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【zmem】手紙

俺はエーミールが好きやった。
下手くそ下手くそ言いながらも俺のサポートにぴったりの運転。
優しい笑顔に、少し賢そうな話し方。
その全てが好きやったから、構えるだけ構った。
エーミールがこの国から居なくなる1年半前まで。
グルッペン曰く極秘の長期任務って話やったし、俺らも全員それを信じとった。
エーミールが帰ってきたら、告白しようって決めとったのに。
それなのに、今日俺らを呼び出したグルッペンは開口一番、こう呟いた。

「…エーミールは、流行病で死んだ。…この1年半も長期任務じゃなかった」

俯いたグルッペンの手元にあるのは蝶に囲まれた沢山の手紙。
あの蝶は、エーミールの…

「ど、どういうことやねん!グルッペン!」
「…すまない…あいつとも約束だった。死ぬまで、伝えない、と」

思わずグルッペンに掴みかかる。
けど、今にも泣きそうな顔で俯き続けるグルッペンをそれ以上責められるわけもなかった。
手紙は全員分あるらしく、グルッペンが一人一人に手渡してくる。
泣きそうな顔で、部屋に帰ってから…読んでくれとと言ったグルッペンはフラフラと自室に戻っていく。
俺も部屋に戻り、手紙の封を切った。

『ゾムさんへ
この手紙読んでるころには私は死んでいるんでしょうね。
何も言わずにいなくなってすみませんでした。私は皆さんに迷惑をかけたくなかったんです。
ねぇ、ゾムさん。私は貴方が好きでした。
3流ドライバーの私を連れ出してくれて。
こんな私と話してくれるあなたが、あなたの笑顔が。
…言葉で伝えられないし、返事を聞くこともないですが……愛していました』

「……なんで…なんで今言うねん……」

もう返事できへんやん…と手紙を抱きしめながら俺は崩れ落ちる。
止まらない涙、脳裏に浮かぶあの笑顔。

「エミ、さ…俺も…好きやっ……」

もう二度と届かない声は、誰にも拾われずに虚空に消えた。
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