デフォルトは「水無月咲涼(ミナヅキ キスズ)」となります。
真の恋の道は、茨の道である。
What's your name?
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
12.真面目に働くその理由は?
「……二人とも、何やってるの?」
声をかけられそちらを見ると、ハナちゃんがきょとんとした表情で歩いてきた。
「げ、ハナクソ女……ぐぇっ!」
「今は良太郎じゃなくてバカモモなんだ?」
モモタロスに一発入れたハナちゃんは、私の方しか見ていない。体は良太郎くんなんだけど……あんまり気にしてない感じ?
「私がミルクディッパーに居るときは大体モモタロスだよ。色んな話を聞かせてくれるの」
「ふーん」
「何だよ、その目は……」
じと……と責めるような疑うような視線。ハナちゃんも愛理さんのことを慕ってるから、“愛理さんに迷惑かけてないでしょうね?”とか、“余計なことするんじゃないわよ”とか、そんなところだろう。
「心配要らないよ! モモタロスも仕事覚えてて、意外とちゃんとやってるから! 愛理さんに迷惑はかかってない……と、思う……」
見る限りは違和感なく作業できているような気がするけど、愛理さんから見てみれば変かもしれない。どうだろう。
ハナちゃんは私の不安げな言葉を気にした様子はなく、代わりに「え!?」と大きな声で驚いた。
「モモ、仕事覚えてるの!?」
「う、うっせぇなッ! コーヒー飲まねぇなら帰れッ!」
私はモモタロスに腕を引かれて店内へと戻り、続いてハナちゃんも入店した。
「結局来んのかよ……!」
「当たり前でしょ。そのためにここに居るんだから。ほら、仕事したら?」
さっきまでモモタロスが座っていた席にハナちゃんが座った。モモタロスは何か言いたげに「この……!」と拳を握ったけれど、その手でお盆を持ってカウンターの方へと向かう。
水を注いで、やや乱雑にハナちゃんの前に置く。そして「ご注文はッ! コーヒーだな!?」なんて、良太郎くんらしさの欠片もない聞き方をした。
「今日はアイスコーヒーにしようかな。咲涼さんもアイスコーヒーだし」
「冷たいのも美味しいよ」
「そうですよね! うん、今日はアイスコーヒーにする」
「姉さん! アイスコーヒー、一つ!」
ハナちゃんと二人でモモタロスの様子を見る。彼はグラスを用意したり、お客さんが退店した後の片付けをしたり、意外としっかり仕事をこなしていた。
「……思ったよりちゃんとしてる。モモのことだから、グラスを割ったりしてるかと思った。……グラス割りそうなのは他にも居るけど」
「え、だれ?」
「キンタロス……」
「あー……力が強いんだっけ……」
やがてハナちゃんの注文したアイスコーヒーを持ってきたモモタロス。私とハナちゃんの視線に居心地が悪そうにしている。
「何なんだよお前ら……!」
「べつに〜。……うん、アイスコーヒーも美味しい!」
モモタロスはまた少し仕事をして、落ち着いたら私の隣に座った。尾崎さんと三浦さんが遠くからチラチラ見てくるけど、そんなのは気にしない。
「モモ、何でアンタが仕事してるわけ? 良太郎に体返したらいいじゃない」
ハナちゃんがグラスを置いてモモタロスの方を向いた。その顔は怒っているように見える。けどたぶん、純粋に疑問が溢れているだけ。
「何でもいいだろ!」
彼は、答える気はないと言うように口を閉じた。
でも、私も気になるんだよね、それ。モモタロスは接客とか苦手そうだし、どうしてわざわざ大変なことをやるのかな〜って。
本当に気になるけど、教えてくれないんだろうな。
「つーかよ、咲涼……今度また、あのソフトクリーム食いに行くぞ」
言及を避けるようにモモタロスが話題を変えた。ハナちゃんはムッと顔をしかめたけれど、私は気にせず会話を続ける。
「うん、いいよ! 行こ! なに、あそこのソフトクリーム、気に入った?」
「まー、そんなとこだな」
「え、ちょっと待って、咲涼さん……モモと二人で出かけたの?」
ハナちゃんが怪訝そうな表情で私を覗き込む。私は首をひねって小さく唸った。
だってあれ、出かけた内に入るのかな。買い物のついでにソフトクリームを食べただけだし……買い物を名目にソフトクリームを食べに行ったというか……。
「なんだ? ハナクソ女。羨ましいかよ?」
返答に悩んでいる内に、モモタロスがいわゆるドヤ顔でハナちゃんを指差した。もちろん彼女はそれにカチンと来たようで「なによ! 自慢!?」と怒ってしまった。
「お前は咲涼と出かけたことなんか無ぇもんなぁ?」
「はぁ? どうせ良太郎の体使って勝手に出歩いただけでしょ!」
「あの……二人とも、喧嘩は……」
左右から飛び交う怒号をなだめようとする。けれどどちらも話を聞いてくれなくて、終いには「咲涼は黙ってろ!」「これはこっちの問題なので!」なんて言われてしまった。
私も、一応、当事者だと思うんですが……!
っていうか、二人とも私のこと好きすぎない? うれしい。私も二人のこと、すごく好き。
「……おい、何ニヤニヤしてんだ?」
モモタロスに言われて、慌てて口を押さえた。
「……ニヤニヤしてた?」
二人して大きく頷く。
顔に出ちゃってたか〜! いやぁ、だって嬉しいじゃんか。好きな人達には好かれたいよ。当たり前でしょ? 嫌われたい人間なんか居ないって!
「二人とも私のこと好きなんだな〜って思ってさ」
正直に白状すると、二人はそれぞれ咳払いをして「まぁ普通にな」「私はすっごく好きですよ!」などと答えた。
そこでまた喧嘩が起きちゃったけれど、もうこの二人に喧嘩は付きもの。止めるのは無駄だと思うことにして、コーヒーを飲んだ。
