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01.悪魔の手招きが見える (マルコ) ♪Eventuarlly DOUBLE
わたしたちは海に嫌われている。
「ねえ……マルコ」
「ん?」
「溺れてみたい」
けれど海を嫌いにはなれない。むしろ海に触れられない身体になってから、海への焦がれる想いは底を知らずに膨れるばかりだ。
甲板の柵に凭れかかってずっと海を見ていると、やってきたマルコ。いつも通り海を眺めている○○にいつも通り「仕事しろよい」と言いにきたのだろう。だが○○が言ったこともない言葉を口にしたためか、マルコは面喰ったような表情をしていた。しかし○○は「冗談よ、」とは返さなかった。今まで口にしなかっただけで、この想いは募りに募ってどうしようもなかったのだ。それがどうしてだか口から滑り落ちてしまっただけで。
マルコは苦い顔をしてこちらを見据えてきた。
「そんなことしてもおれは助けてやれねェよい」
「そうね、でも……もう一度、この身体で海に触れたい」
深海を見たい。
拒絶されているような冷たい海に揺られて、さらにその向こうを見たいのだ。群青に染まる暗く美しいあの世界を。
その想いが脳裏にこびりついて、寝ている時も起きている時も何をしている時も離れないのだ。まるで禁断症状のように確かにわたしの脳内を侵しているのだ。自分の力じゃどうにもならない。
いっそ、いっそのこと……飛び込んでしまえばこの想いは消えるのか。
「欲張りは身を滅ぼすぞい」
海に嫌われる代償に能力を手に入れたのに海に入りたいなんてよい、そうマルコは言いたかったのだろう。そうね、とわたしは納得したように苦笑してみせた。けれど、今納得したとしてもまたいつか海に入りたいと思ってしまう。あの美しく終わりのない暗闇の中に沈みたい、と。
そんな気持ちが分かったのだろうか。
……入るぞい、そう言ってわたしの腕をとってマルコは部屋へと連れて行こうとする。わたしが溺れてみたいと望む一方で、この人はわたしを失うことを恐れている。失うまでもない、溺れたらきっとサッチやビスタが助けてくれるのに。それでも怖いのだろう。あの、能力者を拒む海が。
愚かなことだ、そう思うのにわたしは海が恋しくて堪らないのだ。
fin.
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