デフォルトは「水無月咲涼(ミナヅキ キスズ)」となります。
最も偉大な発明家は誰か?
What's your name?
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18.黒いトランスフォーマーって……。
「あの……アイアンハイドさん、忙しかったら大丈夫です。私、医務室で大人しくするので……」
「俺がやると言ったらやるんだ、お前が気にすることじゃない」
頭をぐしゃぐしゃっと撫でられて「ひゃー!」とわざとらしい悲鳴をあげた。むしろわざとだった。
なんか、子供扱いされた? アイアンハイドさんから見れば私はガキかもしれないけど、とっくに成人してるんですからね。
「俺は構わないが、お前はまだ歩けるのか」
「平気です! ゆっくり歩いてるのでつらくないです」
「それならいいが無理するなよ」
優しい、と思ったのも束の間、すぐに「悪化させてジョルトにとやかく言われるのは御免だからな」と吐き捨てた。あぁ、まぁ、そうですよね……。
その後、案内されたのは立ち入り禁止の場所だった。武器などが置いてある危険な部屋がいくつかあり、そこは近付かないように、とのこと。
普段は鍵をかけてあるから入れないだろうとは言っていたけど、鍵のかけ忘れは意外と少なくない。私は武器なんて興味ないし、むしろ怖くて触りたくもないから、武器庫周辺に近付かないに越したことはない。
医務室へ戻る道すがら、アイアンハイドさんは簡単にここでの過ごし方を説明してくれた。
基本は医務室に居ることになるだろう。建物の中はもちろん、敷地内なら外を歩いても構わない。
食事は運ばせるから医務室で待つこと。外出はできないと思え……うん、それは怪我の療養だから仕方ないかな。
「ここでの暮らしは不自由になるだろうが、怪我が治るまでの間だ。何かあれば連絡を寄越せ。すぐに対応する。サイドスワイプかジョルトに言ってもいい」
「はい、分かりました」
「何か質問は?」
質問……。
「黒いトランスフォーマーの方はどこに居らっしゃるんですか?」
「何故そんなことを聞く?」
「うーん、ただ、姿を全然見かけないのでおかしいな、と思って……」
ここに居るはずだから、お礼くらい言いたいんだけど。
「……お前には関係ないのないことだ」
そうやってはぐらかす。アイアンハイドさんはすぐにお前には関係ない! って言うよね。都合が悪いのか、ただ単に面倒なのか。とにかく説明できないってことだ。気になる。
「助けてもらったお礼を直接したいんです」
「そのうち時間を作ってやる」
……なーんか変なんだよなぁ。
アイアンハイドさんって、髪は黒いのに目はすっごく青いよね。不自然なくらい青くて綺麗。
普通、黒髪だったら目の色も濃いはずでしょ? そりゃあ黒髪の青眼が全く有り得ない、とは言わないけど……ものすごく珍しいはず。
この青い目は……サイドスワイプやジョルトとそっくりなんだ。怖いくらいに。
それから右目の傷。どこかで似たようなのを見たことがあると思ったら、黒いトランスフォーマーさんも右目に傷があったはず。
もしかして、だけど。
「アイアンハイドさんって、あの黒いトランスフォーマーでしょ?」
「……な……何故だ?」
動揺してる。分かりやすい。
理由は色々ある。違和感とか、ジョルト達の発言とか……あと、サイドスワイプの師匠が人間ってどういうこと? とか。
でも、何より。
「……助けてきてくれたとき、NESTの隊員さんが、黒いトランスフォーマーをアイアンハイドって呼んでた」
流暢な英語とはいえ、何となく聞き取れたんだ。おかしいとは思ったんだけど。
サイドスワイプが「黒いトランスフォーマーのヒューマンモードは新鮮味がないだろう」って言ってたのも、アイアンハイドさんだからじゃないかな。姿はこうして見ていたんだから。
どう!? 刑事ドラマで鍛えた推理力は!
「……よく分かったな。馬鹿じゃないらしい」
驚いたように言うアイアンハイドさん。
やったー! 合ってたらしい! 黒いトランスフォーマーとアイアンハイドさんは、同じ人物だったんだ!
私、意外と他人のこと見てるでしょ! 人間観察は嫌いじゃないんですよ。
「それならそうと何で言ってくれなかったんですか?」
「さぁな……俺にも分からん」
「えー、なんですかそれ」
変なの。自分のことなのに。何はともあれ、私の恩人の正体は判明した。
「アイアンハイドさん。改めて、助けてくれてありがとうございました」
「やめろ。これも仕事だ」
でも、助けてくれたのは事実だから。
「今度、トランスフォーマーの姿を見せてもらえませんか?」
「まぁ構わねぇが……怖くないのか」
大きいから、怖いと言えば怖い。簡単に踏み潰されそうだし、トランスフォーマーは武器を沢山持ってるし。でも。
「恩人だから怖くないです。それに、トランスフォーマーのアイアンハイドさんはすごくかっこよかったですよ」
「そうか」
なんか……本人にこういうこと言うの恥ずかしいな。人間じゃないと思うと軽はずみに行動できちゃうけど、人外とは言え犬や猫とは全然違うし、人間とそんなに変わらないもんね……。
アイアンハイドさんは表情をあまり変えずにこちらをじっと見つめる。そして一言。
「俺を懐柔できると思うなよ」
「えっ。か、懐柔!? そんなつもりは……」
失礼しちゃう。私がそんな悪い女に見えますか!? アイアンハイドさんこそ私を都合よく扱えると思わないでくださいね!
……まぁ、別に使い道はないでしょうけど……。