デフォルトは「水無月咲涼(ミナヅキ キスズ)」となります。
真の恋の道は、茨の道である。
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7.意外な一面。
仕事中に外へ抜け出すことに成功したモモタロス。私はそんな彼と一緒に近くの商店街へ行くことにした。良太郎くんがいつも買い物しているというお店がそこにあったような気がする。
何より、懸念していることが一つあるから。
「モモタロス、ちゃんと買い物できるの?」
「…………」
……返事が無いってことは、まぁ、そういうことなんだろう。
モモタロスがアイス食べたさにお使いを申し出たのはいい。無事に外へ出られたのもいい。
でもそのメモの通りに買って帰れるか? というのが大きな問題である。結果は何となく想像できていたけれど。
「大丈夫、私もついてくから。良太郎くんは今どうしてるの? 起きてる?」
「良太郎? あぁ、起きてる」
じゃあ安心。モモタロス達は心の中で会話ができるらしいから、困ったら良太郎くんに聞けば何とかなる。
ほら、食品に限ったことではないけど、決まったメーカーの決まった商品を使ってたりするじゃない? たまに違うものを使うと、使い心地が変わってイマイチだったりするからね。
……そうだ。せっかく一緒に出てきたなら、一緒に食べに行けばいいんだ。とっておきのお店があるし!
「……ねぇ、先にアイス食べに行こうよ。美味しいソフトクリームを食べれる所があるの。どう?」
「俺は食えりゃ何でもいい」
どこで食っても大体一緒だろ、と言うモモタロス。食べたい気持ちがあるだけで、特別こだわりは無いみたい。めちゃくちゃ美味しいの食べさせてやる。
「──どう? 美味しい?」
「美味いッ!」
「良かった〜!」
公園に置かれた木陰のベンチ。私達はそこに並んで座って、濃厚なミルクを感じるソフトクリームを食べていた。
この公園の近くにあるちょっとお高いケーキ屋さんは、それなりに有名なお店。夏季限定でソフトクリームを出していて、それがまたすっごく美味しい! ケーキは頑張ったご褒美でしか買えないけれど、ソフトクリームは夏場しか食べられないからって頻繁に食べてしまう。
モモタロスの口にも合ったようで、ニコニコしながら休むことなく食べ進めている。顔は良太郎くんなのにちゃんと別人に見えるんだから不思議だよなぁ。
「つーか良いのかよ。俺の分まで金出させちまって……」
「うん。良太郎くんのお金で食べさせるわけにもいかないでしょ。プレゼントだと思ってよ」
ハナちゃんが言ってた。勝手に高い服を買って良太郎くんが怒ったって。原因はそれだけじゃないとも言っていたっけ。何をしたら良太郎くんを怒らせるんだろう。逆に難しそう。
「っていうか、モモタロスもそういうの気にするんだね」
「はぁ? そういうのって何だよ」
「人にお金を出してもらったとか、そういうの」
奢ってくれるんなら遠慮なく奢ってもらう、ってスタンスなのかと思ってた。少なからず申し訳ないって気持ちもあるんだなぁって、失礼なこと考えちゃった。
私の言葉に、モモタロスは口をへの字に曲げた。明らかに機嫌を損ねている。すぐにその口から怒号が出てくるだろう。
「俺だって多少の常識はあんだよッ!」
「ごめんって! ほら、アイス溶けちゃうから食べたら?」
私が指摘すると、モモタロスは慌ててコーンをかじった。満足そうに笑ったと思えばパクパク食べて、あっという間に完食した。私はまだ半分も残ってるのに。
食べ終わってひと息ついたモモタロスはぐ〜っと背伸びをした。腹ごなしなのか、立ち上がって柔軟や屈伸をして、またベンチにどかっと座った。モモタロスには、見ていて飽きない面白さがある。
彼は元気に遊ぶ子供を見て暇そうにしていたけど、やがてこちらに顔を向けた。ベンチに座ったまま立膝をして、その膝に頬杖をついて、真っ直ぐに。
「人に『溶けるぞ』とか言っといて、自分の方が遅ぇじゃねぇか」
「うるさいよ」
モモタロスは私が食べる様子を手持ち無沙汰に見ている。何も面白いことなんて無いだろうに、ずーっと。ちょっと視線が痛いかも。
「……お前、何で俺にそんな話しかけてくるんだ?」
「え」
いきなりの質問。私は返答に困って、誤魔化すためにソフトクリームを食べた。もうかなり溶けてしまっているから本当に早く食べないと。
……何でって聞かれても特に理由があるわけじゃない。モモタロスみたいな不思議な存在、誰だって気になるものじゃない? 気になるから話しかける。簡単なこと。
それに口調は違えど姿は慣れ親しんだ良太郎くんだから、話しかけやすいんだよね。モモタロスの本当の姿だったらこんなに関わっていたか……分からない。
「でもまぁ、モモタロスのことが好きなのは間違いないね」
「は!?」
「嫌いだったり、興味無かったら話しかけないから」
「……あー、そーかよ」
口をむっと閉じてそっぽを向いてしまったモモタロス。なに? がっかりした? はは、そんなわけないか。
「モモタロスは元彼とはタイプ違うし」
「お前、恋人居たことあんのかよ」
この歳で無いことも無いでしょ! 学生の頃も彼氏は居たし、社会人になってからだってお付き合いした人は居た。
「フラれたけど……他に好きな子ができたとか何とか言ってさ……」
「そいつらセンスねぇな。咲涼はわりとイイ女だと思うぜ」
「えっ! そ、そお?」
モモタロスにそんなこと言われると思ってなかった。だって恋愛とかに興味なさそうだもの。話を聞く限り、戦うことが大好きな暴れん坊ってイメージがある。
……っていうか“わりと”って何!?
