デフォルトは「水無月咲涼(ミナヅキ キスズ)」となります。
真の恋の道は、茨の道である。
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6.いざ行かん、アイスのため!
その日から、ハナちゃんと連絡を取り合うようになった。都合良くミルクディッパーで会えるわけでもないし、メールや電話の方が楽だったから。
ハナちゃんは最初に言っていた通り、電話に出ることは少なかった。私も仕事があると電話は難しいし、お互いメールを送ることの方が多い。
良太郎くんとは相変わらずほどほどの関係だったけど、以前よりはよく話すようになった。モモタロスのこともあるし。
そうそう、モモタロスと言えば、ハナちゃんと良太郎くんはモモタロス達のことを大まかに教えてくれた。
彼らは何者か? その答えはイマジンと呼称される、未来人。モモタロス達もイマジンだし、ニュースでよく見る怪人もイマジン。
……ってことは、遠い先の未来はみんな怪人になっちゃうの? って思ったんだけど、イマジンは精神だけでタイムスリップしてきたから、私達みたいな体は無いんだって。
怪人になっちゃうのは、現代人の想像とか記憶のせい。例えばモモタロスは、良太郎くんがイメージしていた“桃太郎に出てくる鬼”を具現化したような姿をしているらしい。
そもそも未来は、タイムスリップできるくらい技術が発達しているんだね。いいなぁ。
イマジンの目的は過去を改竄すること。大多数はそのためにタイムスリップしてきたし、そのために街をめちゃくちゃにしてる。
モモタロス達四人のイマジンが良太郎くんに憑いているのは、過去を変えるためじゃなく、むしろその逆。悪いイマジンと戦うためなんだって。
つまりみんなは正義のヒーロー。嘘みたいだけど信じるよ。
私はまだモモタロスとしかまともに話せていないけれど、正義の味方をしているんだから他の三人もきっと良い人なんだろう。
名前はハナちゃん達が教えてくれた。
まずウラタロス。モモタロスが“カメ”と呼んでいた人。つまり、何とも言えない色気を出していた優男だ。良太郎くんの体を使って女の子と遊びに出掛けることが多くて厄介だって、ハナちゃんがすっごく怒ってた。
確かに……女の子の扱いは上手そうだもんなぁ。
次にキンタロス。モモタロスは“クマ”と呼んでいる。関西弁で、誰よりも力が強いんだとか。“泣く”という言葉を聞くとすぐに良太郎くんの体を乗っ取ってしまうから、彼らの中では禁句になっているらしい。私も気を付けるようにと釘を差された。
最後にリュウタロス。モモタロスは最初“リュウタ”って教えてくれたけど、実際はいつも“小僧”って呼んでるみたい。可愛い男の子って感じらしいけど……私は好かれていないのか、まだ表に出てきてくれたことは無い。
愛理さんのことが大好きで、愛理さんに近付く男に敵対心を剥き出しにしているんだって。イマジンまで魅了する愛理さん、すごい。
良太郎くんの体を乗っ取っていないときの彼らは、デンライナーという列車に乗っている。それは時の砂漠っていう特殊な空間を走ってて、ライダーパスやライダーチケットを持っていないと乗ることはできない。
モモタロス達は訳あってデンライナーの中でしか姿を現すことができないから、現実世界では良太郎くんの体を使っているそうだ。
ということは……私はパスもチケットも持ってないから、モモタロス達には会えないってこと……?
ちょっと……いや、かなりショック。どんな姿をしているのか気になるのに!
……とにかく、そうやって色々なことを聞かせてもらった。改めて考えると、どれもこれも夢物語みたい。
どうして良太郎くんがモモタロス達と一緒に戦うことになったのか、そこまでは追求しなかった。そんなに踏み込んでいいのか分からなかったし、部外者にしては十分すぎるほど教えてもらえたし。
理由はどうあれ、良太郎くんが日々イマジンと戦っているなんて……想像するのも難しい。そんな力があるようには見えないもの。私でも打ち負かせそうなのに、怪人と相対するなんてできるのかな。
──ミルクディッパーは今日も男性ばかり。ここはライブラリでありカフェであるはずなのに、騒がしくて溜め息が出るのはいつものこと。
愛理さんも良太郎くんも騒がしさに怒ることはない。どう思ってるのかは知らないけど。
ぼんやりしながら店内を眺めていると、手が空いたのか良太郎くんがこちらに近付いてきた。でも顔付きは良太郎くんじゃない。
「おう、咲涼。コーヒーは美味ぇか」
ほらね。
「美味しいよ! いつも通り!」
「ま、当たり前だな。ねーちゃんはコーヒー淹れるのが上手いからよ」
“ねーちゃん”って呼んでるんだ、なんて思いながら、私は彼の言葉に頷いた。
モモタロスは私の隣に腰を下ろしてお行儀悪く足を組んだ。……怪しまれるよ、と突っ込むのはもうやめた。
「モモタロスはコーヒーとか好きなの?」
「まぁな。デンライナーでも毎日飲んでるぜ」
「へ〜、そうなんだ。意外かも。他に好きなものってある?」
「プリンだな、プリン」
「プリン美味しいよね〜」
分かる分かる、と頷いてコーヒーを一口。
一時期、毎週のように自作するくらいにはプリンにハマってたことがあった。最近は全然作ってないけど、たまにいいかもなぁ。
「お前は好きなもんとかねぇのか?」
「う〜ん、なんだろ」
好きなもの……色々ある。ここのコーヒーも好きだし、甘さ控えめのケーキとかも好き。ちょっと前は辛いものにハマってた。お腹が痛くなるから無闇に食べるのはやめたけど。
色んなものが好きだから、一番を決めることは難しい。でも最近はちょっと暑いからね。強いて言うなら。
「ソフトクリームとか好きかも。食べたことある?」
「馬鹿にしてんのか! あるに決まって……いや、そう言や無ぇかもな」
「えー、ないの? この時期のアイスって最高だよ」
「確かに最近はアイスコーヒーが美味ぇ」
「夏は冷たいものだよね」
アイスの話をしたらアイスが食べたくなってきた。コーヒーももう飲み終わってしまうし、帰る道すがら買いに行こうか。
うん、そうしよう! 食べたいときに食べるのが一番!
本当はモモタロスにも食べてほしいけど……良太郎くんは仕事中だから連れ出すわけにもいかない。
「私、そろそろ帰るね」
「あ? もう行くのかよ」
「うん。アイス買って帰るの」
そこのスーパーで買って、食べながら帰るのもいいかも。自転車の片手運転は怒られるだろうけど……。
「お前、自分だけアイス食うつもりか!?」
「だってそっちは仕事中でしょ?」
モモタロスは「ぐぬぬ……」と唸り声をあげて、愛理さんの元へ向かった。
「……姉さん! なんか買い物するもん無ぇか!?」
なるべく良太郎くんのように話そうと心がけているのかもしれないけど、絶対バレるよ、それ。
店内に居合わせた三浦さんも明らかに疑いの目を向けている。というか「悪霊め……!」とか何とか呟いているから、疑ってるなんてレベルではない。
愛理さんは不思議そうにはしているけれど、さほど気にした様子もなく返事をした。
「じゃあ、お使いに行ってきてくれる?」
「おう! 任せろ!」
買い物メモを渡されたモモタロスは満足そうにこちらを見た。
……意外と頭使うじゃん。
「行くぞ!」
「そんなにアイス食べたい?」
「うっせ!」
