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いろのおはなし


 運命の出会いって信じる?


●赤
 出会いは偶然。
 ジャムを届けるために森を通り抜けていたあなたと、たまたま森を歩いていたわたしが出会った。
 とっても綺麗で可愛かったあなた。

「こんにちは」
 声をかけたら、
「こんにちは」
 って返してくれた。
「おいしそうなジャムね」
「ありがとう。一つ差し上げるわ」
 真っ赤な苺ジャムの入ったビンを渡してくれた。
「お礼と言ったらあれだけれど、今度お城で舞踏会があるの。ぜひ来て」
「うん、行かせてもらうね」
 にっこり微笑まれた。

 あなたのくれたジャムを指ですくって、光に当てた。
 なんだか血みたい。


●灰
 楽しい時間はあっという間。
 零時のベルが鳴った。
 あなたが何か言おうとした。
 名前なんていらないでしょ?
 あなたとわたしが出会った、それだけでいいじゃない。

「早く帰りなさい」
 踊るのをやめ、そっと送り出す。
「でもっ」
 魔法が解けちゃうよ?
「きっとまたどこかで出会えるわ」
「ほんとに?」
「ええ」
 指にそっと指輪をはめた。
 わたしのとは違う指輪。気付いたかしら。


●白
 愛は束縛。
 大好きだから殺してしまいたい。
 わたしからの毒リンゴ、あなたは受け取ってくれるかしら?
「ほらまた会えた」
「どうして?」
 驚いてる。そうよね、ここはあなたの家だもの。
「どうしてかな。ねぇこのリンゴ食べない?」
「――おいしそう」
「はい」
 わたしは毒リンゴを渡した。
「いただきます」
 にっこり笑ってリンゴを口にした。
 ドサッ。
 あなたが倒れ込んだ。


●黄
 何もいらない、あなたさえいれば。
 わたしは鍵で、自分に合う錠前を必死に探してた。
 それをやっと見つけたの。
 それがあなた。
「ずっと愛している。離さない」
 倒れたあなたを抱きしめる。
 手には同じ指輪。
 その手であの日もらったジャムをそっと口元に塗る。
 手が触れて、あなたのポケットに入った手紙に気付いた。
『私は大好きなはあなたに殺される。それがあなたの望むことならば喜んで受け入れるよ』
 分かっててあのリンゴを食べたの?
 運命は悲しいから嫌い。
 わたしは運命より偶然を大切にしたいの。
 なのに、偶然は運命に変わりわたしを悲しませるの。
 鍵をあけたのは間違いじゃなかったって思わせてくれる手紙をぎゅっと握るわたしは泣いていた。

 あなたのくれたジャム、なんだか血みたい。
 今のあなたにとっても似合うわ。

おわり。


赤:赤ずきん
灰:シンデレラ
白:白雪姫
黄:黄金の鍵

(2012.10.18)

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