デフォルトは「水無月咲涼(ミナヅキ キスズ)」となります。
最も偉大な発明家は誰か?
What's your name?
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40.円滑化のため、恋人同伴を。
朝ご飯にはまだ早い。だけど二度寝するような感じもなくって、ずっとアイアンハイドとお話していた。
彼が眠っている間、ラチェット先生、オプティマス、レノックスさんがやってきたこと。ジャズさんという方も居るそうだけど、そのひとは副官として本部に残っているとか。
そしてディーノさんというトランスフォーマーは人間がそれほど好きじゃないので連れて来なかったこと。
このディーノさんって、人間はそんなに好きじゃないのに地球を守ってくれるの優しいね。
ときどき相槌を打ちながら話を聞いていたアイアンハイドは、軽く首を傾げた。
「何でラチェットのことは先生って呼ぶんだ?」
「えっ? だってお医者さんだし……」
教師や医者は先生って呼ぶでしょ?
「そういうもんか? ……他の若い連中はどうした?」
「サイドスワイプとバンブルビーは本部に帰っちゃった。ジョルトはまだ残ってるよ」
ラチェット先生の助手としてすることがあるだろうし、アイアンハイドの腕を斬った彼だからこそ分かることもあるだろう。
「アイツは居るのか。直接礼が言えるな」
礼、ってそのままの意味だよね。ね?
なんだか不安に思っていたら、コンコンコン、と扉が軽い音を立てた。はーい、と返事をするとラチェット先生とジョルトが入ってくる。
「おはよう二人とも。今朝はベタベタくっついて居なくて結構だね」
「おはようございます。忘れてって言ったのにな!」
しかもそんなニヤニヤしながら言わないでください。忘れてはくれないだろうなって分かっちゃいたけどすごく嫌です!
昨日の夜だって、今日みたいにノックしてくれたらすぐ離れたのに!
「具合はどうだ、アイアンハイド」
「そこそこだ。立って歩くくらいはできるだろ。あー……ジョルト。お前に助けられるとは思ってなかった。……感謝する」
「ははっ、アンタからそんな言葉を聞くなんて。恩は売っとくもんだな」
笑うジョルトをよそに、ラチェット先生がアイアンハイドを立たせる。
「さぁ、検査の時間だ。広い場所へ行くぞ」
「こんな朝っぱらから……」
文句を零しかけたアイアンハイドに、先生はやや苛立ったような引きつった笑顔で言葉を返した。
「少しでも早く状態を確かめて処置の手配をしなければならないんだ、分かるか寝坊助?」
「あー、了解だドクター」
お医者さまってやっぱり強いなぁ。
ジョルトとラチェット先生は検査のためにアイアンハイドを連れて行ってしまった。ずっと寝ていたアイアンハイドは歩くのも大変そうだったけど、肩を借りれば何とか大丈夫そう。
私もついて行こうと思ったけど……邪魔はできない。彼らの背中を見送り医務室でぽつんと佇む。
「どうしようかな」
ぐう、とお腹が鳴った。そう言えば雑談をしてるうちに結構時間経ってたんだ。食堂はもう開いてるかな?
一度空腹を思い出すと耐えられなくなる。うるさいお腹を押さえながら食堂に向かった。既に何名か食事をしていたので、私もご飯を頂いた。
まともに食べるのは久々。すごく美味しくて、自分でもびっくりするくらい食べてしまった。
……単純だなぁ、私も。アイアンハイドが心配で食事も睡眠もままならなかったのに、彼が起きれば途端に喉を通るしぐっすり眠れる。
「咲涼、食事は終わったか」
「あ……はい。ちょうど。オプティマスはどこへ?」
食器を片付けて食堂を出ると、オプティマスが廊下の先から歩いてきた。トランスフォーマー達はご飯を食べないからこんな所に用はないはずだけど……。
彼は「なに、大したことではないが」と前置きした。
「アイアンハイドの様子を見に行こうと思ってな」
「そうなんですね。行ってらっしゃい」
「いや、君も共にどうだ」
私も? 邪魔にならないかな? まぁ、彼らの司令官に誘われたんだし……じゃあ、お言葉に甘えよう。
オプティマスに付いてラチェット先生達の元へ向かう。彼らがロボットモードで過ごす場所は決まってる。天井が高くて広いのは、この建物に入ってすぐの広間みたいな場所だけだから。
その広間へ着くと、ラチェット先生やジョルトの話し声が聞こえた。
医務室で別れてからそれなりの時間が経ったはずだけど、アイアンハイドはまだ何か検査を受けていた。床に横たわりされるがままになっている。
左腕はなく、体もえぐれている。本人も周囲も平然としているけれど……改めて見ると胸が苦しい。
「アイアンハイド」
『……その声はオプティマスか?』
「あぁ。久しいな」
アイアンハイドは動けないまま返事をした。やや自嘲気味に笑いながら『そうだな』と。
『こんな格好で悪いが』
「守るべきものを守った結果だ、恥じることはない」
『そう言ってくれると助かる』
ふたりの会話をぼんやり聞いていた。旧知の仲間のお話には混じれない。
あの腕、痛くないのかな。痛覚センサー? を切ってるんだっけ。だったら大丈夫なのかな。
静かに検査を受けていたアイアンハイドは、何かを感じ取ったのか不意にむっと顔をしかめた。
『……おい、待て。咲涼が居るんじゃないか?』
「えっ! なんで分かるの!? 見えてるの?」
上を向いてるから、小さい私は見えてないと思うんだけど。
私の驚きの声にアイアンハイドも大声を出す。
『やはりな! 何で居るんだ! こんな姿見られたくねぇってのに!』
『アイアンハイド、うるさいぞ』
『はいはい、患者は暴れないでくださーい』
起き上がろうとする彼を、ふたりのお医者さんは半ば無理やり押さえつけた。
どうして見られたくないんだろう。オプティマスの言う通りその姿が恥ずかしいなんてことは全くないのに。
「怪我しててもアイアンハイドはかっこいいよ」
『ッ……そうか』
すん……と静かになった彼に、ラチェット先生は呆れたような溜め息をついた。
『咲涼が居てくれた方が作業が円滑に進みそうだな』