デフォルトは「水無月咲涼(ミナヅキ キスズ)」となります。
最も偉大な発明家は誰か?
What's your name?
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21.Strategy meeting now.
水無月咲涼の発言によって、これからの方針は全く変わった。
隠れる奴らを追うだけだった俺達は、罠にかかる獲物をひっそりと待つ狩人になったのだ。
正直、こんな作戦は俺も賛成ではない。アイツを危険に晒すべきではないと分かってはいる。
水無月咲涼がこの方法を提案したとき、本人は気付いていたんだろうか。震えていたことに。
毅然とした態度で物を言っていたが、彼女は平和な国で生きてきた人間だ。戦うことに慣れているわけもなく、根底では恐怖が満ちているはずだ。
だが……彼女は俺を信じると言った。ならば仕方ない。答えてやるさ、俺の全てを以て。
「応援を呼んだ方がいいんじゃないか。敵の数はあと一……だが事態が事態だ、これから増えるかも分からない」
「だが今はアメリカも切迫している。無闇に呼べば向こうが危機に晒されるだろう」
水無月咲涼の提案から数日後の現在、俺はジョルトとサイドスワイプを部屋に呼び、計画を練っていた。もちろん俺達だけで全てを決めるわけじゃない。この話し合いが終わったらNEST隊員とも話を擦り合わせて、また俺達で話し合いそしてまた……何度かそれを重ねて最終的な計画を決める。
もちろんディセプティコンの出方次第では計画がぶち壊されることは大いに有り得るが、そこは戦闘経験を活かすしかない。
「俺はこのメンツだけでいいと思うぜ。単純な戦闘なら俺らが勝つに決まってる」
「確かにな……」
ジョルトは医者という立場だからともかく、俺とサイドスワイプは戦闘特化だ。馬鹿ではないが圧倒的な武闘派。よほどのことがなければ大抵のディセプティコンは倒せるだろう。
だが……わざわざ日本にまで来た奴が真っ向勝負などするか?
「武力で勝てることと、勝負に勝てることは違う」
「どういうことだ、ジョルト」
「そもそもディセプティコンは日本に“逃げてきた”のか? それとも“欠片を探しに来た”のか?」
一度言葉を切ったジョルトに、続きを、と視線を送る。
「前者ならいい。見つけ次第ぶちのめしてやればもう危険はない。だが後者なら、倒してもまた新しいディセップが送り込まれるだけだ。終わりがない。奴らにとって勝利とは欠片を手に入れることだからな」
ましてや、欠片とはいえオールスパークのためなら、下っ端共は命を賭けるだろう。ディセプティコンの中には俺達以上の戦闘狂も少なくない。死を恐れず、目的のためなら何だってする。
オールスパークの力があれば新しいディセプティコンを生み出すのも造作はない。メガトロンからすれば、例え部下を失っても補填できるのだからさほど痛くはないはず。
俺はジョルトの言葉に頷いた。
「仮に前者だったとしても、今は後者になってるだろうな。これほどの事実をメガトロンに伝えないはずがない」
……それに、ディセップもヒューマンモードを取り入れているようだ。進化しているのは俺達だけではないってことさ。
人の姿で水無月咲涼に近付けるのは厄介なことこの上ない。俺達ならば人間とヒューマンモードの違いなどすぐに分かるが、アイツには……。
「なら余計に仲間を呼ぶべきだ!」
「……あぁ、そうか。ジョルトの言うことも一理あるな。だってさ、咲涼を家に帰したって、誰かは護衛で張り付いてなきゃなんねぇ。NEST隊員はどうせ市街地で発砲はできねぇし、俺らが担当すべきだろ?」
サイドスワイプの言う通り。
この国は民間人の銃所持が許可されておらず、警察など銃を使う資格がある者すら滅多に引き金を引かない。
相手が凶悪犯であっても拳銃で殺すことに賛否を問われるからだ。
そして、秘密裏に日本へやって来た俺達にもそれが該当した。もちろん緊急時の銃器使用は了承させたが、基本的には制限されている。
護衛という役割上、武器を持ち歩けないNEST隊員は頼りにならないだろう。
これが日本という国だとしても……アメリカとの勝手の違いはあまりに煩わしい。
「護衛は俺がやる」
一番強いのは俺だ。多対一になってもぶちのめす自信がある。サイドスワイプはもちろん優秀だがまだまだ若造だし、ジョルトは医者だからな……。
応援を呼ぶかはアメリカの状況を確認してからにしよう。もう少し手が欲しいのは確かだ。呼ぶにしても誰を寄越してもらうかは重要だしな。
「分かった、アンタが護衛をやるのは異論ないよ。応援のことも。だけどどこで待機するんだ? ビークルモードにしろヒューマンモードにしろ、あの周辺でうろつくのは怪しすぎるだろ」
「ストーカーってやつか?」
「はははっ! それでコップス呼ばれたら笑ってる場合じゃねぇな!」
サイドスワイプは背もたれに全身を預け、ふぅと一息ついた。
守るだけならここに居るのが安全だ。だがそれでは奴らを誘い出すことはできない。
「どうすれば……」
ブレインサーキットをぐるぐる回す。大した案は出ず、次第に熱を持つような感覚になってきた。これも後回しにしてもいいか……?
そのとき、部屋の扉から軽いノック音が聞こえた。誰だ?
「What?」
俺の言葉の後、やや控えめに扉が開かれる。わずかに顔を覗かせたのは話題にもなっていた水無月咲涼だった。
「なんだ、お前か」
「私です! みんなずっと部屋にこもってるけど、大丈夫……?」
彼女が現れたことで、部屋の空気ががらりと変わった。張り詰めていた糸が緩んだかのように。
水無月咲涼は険しい顔の俺達を見て眉を下げた。
「疲れてますか……?」
「問題ない。そこに立ってないで座ったらどうだ」
手近な椅子を指して言えば、彼女はぱっと笑顔になって椅子に座った。
ふと視線を感じてそちらを見ると、サイドスワイプがやたらニヤニヤして俺を見ていた。
「アイアンハイド、変わったよな」
「あ?」
何が言いたい?
「サムとレノックス以外の人間には厳しいのに、咲涼には甘くなってきた」
「えっ! そうなの?」
サイドスワイプの言葉を聞いた水無月咲涼は、にこにことこちらを見た。ずいぶん嬉しそうな顔をするな。なんと言うか……こういうのを、可愛いと…………俺は今、何を?
自分で考えたことが信じられず、一瞬フリーズする。しかしすぐに満面の笑みを浮かべる水無月咲涼に怒鳴った。
「図に乗るなよッ!!」
「ひぃ! サイドスワイプのせいで怒られた!」