other
name change
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
01. 誰もがわたしをそう呼ぶ (マルコ) ♪Lollipop 倖田來未
停泊した島の洒落たバー。
そこで店内のムードに漂って身を寄せ合い、見つめ合っている男女の姿。まさにその男……掛け替えのない仲間でもあり恋人でもあるサッチを「別れるから。浮気でも何でも好きなようにしなさいよ」と殴ったのは○○。
違うんだ、これは、その、聞き飽きた言葉を尚も並べようとするサッチに「よりは戻さない。オッケー?それでもお前が好きだとか言ったら今度こそぶっ殺すから」と言い捨てバーを出たのは数時間前。
「マルコ、抱いて」
そう自らの隊長であるマルコに言ったのは現在。
マルコはサッチを探しに行ったかと思えば舞い戻ってきた○○にも驚いていたが、ベッドに押し倒されて跨がられたということに衝撃を受けていた。
恥じらうことなく上着を脱ぎ捨てる。ベッドに押し倒されたままのマルコは唖然としていたが、これはいけないと思ったのだろう。ベビードールを脱ごうとした○○の手首を掴んだ。
「なに馬鹿なこと言ってんだい。お前にはサッチが……」
「サッチとは別れたわ。あのひとの浮気性はもう病気だし」
その言葉に「ああ…」とマルコは納得したようだったが、この状態には未だ納得していないのだろう。苦しいような切ないような、何とも言い難い表情をしている。こういうのを苦悶に満ちた顔、というのだろうか。
「だからって何でこんなこと……」
彼が何か喋る度に揺れる感覚に○○は妖美にほくそ笑んだ。
「分からないのマルコ? ……違うわ、分かってるはずよ。わたしがどうしてこんな真似をしたのか」
「………」
……わたしはわたしを好きな男が好き。
ただ、それだけなのだ。サッチとの付き合いも“サッチがわたしを好きだった”からであったし、今までの男もそうして付き合ってきた。ひとそれぞれ愛の形はあるけれど、○○の愛は“そういう男”を愛すことだ。
そして○○はマルコが自分のことを好きなのを知っていた。その青く澄んだ瞳の奥で劣情の焔がちらちらと燃え滾っているのを隠せるはずもないのに。マルコは隊長の位置から動こうとはしなかった。けれど、知っている。……触れる指先が愛しむように優しいことを。
マルコは苦々しい表情で吐きだした。
「サッチと別れてすぐにこれかよい」
何度も耳にしたことのあるフレーズに○○は小さく笑った。本当の意味でわたしを理解できる男はいないのかもしれない、そんな風に思えた瞬間だった。
マルコの手を振りほどき、彼の“シンボル”に指を這わす。
「時間なんか気にしない。……って言っても、誰にも理解されないんでしょうけど」
前かがみになるとベッドがギシ…と悲鳴を上げた。それはマルコの天国と地獄を表しているようだった。胸から鎖骨、首から顎、下唇から上唇へと指を這わすとマルコの瞳が揺れた。
だか、キスをしようとすればマルコは顔を背けた。彼の中でまだ葛藤があるのだろう。決して目を合わせようとはしなかった。
「わたしはマルコのことが好きよ、本当に」
そう言って未練を指先に乗せながら腹へと下り、ゆっくりと身体を起こす。ベビードールの肩紐が垂れるのも構わずにマルコを見つめていると。逡巡の最中に居るのか、マルコが小さく唸った。
そして突然起き上ったかと思えば、今度は逆に○○がマルコに押し倒される。掴まれ、ベッドに押し付けられた手首が痛かったが、それがマルコの愛の深さだと思うと何ともなかった。
「ひどい女だよい」
マルコは恨めしい眼で絞り出すような声でそう言ったが、彼が“こうなることを本当は望んでいた”事実を知っている。望んでいたけれど“望んではいけなかった”ことも。
「しょうがないわ。そういう星の元に生まれたのよ」
-------------------------------
02. くまのつめきり (ベポ) ♪ぼくはくま 宇多田ヒカル
昼時のぽかぽかした甲板の上、大きなオレンジ色の塊がもそもそと動いていた。それを見つけた瞬間、○○は思わず微笑んでしまう。
愛しのベポは一生懸命つめきりをしていた。
それも大きな体躯だからか前のめりで、つめきりをしている身体は丸くて、動きがもそもそしていて、とにかくもう可愛いくて仕方ないのだ。もう何年も一緒の船に乗っていて、もう何年もベポとつき合っている○○だがベポのつめきりを見たのは初めてだった。
真剣そうに爪を切るベポの姿は可愛くていつまでも眺めていたいが、あまりにも不器用なので次第にはらはらしてくる。指を切ってしまわないだろうか、そんな風に思いながら影から見守っていると。
「あれ、○○どうしたの? そんなところでつっ立って」
熱い視線に気づいたのだろうか。○○を見つけた瞬間ふわあっと笑って「こっちおいで」と手招きして来る。
(わたしって……愛されてるなあ)
そんな風に思いながら頬を染めた。ベポは愛を出し惜しみしない。その分直球でぶつけてくるのでその度に狼狽してしまう。昨日もいきなり抱きついてきて、「○○、好きだよ」と頬に口付けてくるものだから、ただただ頬を染めることしかできなかった。
呼ばれるがままにベポの元へ行くと手を引かれて座らされる。じっと見つめてくるベポの距離にも可愛さにも眩暈がしそうだった。
「あ!またほっぺた赤くしてる。可愛いなあ」
切ったばかりのやわらかなカーブを描く爪先で頬を突かれ、ベポと同じようにほわあっと笑った。
「ベポの方が可愛いよ」
するとその言葉を聞いた瞬間ベポの顔が凍りつく。「べ、ベポ?」不安になって名前を呼ぶがその表情はどんどん険しくなっていった。
「……全然嬉しくない」
「どうして?」
「皆に言われ続けてるし……それに男に可愛いはおかしいよ」
男ならかっこいい、と言われたいのだろう。ベポがかっこよくないわけではない。闘っているときの姿や、危ないとき一番に駆けつけてくれるベポをかっこいいと思う。けれどベポの場合、どうしても可愛さが勝ってしまうのだ。
ただ今「ベポはかっこいいよ」と言っても白々しく聞えてしまう。どうしたものか考えあぐねていると、ついにベポはむっとして黙りこくってしまう。
(どうしよう……)
今何を言ってもベポには効かないだろう。
言葉で駄目なら行動で表すしかない。
○○は身を乗り出してベポの小さな鼻に口付ける。効果音が付いたならば「ちゅう」という可愛らしい口付け。けれど、この愛しい気持ちを精一杯込めた。
「ごめんね。……機嫌なおして?」
傷付けるつもりはなかったの、とベポの頬を撫でる。ベポがいつもそうするように指を絡ませ、許してくれる?と見つめれば。
先程まで黙ってそっぽを向いていたベポが獣のように(獣なのだが)勢いよく抱きついてくる。そして、愛しさを伝えるように首筋に額を擦り合わせてくる。ふわふわの毛に包まれて○○はそっとベポを抱きしめた。
それでもベポは足りないように更に強く抱き締めてくる。
「あーもうっ! ○○可愛すぎ! 大好きっ!」
「わ……わたしも」
あはは、と笑いながら抱き締めあっていると。甲板の向こうから「うるせェ、お前ら」というローの声が聞えた。
------------------------------
03. とある昼食の光景 (キラー) ♪Sweet time double
キッド海賊団船内の食堂。そこからはニンニクの香ばしい匂いが漂ってくる。○○はニンニクが踊るフライパンの中に赤唐辛子を加え、小さく鼻歌を歌いながらコックを捻って弱火にする。
いつもならば騒がしい昼時、船内は静寂が包んでいた。と、いうのもキラーと○○以外は皆出かけていた。船の上だと身体がなまっていけねェ…一丁暴れてくるか、と言いだしたのは暴君で有名な船長キッド。皆キッドの言葉について行ったのが、○○は「わたしは船番しとくわ」とキラーと共に船に残ったのだった。
そして愛するキラーのため、昼飯を用意していた。
丁度ゆで上がったパスタをザルに上げ、きちんと水を切る。パスタをフライパンに入れてオリーブ油が全体にからまる様に手早く炒めあわせ、塩、黒コショウをしてさっと炒め合わせる。
(手慣れたものね……)
もっともキラーが食べたいと言うものはパスタ系だからか難しいことはない。昔は男に手料理振る舞うなんてガラじゃなかった。それどころか面倒くさくなって男を捨てるなんてざらにあった。それもこれもキラーに出逢ったからね……と小さく笑っていると。
美味しそうな匂いにつられてやって来たのだろうか。
キラーがキッチンに現れる。
「うまそうだ」
大好物のペペロンチーノだからか、キラーの声はいつもより柔らかで明るかった。
ペペロンチーノを覗き込むように彼が背後に立つ。その手は当たり前のように腰に置かれ、顎は肩に乗せられている。
「味見する?」
ああ、とキラーが頷いたので箸で少量絡ませ「ん」と口元まで持っていく。すると、吸い込まれていくパスタ。いつもながら感心してしまう、その食べ方。○○は微笑しながらマスクに付いた赤唐辛子を取ってあげる。
「旨い」
「ふふっ、そうでしょ」
愛情が入ってるからね、と口にしなくとも分かったのだろう。キラーが腰に腕を回して抱きしめてくる。
「ちょ、もー……なに」
「なんでもない」
「なら離してよ」
「いやだ」
ふたりきりだからか。遠慮なく甘えてくるキラーを可愛いと思いながらも、料理の邪魔なのは明らかだった。最初は「もう」「どけてよ」「キラ~…」と文句を言っていた○○だったが、あることを思いついて「いいわよ」と言った。
「麺が伸びるかもしれないけど」
「……それはいただけない」
「でしょ」
○○の忠告に一旦退いた腕。
それでも諦められないのか、邪魔にならない程度に触れてくるのだ。
(愛しさが止まらないってこのことだわ)
○○はくすっと笑った。
fin.