デフォルトは「水無月咲涼(ミナヅキ キスズ)」となります。
最も偉大な発明家は誰か?
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41.怪我人は無理せぬように!
私とオプティマスは、ラチェット先生達の作業を眺めていた。私はどうせ暇だからいいけど、オプティマスは司令官として忙しいんじゃないのかな?
「オプティマス、忙しいんじゃないんですか? 大丈夫?」
「あぁ、確かに仕事はある。しかし急務ではない。友の傍に居るのも悪くないだろう」
そっか。そうだよね。離れて任務にあたっていたかと思ったら、死にかけたなんて一報が入ってびっくりしただろうし。
仕事どころじゃないのかも。
「そういえば……どうしてヒューマンモードでは腕が残ってるんですか?」
ラチェット先生はよく聞いてくれたね、と言いたげな顔でこちらを見た。
『ヒューマンモードの皮膚や髪の毛は、元から用意してある器みたいなものなんだ。ロボットモードの体がどうなろうと、ヒューマンモードには影響しないんだよ』
そうだったんだ。すごく不思議だったけど、本来の体とヒューマンモードの体は別物なんだ。
「あれ、それなら左腕を動かせるんじゃ……」
『それがそうもいかない』
笑いながら人差し指を振る先生。
何でなの?
『そもそもヒューマンモードは我々の巨体を人間の形に無理やり詰め込んでいる。人間の身長や体重と変わらない程度に、小さく縮めてね』
詳細を聞きたいかい? と問うラチェット先生。何度も横に首を振って返事とした。聞いても分からないと思う。科学は得意じゃない。
私が得意なのは割引の計算とか、そういうの。生活にはすごく大切でしょ!
先生は『では続けよう』と頷いた。
『縮める際には、腕のパーツは腕に、足のパーツは足に収めるようになっている。ロボットモードで左腕がないということは、ヒューマンモードに移行したって左腕には何も入れられない』
『確かに左腕の感覚は全くなかったな』
『そうだろう? 器しかないんだから当然だ』
理由は何となく分かった。
腕自体はあっても動かせないんだったら違和感がありそう。でもしばらくはその状態が続くんだろう。
『……よし、終わったな。ヒューマンモードになってもいいぞ』
『あぁ』
起き上がったアイアンハイドはするするとヒューマンモードに移行し、軽く首を回した。
「トップキックになれないのが困ったもんだな」
『仕方ないだろ、腕の分だけパーツが無くなっていれば車の形はさすがに維持できない。そもそも怪我人を外に出すと思うかね?』
「分かってるが……」
こちらを見るアイアンハイド。わたし? 私がどうかしました?
……あっ、そっか。いつもアイアンハイドには乗せてもらってるから……。
「大丈夫だよ。元々車に乗って移動する生活してなかったから」
今までアイアンハイドのおかげで楽させてもらってたけど、これからはまたバス通勤に戻るだけ。運動がてら歩くのも悪くないし!
「アイアンハイドは早く腕を治してね」
『あー、それなんだが』
先生はやや言いづらそうに切り出した。何でもズバズバ言っちゃうようなひとが珍しい。
『アメリカに帰らないと十分な治療はできない。近いうちに算段をつけて本部に帰る予定なんだ』
「あ……」
そっか。当然だ。晴れて恋人になれたとしても、やっぱり住む世界は違うんだし。
治療が終わっても、活動拠点であるNEST本部はアメリカになるわけだから……日本には戻ってこないだろう。
「咲涼の護衛はどうなる?」
アイアンハイドの問いに、オプティマスが答える。
「確かにしばらく続けた方がいいかもしれないが……欠片の在り処については、ようやく奴らも気付いたようだ。じきに彼女への被害はなくなるだろう」
その言葉にほっとした。いつまでも狙われて、いつまでも彼らの手を煩わせるわけにはいかないから。
「それなら良かったです。私も普段の生活に戻らないと」
仕事はできるだけ早く復帰しなきゃ。最近は迷惑かけてばかりだし、有給もほとんどないから休めなくなる。
「それに、オプティマスもアイアンハイドも大事な戦力だろうし、こんな小さな国に居るわけにはいかないでしょ?」
「咲涼……」
だから帰るまでに思い出いっぱい作っておかなきゃ。写真とか……だめかな? ヒューマンモードならいいよね?
「敵が居るのはどの国も同じことだ。偶然が重なってアメリカが主な戦地というだけで」
『確かにメガトロンが凍結されていたのも、サムが居たのもアメリカだった。我々の活動拠点がそこになるのも道理ではあるな』
オプティマスとラチェット先生がそんな話をしてる中、ジョルトは『メガトロンが凍結? 初耳だ。そんなことがあったのか、アイツ』と笑っていた。メガトロンって誰だろう。
「メガトロンって?」
「ディセプティコンの親玉だ。元を辿れば、ソイツがオールスパークを求めて北極に墜ちたのが偶然の始まりだな」
北極に墜ちた? それはまたドジなことで……そんな所に墜ちたなら凍結もしちゃうわ。というか、トランスフォーマーでも寒さには勝てないんだね。
「……知らん内に会議が始まってるな……」
アイアンハイドの視線を辿ると、オプティマスとラチェット先生、それにジョルトまで加わって何やら話し込んでいた。
『貴重な人員を分散するのはどうかと思うが』
「しかし以前行なった上海までの移動はかなり大変だったぞ。日本ならば中間地点としては悪くない」
『補給をするにもいいかもしれませんよ』
『ふむ……』
「何の話だろうね」
「さぁな……良い予感はするが」