デフォルトは「水無月咲涼(ミナヅキ キスズ)」となります。
最も偉大な発明家は誰か?
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39.蕩けるような幸せ。
「恋人になるのは躊躇ってたのに、キスは簡単にするんだ」
「そ、それは……」
じと、と視線を送ると、彼は軽く頭を掻いてヤケクソ気味に言った。
「恋人になるってのは人生を左右するだろ。そんな大事なこと俺が背負っていいのか分からなかったんだよ。だが恋人になっちまったんなら我慢も限度がある。キスぐらい……してぇだろ」
「ふーん?」
恋人にならなくたってアイアンハイドには人生を左右されてるんだから、気にすることはないのに。
勇気や度胸はあるはずの彼が変なところで臆病になっていたというか、妙に物怖じしていたのは本当に不思議。
でもそれだけ私を大切に思ってくれているのかもしれない。そう考えると胸がむず痒くなってきた。
それに、欲が出てきたのは私も同じ。ちょっと前は話せれば満足だったのに、今は傍に居たいし触れ合いたいし、もちろんキスだって……。
「……我慢なんか、しなくていいよ」
「……?」
「好きなだけキスとかしてもいいよって言ってるの! 私も我慢しないで傍に引っ付いたりぎゅってするから」
アイアンハイドは微笑んで頷いた。
「言質は取ったぞ」
「えっ?」
なに、その言い方! 笑顔がこわく見えてきた。余計なこと言っちゃったかもしれない。後悔したってもう遅い。
緩く抱き寄せられ額にキスを落とされる。スキンシップに慣れていない私にはそれすらも恥ずかしい。
「……震えてるのか? 可愛い奴だな。自分の発言を悔やんでるんだろ?」
「は、ぇ……なんで分かるの?」
「ずっと一緒に居たんだ、分かるさ。心配するな。別に取って食いやしない」
今は、な。
耳元で囁かれた言葉は私を追い込むには十分だった。
心臓がバクバクいって止まらない。もう何がなんだか分かんなくなってきた。
アイアンハイドってこんなひとだったっけ。息をするように可愛いなんて言われて、時間差で感情の波が押し寄せてきちゃったし。
なんか、なんか……発言がいちいち甘くて、今までのイメージとは全然違うから、温度差で風邪引きそう!
「も、すこし……抑えてくれると、うれしい、です……っ」
「だが許したのはお前だぞ」
「だってこんなに来ると思ってなくて……!」
想像できなかった私が悪い。でもいきなり大人な雰囲気を出してくるアイアンハイドもかなり悪い。
「恋人なんて初めてだから、柄にもなくはしゃいでるのかもな」
「初めて!?」
何千年も生きてるのに!?
「故郷では戦いばかりだった。それは地球に来てからもさほど変わらない」
アイアンハイドに恋愛のイメージはないけど、大人だから意外と経験あるのかなー、なんて思ってた。
それなのに初めてだとは。初めての交際でこの感じ出せるの、とんでもない才能を感じる。
「私も全然経験なくって。一緒だね」
笑いながら答えると、アイアンハイドは深く深く溜め息をついた。
「……大切にする」
「おねがいします?」
アイアンハイドが何を考えてるのはちょっと分からない。でも大切にしてくれるというならありがたくそれを享受したい。
……夢みたいだなぁ。こんな幸せでいいの?
「アイアンハイド、大好きだよ」
「知ってる。痛いくらいに」
「痛いくらい?」
あぁ、と頷いたアイアンハイド。穏やかな優しい声で言葉を続けた。
「お前が好きだと笑顔で言う度に、スパークがぐちゃぐちゃになるんだ。体が動かなくなるし、ブレインサーキットも動きを止める。生きているのが不思議なほど苦しくて痛いのに、心地いいんだよ」
「そんな大袈裟な」
「嘘じゃない」
その目はむっと細められ、いまいち信じていない私に抗議するかのようだった。
ううん、信じてないわけじゃないんだけど、だって表現がオーバーすぎるんだもん。
「ふふ。アイアンハイド、好きだよ」
「ん」
「すき。だいすき。すっごくすき」
「やめろ……」
「強くてかっこいいとこも、優しいとこも、笑うとふわっと柔らかくなるとこもすき」
「分かった、分かったから」
「まだまだあるよ。顔の傷もかっこいいし、おっきい手もすき。細くて鋭い目もすき! あとね……」
「咲涼、勘弁してくれ!」
アイアンハイドは大きな手で顔を覆った。隙間から見えるその顔や耳は真っ赤になっていて、アイアンハイドもこんなに照れることあるんだ! って嬉しくなっちゃった。
ふふ。こんなに強面の男のひとなのに何だかかわいい。
「ごめんなさい、からかいすぎちゃった」
「ぐいぐい来るのは咲涼も大概じゃねぇか……」
「仕返しだよ」
私ばっかりドキドキさせられてちゃフェアじゃないもん。
「覚えてろよ」
「う……」
こわいなぁ。アイアンハイドの反撃は何倍にもなりそうだ。早めに忘れよっと。