。
「お仕事大変で疲れてるのに構ってほしくてベタベタしたのがいけなかったの……うっ」
 ああ、前から行われているんだ。DVだということに瑠海は気づいてないし認めないと思う。その言葉には何されたって好きだから離れたくないという気持ちが見えた。
「大丈夫」
 いい言葉が見つからなくてこれしか言えなかった。
 代わりにぎゅっと抱きしめた。
 僕に何が出来る?
 どうすれば救ってやれる?
 しばらくお互い何も言わず無言のまま時が過ぎた。
「瑠海はさ、酷いことされても隆登さんが好きなんだよね」
 そんな言葉が僕の口から出ていた。
 答えはわかってる。
「悪いのは瑠海だから。瑠海がわがままだから……りゅーくんのいない生活なんて嫌だよ……」
 典型的なタイプだな。依存してる。
「ごめん、変なこと聞いて。瑠海は悪くないよ? 好きな人に愛されたいっていうのは悪いことじゃない」
「ほんとに?」
「うん、ほんと。そうだ、どうして僕のところに来たの?」
「怜桜くんが寂しかったら来ていいって言ったからだよ。家に帰っても一人だし誰かと一緒にいたくて、それで怜桜くんがいいなって」
 僕の言ったこと覚えてくれたんだ。僕を選んでくれたんだ。
「嬉しい。瑠海が来てくれて嬉しいよ」
「良かった。怜桜くん優しくしてくれたし全部受け入れてくれたし」
 ただの都合のいい男みたいだが瑠海はそんなこと考えてなさそう。まぁ都合のいい男でもいい。
 多分今瑠海の中で二番目だから頑張れば一番になれるかもしれない。

 それから何度も瑠海は家に来るようになった。
 彼氏への依存とは別に僕への依存も始まっていた。
 つらいことがあれば僕で満たす。そのスパンが短くなっている。
 僕なしじゃ崩れた精神を安定させられない。
 それが僕の恋心を煽った。
 瑠海に対する好きの度合いは高くなるばかりだったが決して想いを口にすることはなかった。
 答えはわかってるしここに来てくれなくなる気がしたから。

   *

 そんなある日。
 僕は見てしまった。
 隆登さんが女の子と仲よさそうに歩いているのを。
 瑠海が嬉しそうに写真を見せてくれたから一方的に顔を覚えていた。
 前から歩いてくる二人との距離が近くなる。
 恋人繋ぎの隆登さんを殴りたい衝動に駆られたがグッと堪える。
 すると会話が聞こえてきた。
「えー友達でしょ? あ、弟だっけ? そんなことしていいの?」
「どっちでもねーよ。ただのめんどくさいやつ。さっさと離れればいいのにしつこくてさーまぁいいおもちゃかもな」
 瑠海のことだ。
 おもちゃってなんだよ。
 暴力振るって嘘の愛の言葉吐いて、全部遊びかよ。
 どんどん湧き上がる憎悪をなんとか押し殺してその場をあとにした。

   *

 殺した。
 やっと。もっと早くしておけばよかった。
 瑠海のためにも自分のためにも。
 あいつに向ける憎しみの時間を、瑠海への愛の時間に使いたかった。
 もちろん瑠海には内緒。
 好きじゃない人を殺すのは初めてだった。
 その行為に快感を得られなくて面白くなかった。ただこれで瑠海が僕だけのモノになると思うと嬉しかった。やっぱり「好き」という感情は魔法だ。
 好きだったあの人はもう必要なくなったので適切に処理した。両親が清々したという感じだったのでスッキリと終わることが出来た。
 ねぇ瑠海? これで僕だけを見てくれる?
 瑠海は僕を好きになってくれる?

 その次の日、思った通り瑠海は家にやってきた。身体中赤く染めて。
 忘れていた。瑠海は自分を傷つけることで空いた穴を埋めようとすることを。
 今回はさすがにやばそうだったので病院に連れていった。
 傷だけでなく精神不安とかで入院になったりするかと思ったが、病院での瑠海は思ったより普通で傷もひどくなく日帰り出来た。
 しかし僕の家に帰るとすぐ瑠海は泣き出した。ずっと気を張っていたのだろう。
「我慢してえらかったね」
 抱きしめたまま頭を撫でた。そしてそのまま抱っこしてソファーまで連れていった。
 ちょっと軽すぎる気がする。
「りゅーくんが、りゅーくんが死んじゃった……」
 僕の胸に顔を埋めて泣きじゃくる瑠海。
「うん」
 そうだね、僕が殺したから。
「瑠海にはりゅーくんしかいないのに……」
「僕がいるよ」
 あんな最低な男死んで当然なのに。
 瑠海は信じないと思うし、それを聞いたらもっと狂ってしまいそうだ。
 しばらく瑠海は泣き続けた。
「瑠海、りゅーくんを殺した人絶対に許さない」
「うん」
 少し落ち着いたのかまた話し出した瑠海。
 犯人は僕だと知ったら瑠海はどうする?
 あれ? 上手くやったから自殺処理されたはずなんだけど。そうか瑠海は死が受け入れられないんだね。
「怜桜くんは瑠海が死んだら悲しい?」
どうしてそんなこと聞くの。当たり前だよ。
「うん、悲しいよ。生きていけないかもしれない」
 ほんとに今の生きがいは瑠海。
「好きな人は殺すのに?」
「そうだったけど瑠海は違う。生きてる瑠海じゃないと意味ない」
 好きな人にそんな感情をいだくのは初めて。
 瑠海と出会ってから初めてのことばかりだ。
「じゃあ瑠海をおいてったりもしない?」
「しないよ。瑠海は僕だけのモノだし」
「よかった。ずっと一緒だね」
 瑠海が笑った。
 泣いてる瑠海も可愛いけどやっぱり笑ってる瑠海が好きだ。

   *

 瑠海と僕の生活が始まった。
 あいつを思い出して泣きだす以外は泣かなくなった。でもたまに自分を傷つける。そんなときは「痛くない? どうした?」って優しく声をかけてあげる。そのあと「身体もたないよ?」ってちょっとだけ叱っておく。一歩間違えたら大変なことにる。
 瑠海のほしいものはなんでも与えた。
 銃がほしいって言った時に小さな拳銃じゃつまらないって言うから機関銃をあげた。
 種類は覚えてない。テキトーに知り合いから買った。
 早くあんなやつ忘れて僕を好きになってよ。
「怜桜ー」
 瑠海はいつしか僕を呼び捨てするようになっていた。
 些細なことだけど嬉しかった。くんづけだと隆登さんと被る気がして嫌だった。
「ん?」
 リビングでくつろいでいた僕は声のした方を見た。
 そこには機関銃を持った瑠海がいた。
 別に普通。瑠海は何故だか家にいる時ずっとそれを手にしていた。
 普通に見えて何か違う。どうかしたのかな。
「ノート見ちゃった」
 瑠海はいつも単刀直入。でも詳しく話してくれないから困る。
「ノート?」
「怜桜の気持ちが殴り書きされてたやつ。瑠海への愛がつまってた」
「……うん」
 思い出した。
 それは瑠海と出会ってからの自分で処理できなくなった想いを吐き出したノートだ。
 あーあ、見ちゃったんだ。知っちゃったんだ。
「見なくたってわかってたけど」
「えっ?」
 思わず声が出たが思い当たる節があった。「りゅーくん殺した人絶対許さない」って言ったあの言葉だ。
「なんとなくそんな気がした。でも嘘であってほしかった……なんでりゅーくん殺したの? 瑠海のためって何?」
「あいつは、瑠海を傷つける」
「怜桜だって瑠海を傷つけたくせに」
「……」
 泣きそうな瑠海に言葉がつまる。
「瑠海だけ傷つくの不公平じゃない?」
「僕だって傷ついたよ? 瑠海が僕を好きになってくれないから。 無邪気にあいつの話するから」
「でも痛みが違うよ。怜桜の痛みも瑠海知ってるけど全然くらべものにならない。経験してみなきゃわかんないよ」
 瑠海はこぼれそうな涙を拭いて銃を握り直す。
「どうするの?」
「考えたんだけど、怜桜も瑠海の痛みを知るべきだと思う」
 瑠海は決意した表情で銃を自身に向けた。
「いつかこれで死ねたらなって」
 これから起こることは容易に想像がついたけど言葉にされ、その重大さを改めて思い知る。
 ああ、あの時すでにいつかこうすることを決意してたんだ。
「怜桜からの初めてのプレゼントだから使いたかったんだ。もらった時すごい嬉しかったよ」
「――ねぇ、死なないで!」
 やっと出てきた言葉。
「どうして?」
「瑠海が大切だから」
「好きな人はいつも殺すくせに」
「おいてかれるのは嫌なの」
「わがまま」
「瑠海だってわがままだよ。前に言ったよね? 瑠海は殺さないって」
 自分でもわがままだと思う。
「今までとは違うって説得力ない」
「瑠海がいない生活とか考えられないし、それに瑠海は僕のこと好きじゃないでしょ? 好きな気持ちがないのに殺しても意味ないよ」
「ほんとうにそう思ってる?」
「えっ?」
「瑠海は怜桜が好きなのに」
 その言葉を理解できないまま鳴り響いた銃声。
「あああああ」
 叫んでも叫びたりない。
 多分これが絶望って言うんだ。
 震えてる。
 思考停止。
「――怜桜」
 僕を呼ぶ声がした。幻聴?
「――やっと見れた怜桜の苦しそうな顔」
「る、か……? 生きてる……」
 嬉しそうな瑠海の顔が視界に入る。
 どういうこと?
「生きてるよ。瑠海は死なないよ」
 満足そうな顔で銃弾の食い込んだ金属板を見せた。
「ばか」
「死んだと思った?」
 悪戯っぽい笑み。
 思ったよ。
 だから泣きそう。
「告白して死ぬなんてずるいよ」
 死んでないけど。それにいつも告白されて殺してたけど。
「そう簡単に死なないよ? だってそれじゃありゅーくんが可哀想だから」
「……?」
「瑠海といるとりゅーくん殺したことずっと忘れられないでしょ? それで苦しめばいいよ。怜桜大好き」
 瑠海は銃を置いて僕の首に抱きついた。
「僕も瑠海が大好き」
 その「大好き」が嬉しくて、僕は瑠海が他の誰かを想っていても、好きでいてくれるならそれでいい。だからギュッと瑠海を受け止めた。

   ***

 支配する僕、依存する君。




(2012.10.25) 病んでる×病んでる
13/09/30加筆修正

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