海鳴り
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「ゾラは海見たことある?」
「ないよ」
洗濯物を取りこみながらゾラが答える。恵外界に海に面した地域は無い。ましてゾラが住んでいるところから海まではだいぶ距離があった。
「いつか見てみたいな」
「じゃあさ」
洗濯物を取りこみ終えたゾラの目の前に、リタが前のめりに立ちはだかった。
「今から海行ってみない?」
突然の提案にゾラはうろたえる。
「い、今から?」
「今日はとっても天気がいいし、きっと絶好の海日和だよ!ね、行ってみようよ」
ずい、という効果音でも付きそうな勢いでリタの顔がゾラに近づく。
「でも、遠いし……」
「大丈夫!私の箒で行けばいい。行って帰ってくるくらいの魔力なら自信あるから!」
「リタがそう言うなら……」
「じゃあ行こう!私箒持ってくるね!」
若干リタに気圧されつつ、ゾラはリタと海に行くことにした。
「しっかりつかまっててね!いくよー!そーーれ!!」
「うわあ!!!」
リタとゾラが乗った箒が空へ向かって急上昇し、一直線に海のある方角へ進みだした。2人の乗った箒は初夏の空気を切り裂いていく。頬に当たる風にいつしか塩気が混じり、海が近づいていることをリタは感じていた。
「ほら、海が見えてきたよ」
リタが指し示した先は一面に広がる深い青。
「すごい……!」
眼前に広がる紺碧の海に、ゾラはただただ驚くばかりだった。
ゆっくりと箒は降下し、やがて砂浜へと着地する。さらさらとした砂に足をとられてバランスを崩してはよろけつつ、2人は砂浜を走り、波打ち際へ駆け寄った。
小さな波が寄せては返す浅瀬で、ゾラは初めて海に触れた。打ち寄せた小さな波が自分の足首で砕け、水しぶきが上がる。足元で柔らかな砂が崩れるとき、波が引いていく。
ゾラはその不思議な感覚を、何回も何回も、波が寄せては引いていく度に楽しんだ。