デフォルトは「水無月咲涼(ミナヅキ キスズ)」となります。
最も偉大な発明家は誰か?
What's your name?
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
4.もう一度言ってみて。
「コーヒーでいいですか? インスタントですけど」
「What?」
「She say “Do you drink coffee?”」(『コーヒーは飲むか』と)
「Oh, yes.」
「飲むそうだ。コイツの分だけ用意してやれ。俺は飲まん」
「そうですか……?」
結局二人は私の部屋に入ってきた。どこかへ連行されそうな雰囲気だったけど、落ち着くのならどこでも構わないと言うので本当にここで話をすることになったのだ。
外人さんはソファに並んで座ってもらっている。少し窮屈そうだ。どちらも体格がいいから、二人掛けのソファでも小さいんだろう。
「お待たせしました」
カップを差し出せば外人さんは「Thank you.」と頷いて一口啜る。要らないと言った方にも一応淹れたが、カップを目の前に置くと『要らないと言っただろ』みたいな怪訝そうな顔をされてしまった。こわい。
「それで、その、お話とは……」
「さっきも言ったが昨晩のことだ」
私が目にした大きな黒と、大きな銀、それから女性のような赤。あれはどう考えても人間じゃないし、人間が作ったものでもない。だって人類はまだ、ちょっと喋ってちょっと動けるようなAIロボットが発明された程度でニュースになるレベルだ。映画で見るような、人間のように滑らかに動くロボットすら居ない。
それなのにあんな馬鹿でかいロボットが居るかな。いいや、居ない。もし人工ならば世紀の大ニュースだ。一体どこの会社が発明したのか。もちろんあんなものを作れる会社なら、損害賠償金も払ってくれるんだろう。
「昨晩アンタは何故あの場に居た?」
「え……なぜ? えーと……最寄りのバス停から歩いて帰るところ、でした」
当然だけど、好きで居合わせたわけじゃない。だってあんなデカイ何かの戦闘に巻き込まれたら私なんてぺちゃんこだ。事前に知ってたら避けて通るだろうし、そもそも怖くて帰ってこなかったかもしれない。
「あのパン屋の近くからこの付近まで、バスが走っていたと?」
「そうですけど……」
っていうか、私のこと覚えてたんだ! たった二回ほど接客しただけなのに。ずいぶん記憶力がいいんだなぁ。
「……そんなはずはない」
黒髪の外人さんは手を顎に当てて何か考え込んでいる様子。初見の外人さんはというと……コーヒーを飲みながらこちらを見ていた。その目が何だか蛇か何かのように見えて恐ろしくて、震える手でコーヒーカップを持った。
ややぬるくなりつつあるコーヒーを半分ほど一気に飲み、一瞬だけでも喉を潤す。味を感じない。砂糖が足りなかったかもしれない。
「What she say?」(彼女はなんて?)
二人は英語で話し始めた。早口だし一言が長いし、さっぱり分からない。学生時代は遠い昔だし、英語の授業はいっつも寝ていたのだ。
しばらく二人はそうやって話していた。どちらの顔も苦々しい顔をしており、どうやら良くない感じだ。私が悪いわけではない、よね?
「他に乗客は?」
「……居なかったと思います……」
私が乗った時は何人か居たけど、降りる時には一人だったような気がする。他の乗客をじろじろ見たりしないし、前の方の座席に座ったからよく覚えてないけど……。
でも確実に人は少なかった。あの時間帯だと退勤に重なってそれなりに混むのに、昨日は余裕で座れるくらいには空いていたんだから。
「昨日、朝晩でバス停の張り紙は見たか?」
「張り紙? いや、見てないです。そんなのあったかな……」
時刻表は大体把握してるし、待ってればバスは来るからそれに乗ればいい。だからいちいちバス停の張り紙なんて確認しない。というか気付かない。
昨日の張り紙も全然記憶にないなぁ……。
「…………周りを見てなさすぎるな」
黒髪の外人さんは呆れたように呟いた。
確かにそうですね、でも日常生活で常に警戒してる人間もそうそう居ないと思いますけど!? いちいち周りを気にしてたら疲れちゃいますし!?
「それがあの……戦ってた奴と関係あるんですか? そもそもネスト? ってなんですか?」
少し……ほんの少しだけイライラを抑えきれずに質問する。ネストなんて聞いたことないけど、多分なんかの組織でしょ? めちゃくちゃ怪しいじゃん。
質問に答えてるんだし、こっちだって答えてもらわないと。
「NESTはアメリカ軍に属する、対ディセプティコン特殊部隊だ」
「でぃせぷ……?」
「ディセプティコン」
ディセプティコン? すごく言いづらい……。
「ディセプティコンは地球を支配しようとしている組織で、俺達は支配を阻止するために闘っている。今回はディセプティコンの一部がこの辺りに居るから始末しに来た」
「始末……」
それが昨日の戦いってこと? あのロボット達は確かに戦っていた。どちらがその悪い奴なのかは分からないけど……いや、女性のような声を発していた赤は私を助けてくれたし、そもそも赤は、黒に呼ばれて出てきたように思える。
つまり赤と黒はNESTの仲間で、銀は悪い奴……?
そこまで考えてハッとした。
そうだ。あのロボット。一軒家ほどの大きさのあれは、そもそも何なんだ。
「戦ってたロボットは何なんですか? 軍で作られたもの……ですか?」
「……あれはトランスフォーマーだ」
「トランスフォーマー?」
聞いたことない。
軍人さんは私の様子を見てやや考えて、「分かりやすく言うなら……」と言葉を続ける。
「宇宙人、だな」
……なんて?