デフォルトは「水無月咲涼(ミナヅキ キスズ)」となります。
ひどい病気には思い切った処置を。
What's your name?
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
39.独占欲も愛の証。
「オプティマスさん、大丈夫ですか?」
「あぁ……大丈夫だ」
本当かなぁ。ずっとこうして抱き締められてる。あったかくて心地いい、けど……やっぱり苦しいかも。
「……オプティマスさんは、したくないんですか?」
「そんなはずないだろう! 私はいつでも君に触れたいと思ってる。唇を重ね、こんな邪魔な布など引き剥がしたいといつも……」
私の服を軽く引っ張って呟くオプティマスさん。まずい、口が滑った、なんて顔をしてこちらを見る。
「違う、そうではなく、私は、その……!」
「……違うんですか?」
「ち、違う、っ! いや、違うわけでは……だが……」
「はははっ! ごめんなさい、冗談です」
これじゃあ、さっきと立場が逆だ。
「私は、オプティマスさんだから……初めてでも怖くないですよ」
「咲涼……」
「ちょっと、えっ? オプティマスさん、ちょっと、……」
ぐっ、と眉間にしわを寄せ、眉尻がわずかに下がり、何かを堪えるように噛み締めている。苦しげな表情は、何だか、こう……もしかして。
「泣いてるんですか……?」
「いや……」
うそだ。確かに涙は流れていないけど、その顔は泣いてるよ。私は貴方が本来の姿だったとしても、表情の変化をかなり読み取れるつもり。人間の姿となって分かりやすくなった今、それが不可能になるはずもない。
「咲涼が、そんなことを考えていたなんて……思いもよらなくて……私は、咲涼に、愛されているのだと……」
「オプティマスさん……」
やだな。そんな泣くことないじゃない。貴方が望むのならもっともっと好きだと告げるし、キスもしたいし……もっと一緒に居たい。
「私たち、ちょっと話し合いが必要だったのかも」
「そう、だな。だが今はもう……気にすることはない」
「うん……」
オプティマスさんは私よりも長い時間を生きてるから、たくさんの経験をしているんだろうと思ってた。心を読むことはできなくても、私のことなんて手に取るように分かっちゃうんだろうな、って漠然と思ってた。
でも、全然違った。だってオプティマスさんも私も、それぞれひとつの生き物だから、伝え合わないと理解し合えないんだ。すごく当たり前のことなのに、分かってなかった。
私はオプティマスさんの端正な顔立ちを眺めて、心做しか赤くなった目元を撫でた。私の前では、そういう、弱い部分も見せてほしいな。
「オプティマスさん、他に言いたいこととかありませんか? この際だから全部言っちゃった方がいいですよ!」
「ふむ、それなら……」
オプティマスさんは顔を撫でる私の手を掴んだ。それを自分の口元へ持っていき、ちゅ、と軽く口付ける。見上げるようにこちらを見る視線が鋭くて、すごくドキドキしちゃう。
「敬語も敬称もやめてくれ」
「え……」
そんなこと? それくらいなら、わざわざ頼まれなくてもきっとできる。
「分かりました! ……あっ」
「ん……?」
「大丈夫、分かってます、オプティマスさん、できます! ……えーと、あの……」
どうしよう。今までずっとこうやって話していたから、いざ敬語をやめようとするとできない。さん付けだって慣れてしまってるし。
オプティマス、オプティマス、オプティマス……口の中でもごもご言う分には問題ない。よし、いける!
「オプティマスさん!」
「……」
「……」
どう、しようね。
「私は君の恋人だ。それなのによそよそしく呼ばれなければならないのか?」
「ごめんなさい、つい……」
「サイドスワイプもジャズも、あんなに距離が近いのに?」
居た堪れない。厳しい視線から逃げるように床を見つめた。
確かにそうです。ごもっともです。あのふたりはかなり前から呼び捨てのタメ口……。でもあれって、友達だからこそできるっていうのもありませんか? ねっ?
弁明しようと顔を戻すと、やっぱり鋭く強い視線がこちらを向けられていた。……どうしよう……。
「以前は悪戯に呼び捨てをすることもあったというのに……」
そんなこともあったかもしれない。あのときは調子に乗っていた。
「咲涼が私の名前を呼んでくれるならそれだけで嬉しい。だが、他の男が私よりも距離が近いのは……許せないな」
「ごめんなさい……でも、私、一番好きなのはオプティマスさんですよ!」
「もちろんだ。そうでなければ私の気が狂ってしまう」
やだ……やっぱり束縛っぽいかも……。
うーん、でもオプティマスさんは人間ではないし、世間と同じである必要は全くないよね? 私とオプティマスさんは、私達のやり方があるんだし。
世の中の普通がどんなものか分からないけど、オプティマスさんが私のそばに居てくれるなら何だっていい。最期に思い浮かべる顔は、彼の笑顔がいい。
「私の恋人は独占欲が強くてしょうがないんだから。ねっ、オプティマスさん?」
「ふふ、あぁ……私は仕方の無い男だ」