デフォルトは「水無月咲涼(ミナヅキ キスズ)」となります。
最も偉大な発明家は誰か?
What's your name?
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22.本人がそれでいいのなら。
「まぁいい……何の用だ」
「用ってほどじゃないんですけど……ただ、ちょっと休んだ方がいいんじゃないかと思って」
朝からずっとこの部屋にこもってるんだもん。さすがに疲れたんじゃない? 食事も睡眠も大して必要ないとは言え、疲労は溜まるはず。
「休むより先にやらなきゃいけないことがある」
「でも……」
「それなら、咲涼にも意見を聞くのは?」
「おっ! ジョルト、それいいな」
何の話? と首を傾げる。聞いても大丈夫?
アイアンハイドの方をちらっと見ると、口を閉じたまま何も言わなかった。これは……良しかな?
「咲涼の護衛の話です」
「ビークルモードにしろ、ヒューマンモードにしろ、外でずっと張り込んでるのは怪しいよな?」
それは怪しい。とても。私も落ち着かないし、ご近所さんに通報されると思う。
護衛かぁ。ずっとついててもらうのも申し訳ないけど、そうしてないと意味ないもんね。ディセプティコンがいつ来るか分からないし。
「別に、私の家に居たらいいんじゃない?」
「……それは駄目だ」
アイアンハイドは首を振る。
えっ、何で? 狭いのが嫌かな? ヒューマンモードならひとりくらいの生活スペースは確保できると思うんだけど……。
あ、ご近所さんの目はちょっと怖いかな? 冴えない女がいきなり外人と同棲するようなもんだし。
「あのな」
唸る私に、アイアンハイドが心底呆れたような顔で言った。
「俺達にも性別はあって、しかも男なんだぞ。易々と家に上げるもんじゃない」
「あぁ、そういう……!」
確かにそうだ。
「お前はもっと警戒心を持て」
同じことを前も言われた気がする。アイアンハイドに建物を案内してもらってるときに、NESTの皆さんがどうこうって。
それで、トランスフォーマーのみんなを……特にアイアンハイドを警戒してたらSOSもできないですよって返したんだ。
トランスフォーマーのヒューマンモードは普通の人間と区別がつかないくらい精巧なものだけど、実際は金属の宇宙人だしなぁ。それを知ってるからあんまり心配とかはないかも。
だってそんな高度な生命体、たかが人間に興味なんてないんじゃない?
「じゃあどこで待機しますか?」
「……」
みんなして黙る。それで悩んでたから私に話をふったんだよね。単純に考えれば一番いい案だとは思うな。
駐車場があるから、私の車として停まっててもらうことできるけど……それこそ、小さな規模のアパートで外車に乗ってるチグハグな女になってしまう。
ちょっとそれは勘弁してほしい。大した贅沢もできないのに車だなんて。
「私は家に入られるのは気にしませんよ。どうせ寝るだけの場所なんだし」
それに、そうやって心配してくれるひとが襲ってくるとは思えないなぁ。
アイアンハイドは眉間のシワを深くしたまま、盛大に溜め息をついた。
「ハァ……まぁ、俺としても手出しなんざするつもりはないがな」
「……アイアンハイドが来るんですか?」
もう決まってたんだ。先に聞けば良かった。
「そうだ。アイアンハイドが一番強いし、黒髪だから目立ちにくいだろ?」
「ついさっき決まったんです」
そ、そっか。アイアンハイドが……。
それなら、家に居たらいいなんて言うんじゃなかった。サイドスワイプやジョルトなら友達みたいに過ごせるけど、アイアンハイドは難しそう。
アイアンハイドは友達って感じじゃない。何だろう。ふたりで過ごすには、ちょっと……。
アイアンハイドの方を見ると、真っ直ぐにこちらを見ていてびっくりした。慌てて目を逸らして、何か言わなきゃ! と「あー」とか「えっと」なんて情けない声を出す。
「っよ、よろしくお願いします!」
「あぁ」
家に居るのはいいとして、もしご近所さんに何か聞かれたらどう説明したらいいんだろ。
親戚? いやいや、いきなり親戚を家に住まわせるかな。しかも外人を。そもそもガイジンの親戚ってどういうこと? 怪しすぎる。
それとも……えっと……友達とか、こ、恋人とか?
勝手な想像をして顔が赤くなるのを感じた。
「……咲涼? 顔赤いけど大丈夫か?」
「だ、大丈夫! なにもないよ、なにも」
恋人なんてそれこそ変だ。いきなり外人の恋人ができて、ましてや同棲を始めるなんて。急展開にも程がある。
……それに、アイアンハイドみたいなひとが恋人なんて、私には勿体ないし有り得ないよ。例えフリでも。
「今度は暗い顔してどうしました?」
「大丈夫、きにしないで」
一人で色々考えてるだけだから……。
「……本人がいいと言うなら邪魔するぞ。ジョルト、コイツの怪我の具合はどうだ」
「異常はない。いつでも帰れる状況だ。骨折がなかったのが幸いしたな」
そうか、と頷いたアイアンハイド。少し考え込んで紙に何か書いている。
「詳しいことは他の奴らと話してからになるが、帰宅は明後日以降だろう。お前はその身一つでここに来たから、支度は特にないな?」
「はい、なにも」
せいぜい、あの日着ていた服くらいだろう。今はその辺で買ったであろうTシャツなどを借りているけど、これはどうすればいいかな。サイズ的にNESTの人たちは着れないと思う。みんなムキムキだし。
「借り物の服はどうしたらいいですか?」
「服は持っていけ。安物だから金も要らん」
「じゃあ、貰っちゃいますね!」
くれるって言うからなら貰うとも。人の好意は無駄にしないの。