デフォルトは「水無月咲涼(ミナヅキ キスズ)」となります。
ひどい病気には思い切った処置を。
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6.お仕事しましょ!
『──さて、今日から仕事に就いてもらうが、咲涼は英語が話せないな? そこで、通訳を当てることにした。彼だ』
『どーも』
シルバーのコルベットがするすると変形した。サイドスワイプさん、と言っただろうか。
「すみません、ご迷惑おかけして……」
『いや、気にすることはねぇぜ。今はもう敵だって多くねぇし、ディセップの連中だって加わって、そんな忙しくないんだ』
それに、仲良くなりたいしな! と言った彼は、今度は人間の姿になった。綺麗な銀髪を揺らし、にこりと微笑む。
『本当は私が、と思ったんだが……』
「アンタは仕事が待ってるだろ、オプティマス」
『あぁ……』
オプティマスさんに別れを告げ、仕事場に向かった。緊張する。仕事って具体的になんだろう、私は車の整備くらいしか出来ないが。
もしも何かの機械をいじることになったら大変だ。手先は器用だろうと自分で思っているが、ここはやばい機械がたくさんありそうだし!
「オプティマスさん……司令官って、やっぱりお忙しいんですよね」
「まぁ、そうだな。俺たちよりはよっぽど……ジャズだとかメガトロンだとかがかなり請け負ってるから、あれでも減ってる方なんだが」
「メガトロン?」
「あぁ、ディセプティコンのリーダーだった奴さ」
オプティマスさんが言っていたひとだ。リーダー格というなら、プライドもガチガチなのだろうと思っていたけれど、案外そんなことはないのかもしれない。
こうやって話を聞いているととても会いたくなる。会ってどうするというわけでもないけれど……どんな車に変形するのかな、なんて思ったり。
「メガトロンは意外と話が分かる奴なんだけどな、スタースクリームって野郎はなかなか面倒なんだ」
聞くに、そのスタースクリームさんはよくゴマをするひとだそうで、相手によって態度が違ったり、裏で何を言っているか分からないような人物らしい。そういう人って知り合いに三人くらいは居るよね。とても信用できない。
スタースクリームさんはメガトロンさんの部下にあたるわけだが、ご機嫌とりに時間を費やしているそうで。他のひとたちがメガトロンさんの性格などを気にしないのなら、スタースクリームさんしかメガトロンさんを鎮めることは出来ないかもしれないが、なかなか大変そうだ。
私だって少なからず裏表が違う面はあるが、あからさまな人は苦手だ。スタースクリームさんとはやっていけない気がする。
「話は変わるが、敬語じゃなくてもいいんだぜ。さん付けも。そういう堅いのは苦手だ」
「え……ええと、あの……じゃあ……そうする! サイドスワイプ!」
「Very good! 他にタメ口の奴は?」
「いない」
「俺だけ特別って感じだな!」
そうやって話していたら仕事場に着いた。扉の先には作業員がたくさん。サイドスワイプにむかって何か言っているようだ。やがて、当然だが私にも目を向けられる。
「Is she new member?」
「Yes.」
「あ……な、ナイストゥーミーチュー」
「Nice to meet you too.」
握手を交わした。とても優しそうな人だ。仕事柄、周りは男性ばかりだけど、何とかなる……はず。
「早速だが仕事にかかるそうだ」
「私は何をしたら?」
「まずは……」
「咲涼、昼休憩だぞ」
工具を取り上げられ、私はやむなく作業を止めた。隣にはサイドスワイプ。むっとして彼を見ると、彼は大声で笑い始めた。
「ふっ……ははは! 咲涼! お前、鏡見た方がいいぜ!」
「鏡? 今は持ってないよ」
仕方ねぇな! と言い、車に変形したサイドスワイプ。窓を鏡代わりに覗き込むと、まるで砂場で遊んだ小学生のように顔が汚れていた。これは酷い! こんな顔じゃ食堂にだって行けやしないよ。
『その顔はねぇよな』
「ほんとだよ、女子力の欠片もない」
マジで、これは由々しき事態ではあるのだが、いかんせん汚れるのが当たり前に近い仕事だし、今まで一人で作業して、気にすることもなかったし、身だしなみに頓着がなさすぎる。
これでも今日は気をつけた方だ。初めての場所で、万が一にもミスをしたら、と思うと恐ろしくて。しかし、私が任されたのは車の整備。彼らにとって当然であるアメ車は、私にとって珍しいものなのだ。それを整備できるなんてテンションあげぽよなんてもんじゃない。大体あげぽよって何なんだ。
理解出来ない英語はただのBGMとなり、私の頭を過ぎていく。この環境は目の前の作業に夢中になれた。だからこそこんなにも乱れているわけだが。
「だいぶ綺麗になったかな」
『あー……まぁ許容範囲?』
「"まぁ"?」
『嘘だって! 驚くほど美人さ』
「よく言うわ」
軽くボンネットにデコピンをかまして、私は食堂へ歩いた。指がいたい。