デフォルトは「水無月咲涼(ミナヅキ キスズ)」となります。
真の恋の道は、茨の道である。
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8.忘れちゃいけないお使い。
「……まぁいいや。もう食べ終わるから行こ」
「あ? どこにだよ」
「お・つ・か・い!」
モモタロスはいかにも“忘れてました”みたいな顔をしながら「おー、おう、覚えてるぜ、ジョークだよジョーク!」なんて言った。下手な誤魔化し方するくらいなら素直に認めなよ……。
「メモはちゃんとあるよね?」
「おう」
自慢げにメモを突きつけてくるモモタロス。
なんか子供みたいなんだよね、モモタロスって。それが可愛く見えちゃうっていうか。良太郎くんの顔だからそう見えるのかな。
「じゃあ行こう!」
モモタロスを連れて商店街へ向かう。普段歩かない場所を歩くのは新鮮で面白い。モモタロスもこうやって自分で散策することは少ないらしく、ちょっとだけ楽しそうに見えた。
「そう言えば良太郎くんは何か言ってる? 体を勝手に使っちゃってるし、怒ってない?」
「…………買い出しが終わるまでは責任持てってよ」
確かにその通り。お使いに行くって言い出したのはモモタロスだもの。ソフトクリームも食べたんだし頑張らないとね!
慣れない道を歩いて二十分。ようやく辿り着いた商店街で目当ての店を探した。良太郎くんの案内もあって商店街の中は歩きやすいけど、人が多くて少し大変。
「わ……うわっ」
ずんずん進むモモタロス。肩で風を切るように歩く彼は、近寄りがたい雰囲気も相まって通行人の方が避けてくれる。でも私は特別背が高いわけでもないし、モモタロスのような威圧感もないだろうし、人の間を縫って歩くしかない。
そうこうしているうちにモモタロスとの距離がどんどん離れてしまって、次第に彼の姿が見えにくくなっていく。
「も、モモッ」
名前を呼びながら追いかけるけど……歩くの早すぎ! ぜんっぜん追いつかない。目的地は同じなんだし、無理して一緒に歩く必要もないかも……。
「モモッ!」
諦める前に、最後にもう一度だけ名前を呼んだ。そうしたら強い力で手首を掴まれ、ぐっと引き寄せられる。
「……ったく、はぐれんなよ」
目の前にはモモタロスが居た。面倒だなって言いたげな顔をしているけど、それを口にはしないのが彼の優しいところ。
「ごめん……ありがとう」
「い、いいから行くぞっ」
モモタロスは私の手首を掴んだまま歩き出した。さっきよりも彼の歩みはゆっくりで、歩幅も小さい……ような気がする。
「モモ、手……!」
「あ? ……離したらまたはぐれんぞ」
「それはそうかも……」
ぱっと見、連れというより誘拐にも見えそうだけど、モモタロスの言うことは正しい。そう思って手はそのままでもいいことにした。
前を行くモモタロスはわずかに振り返り、機嫌が悪そうな顔を見せた。
「つーか“モモ”ってなんだよ。ハナクソ女みてぇに呼びやがって」
「こんな人混みで“モモタロス”って呼ぶのも変でしょ」
“モモ”だけなら本当にあだ名っぽくて呼びやすい。ちょっと女の子の名前みたいに聞こえるけど、それは仕方ないでしょう。
「それもそうだけどよ」
「いや?」
「嫌だね」
「いやなんだ……」
モモタロスって本当に裏表がなくて話しやすい。バカって言われちゃうのも分かる気がする。バカがつくほど正直で、直情的なんだよね。……いや、もしかして単純に頭が悪いってこともある?
「嫌だとしても我慢して。変な目で見られるのも困るでしょ?」
「チッ」
舌打ち!
……そうこうしてるうちに目的のお店に着いた。
メモの内容は牛乳、そうめん、そば、レタス、キャベツ、卵、他にも食料品がたくさん。それから箱ティッシュに包帯、絆創膏……嘘でしょ、トイレットペーパーも? そんなに持てないって!
「……モモ。頑張ろうね」
「何だいきなり」
怪訝な顔をするモモタロスに返事はしなかった。代わりに買い物カゴとカートを用意する。モモタロスがカートを押してくれるというのでメモを受け取って、私が商品を選別することになった。……モモタロスにカートを任せても大丈夫かな。ちょっとだけ不安だな。
良太郎くんの助けを借りながら、目当ての品を次々に放り込んでいく。気付いたらカゴはいっぱい。商品が山になりつつある。
「これマジで二人じゃ持って帰れないんじゃないの……」
多すぎる。箱ティッシュとトイレットペーパーもあるんだよ。愛理さん、良太郎くんにいつもこの量の買い物を頼んでるの? それで良太郎くんはちゃんと持って帰れるの? すごいな……。
「俺の力をナメんなよ。全部持ってやらぁ」
モモタロスは言った。何でもないことのように、当然のように。そこまで言うなら頑張ってもらうんだから。
「頼りにしてるからね!」
「おうよ!」
