デフォルトは「水無月咲涼(ミナヅキ キスズ)」となります。
真の恋の道は、茨の道である。
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4.荒唐無稽、でも。
「ただいま……」
「おかえり、良ちゃん」
げっそりした顔で扉を開けたのは噂の良太郎くん。その手にはビニール袋が下がっていて、確かに買い物に出かけたんだと分かる。
顔はやつれているけど怪我は無さそう。
「ハナさん、咲涼さん、来てたんだね」
良太郎くんが袋を愛理さんに渡してこちらにやってくる。良く言えば穏やか、悪く言えばか弱いその声はいつもの良太郎くん。
「今日はワイルドじゃないんだね?」
「え。……す、すみません、ワイルドってことは、その……迷惑かけちゃいましたか……?」
慌てた様子を見せ、子犬のように弱々しくこちらを見つめる。そんな顔されるとこっちが申し訳なくなっちゃう!
「ううん、迷惑なんて何も! 気にしないで」
まぁ色々おかしなことは起きてたけど、考えてみれば良太郎くんの運の悪さが一番おかしくて不思議だからね。他のことはちょっと驚くくらいで気にするほどじゃないかも。
「いつもの良太郎が一番だよ。当たり前だけどね」
「え、私、あのワイルドな良太郎くんのこと結構嫌いじゃないよ」
「え! 咲涼さん本気!? あんなバカのどこがいいの!?」
ハナさんは心の底から信じられないって顔で首を振った。私を妖怪か化け物でも見るみたいな目で見てる。
バカって、良太郎くんは良太郎くんじゃない。
「どこって聞かれると難しいけど……なんだろね、普通にかっこいいと思うよ? 口は悪いけど」
「有り得ない。ちょっと……趣味悪いかも」
「そんなに!?」
なるほど、ハナさんは良太郎くんと仲が悪いわけじゃなくて、ワイルドな良太郎くんが嫌いなんだ。
「何が趣味悪いだハナクソ女!」
「あ、ワイルド良太郎くん」
私の言葉に良太郎くんはこちらを見て満足そうに口角を上げる。
「おう、俺だぜ。お前、やっぱ分かってんな。俺の魅力に気付くなんてよ」
「ちょっと……!」
わしゃわしゃと私の頭を撫でる。髪がぐっちゃぐちゃになってしまって抗議しようかと思ったけど、見上げた良太郎くんがずいぶん嬉しそうに見えたから……やめた。髪の毛は整えればいいし。
「バカモモ! 手離しなさいよ!」
「いいよいいよ、ちょっと力強いけど大丈夫! ところでそのモモって何?」
ハナさんはこの野性味溢れる良太郎くんを“バカモモ”って呼ぶ。でも良太郎くんに桃っぽい要素はない。名前とか、見た目とか。見た目の桃要素って何だ?
二人は顔を見合わせて言葉を詰まらせた。私、何か変なこと聞いた?
「そのー、あだ名? 愛称? なんです!」
「おーそうだぜ! モモタロスの“モモ”だ!」
「アンタは余計なこと言わなくていい!」
モモタロス? モモタロスってあだ名? 良太郎くんに? 変わってるなぁ。どういう経緯でそんなあだ名がついたんだろう。
「それは……今の良太郎くんだけ? 普段の良太郎くんとか、昨日の色気のある良太郎くんは違うの?」
良太郎くんは「はぁ!?」と苛立ったような声をあげて私に詰め寄った。ぐっと近付いた顔から離れるように後ろに反れるけど、良太郎くんはその距離すらも詰めてしまう。
「ちげーよ! カメと一緒にすんな!」
「一緒にすんなってことは別人だ」
「あ」
「バカ!」
口が滑った、みたいな顔の良太郎くん。ハナさんから即座に腕を叩かれて、何か言いたげな顔をしたけど何も言わずに「クソ……」と押し黙った。
「他には? まだ居るの?」
「……おう。クマとリュウタだ」
「へ〜」
じゃあいつもの良太郎くんと、モモ、カメ、クマ、リュウタで、五人居るってことだ。多い。
「ハナさんはみんな知ってるの?」
「知ってますけど……咲涼さん、信じるんですか? 今の話」
「うん」
例えば良太郎くんが変な演技をしてるとか、もしくはイメチェンしようとしてるとか、そんな話よりはよっぽど信じられるから。
最近はこの辺も物騒で、変な怪人が襲って来たって噂をよく聞く。ニュースにも頻繁に取り沙汰される怪人の噂は……ただの都市伝説だと割り切ることもできないくらい被害が出ている。
良太郎くんのギネス級不運体質も本当だし、急に現れ始めた怪人もきっと本当。それなら良太郎くんの中に居るっぽい悪霊も本当なんでしょう。
現実味が無い、有り得ないって言い切るのは簡単。でもそれじゃつまんないし。
「オカルトって信じた方が面白いよ」
「……そうかなぁ」
