デフォルトは「水無月咲涼(ミナヅキ キスズ)」となります。
最も偉大な発明家は誰か?
What's your name?
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5.改めて考えるとやっぱり変だよね?
──軍人さんから聞いた話をまとめようと思う。
まず、トランスフォーマーという宇宙人が居る。体は金属でできており、人間よりも遥かに強く、頭も良く、しかも長生きできる、とにかくすごい生命体。
トランスフォーマーは車などを読み取って、そっくりに変形できる。変形したらそのもののように走ることができて、普段はそうやって擬態して生活している。
で、トランスフォーマーの中でもオートボットとディセプティコンっていうグループがある。
極端に言えばオートボットは良いひと、ディセプティコンは悪いひと。
アメリカが主な拠点で、オートボットはNESTという対ディセプティコン部隊に所属している。
今は日本の、この付近にディセプティコンが現れていたのでやっつけに来た。それが昨日の戦闘。
「なるほど……」
……って、冷静に考えてる自分が怖いよ!
何これ、漫画か映画の設定? 私、何か変なドッキリを仕掛けられてるの?
だいたい、この辺なんて何もないよ。
都会みたいなビル群もなく、かといって広大な農地や放牧地もない、本当に平凡な町だ。田舎ではないけど特別栄えてもいないし。観光地でもないし。
全部が本当だとして、そのディセプティコンは何でこんなところに来たんだろう。暇なのかな……いや、そんなわけない。暇だからってこの辺りには来ない。
「奴らは劣勢だ。どこか隠れる場所を探して廃墟を巡っている。この近くにもあったはずだ」
「近くに廃墟……あ! 廃墟なら確かにあります」
近くと言っても歩いて四、五十分はかかるけど、ボロボロの錆び付いた建物に植物が巻きついて、なんとも言えない不気味さを放っている所があった。住宅地から少し離れてぽつんと建っているから近くに行くことなんてないし忘れていた。
元々大きなスーパーか何かだったはず。もう何年も前に潰れたらしいけど。私がここに引っ越してきたときには既に植物まみれの薄気味悪い状態だった。
そこに隠れてたってこと? うそみたい。
「それって私に話して大丈夫なんですか……?」
トランスフォーマーなんて存在は今まで知らなかった。隠し事には隠すだけの意味があるはずだから、私みたいな一般人が聞いていい話じゃないんじゃ……。
軍人さんは眉間にシワを寄せた。
「本来は許されない。だがお前は巻き込まれた被害者だ。説明は必要だろう」
名前も知らない人に『お前』呼ばわりって……。
まぁ、記憶を消されたりはしないんだ! 良かった! いや、ちょっと怖かったから記憶が無くなった方が嬉しかったかもしれないし、なんかすごいことも教えられちゃったから……これから先こんな秘密を抱えて生きるのかと思うと重いな……。
「……とにかく怪我はないようで良かったな。万が一のことがあったら連絡しろ」
「連絡ってどこに?」
「今からスマホに登録すればいい」
テーブルの上のスマホを指差す軍人さん。
ロックを解除してアドレス帳を開く。数少ない連絡先は家族か職場の人くらい。
軍人さんの方を見ると、貸せと言わんばかりに手を差し出している。大して知りもしない人には渡したくない……。
しかし段々と険しくなっていくのを見て慌ててスマホを渡した。番号を言ってくれれば自分で打ち込むのに。
やがて返されたスマホには新しい連絡先。Ironhide……表示された英単語は見慣れない。そもそも英語なんて縁がないから大体は読めないし話せないけど。
「I……アイアン……」
「アイアンハイド。俺の名前だ」
「アイアンハイドさんって言うんですか?」
「そうだ」
それは俺に直接繋がる、と頷く軍人さん。直結って言っても、番号も何も書かれてないけど。
「とにかくそれにかければ繋がる。ディセプティコンを見たとか襲われたとか……そういう問題があればかけろ」
「分かりました……」
なんか、胡散臭いな……。本当に繋がるのかな?
やっと名前の分かったアイアンハイドさんは相変わらず怖い顔だし。
「何か質問は?」
「ない、です」
そうか、と呟いたアイアンハイドさんは隣に座る軍人さんに何か言って立ち上がった。私が何か言う前に玄関へ向かい、さっさと靴を履く。
「このことは他言無用だ。言いふらしたところで信じる人間もそうそう居るとは思えないがな」
それだけ言うとドアを開けて外に出ていった。
ちょっ、ちょっと!? 確かに質問はないって言ったけど、出てくの早すぎない!?
「アイアンハイドさん!」
慌てて外に出て呼び止めると、彼は振り返った。まだ何かあるのかって顔。こわい。
「あの、えっと、私って何もしなくていいんですか!?」
「あぁ。お前は今まで通りの生活を続ければいい」
それだけでいいの? いや、そりゃあ、大それたことをしろと言われたら困るけど……わざわざ家に押しかけてくるから、何かしろって脅されるのかと思ったし。
私には何の力もないし、確かにできることなんてないよね。むしろ普通に生活しろって言われて安心した。
「それと」
アイアンハイドさんはこちらを指差した。
「さん付けはやめろ。こっちは弟子にも呼び捨てにされてるんだ。改めて敬称をつけられると気持ちが悪い」
それだけ言い捨てて今度こそ去っていった。もう一人の軍人さんは軽く手を振ってその後ろをついていく。
私は部屋に戻って、結局アイアンハイドさ、……アイアンハイドが全く手をつけなかったぬるいコーヒーを啜った。
あれは夢じゃなかったし、幻覚でもなかった。アイアンハイドの説明は辻褄は合うのかもしれない。
だけど。
「信じろってのも確かに無理があるよね……」