デフォルトは「水無月咲涼(ミナヅキ キスズ)」となります。
真の恋の道は、茨の道である。
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10.砂の怪人。
「──それなら僕に釣られてみる? 咲涼ちゃん」
「……え?」
どこからか声が聞こえて当たり前を見回した。けれどモモタロス以外に人影は見えない。物陰に居るのかと思って覗いてみても見当たらない。
不思議に思ってモモタロスを見ると、彼はどこか下の方を見ていた。
「このスケベ亀……!」
「カメ……?」
モモタロスの視線を辿る。そこには地面から怪人の上半身が生えていて、恐ろしいことにその頭上には下半身が浮いていた。どちらも砂か何かでできているように見える。
「うわぁッ!?」
「おい、引っ付くな!」
「だって! な、何!? なにこれッ!?」
モモタロスの背中に隠れて、影から砂の怪人を伺う。彼の二の腕を掴む手にぎゅっと力が入ってしまうけれど、モモタロスは無理に振り解こうとはしなかった。
怪人は慌てふためく私を少し笑い、すぐ「酷いなぁ〜」なんて首を振る。
「僕だよ、ぼーく。ウラタロス!」
「う、ら、たろ、す……」
ウラタロスって、あの優男!?
「え、こ、こんにちは!」
「ふふ、こんにちは」
私はモモタロスの背中から離れて、ウラタロスの正面にしゃがみ込む。なんで上半身と下半身が入れ替わってるんだろう。砂なのもどうして?
「え〜、こんな顔してるんだ」
「そうだよ。どう? 好みに合う?」
「うーん……」
想像してた顔とはちょっと違う。とは言え整った顔立ちではある。確か……浦島太郎に出てくる海亀のイメージだっけ。だからウラタロス。
「……意外と可愛い顔してるんだねっ」
「えっ!? 僕が!? 可愛い顔!?」
冷静な人だと聞いていたけど、ウラタロスは裏返った大きな声を出した。どこからか手鏡を取り出し自分の顔をよーく見て、それから「僕が可愛い顔だって!?」と同じような言葉を繰り返した。
そんなに驚くこと? 目は丸くて大きくて、困ったような口はチャーミング。手放しにイケメンというよりは、可愛らしさもあると思うんだけど……。
「咲涼」
モモタロスが私を見下ろす。その顔は心底呆れたって感じ。
「センスねぇぞ」
「先輩、それ嫉妬? 醜いよ〜?」
「何だと亀このッ!!」
くすくす笑いながらモモタロスを指差したウラタロス。モモタロスは舌打ちと共にウラタロスを踏んづけてしまい、ウラタロスは砂となって散った。
私は驚いて、しゃがみ込んだまま砂を掻き集める。
「何してるのモモタロス!? 粉々になっちゃった……!」
イマジンの命ってこんなに儚いの? 嘘でしょ? これで戦うなんて無理なんじゃ……。この砂をどうにかしたらウラタロスも戻ってくるかな……?
「こんなんで死なねぇよ。汚ぇから触るな、それ」
「でも……」
じゃあどこに行ったんだろう。そもそもどこから出てきたんだろう。そういえばモモタロス達ってデンライナーの中でしか姿を見せられないって聞いてたけど、さっきのウラタロスは何……?
「咲涼ちゃんは優しいね」
色々なことをぐるぐる考えていたらまた声が聞こえた。横を見るとウラタロスが「やっほ〜」なんて手を振ってくるから、私もそれに手を振って返した。
「この砂の状態は脆いけど、脆いからこそ何度でも釣れるんだよね」
「釣れる?」
首を捻ると、モモタロスが「死にやしねーってことだよ」と補足してくれた。なるほどねぇ。よく分かんないけど、そういうものなんだね。
「ウラタロスって釣りが好きなの?」
「好き……そうだね、嫌いじゃないよ。咲涼ちゃんと比べれば月とスッポンだけど。もちろん、咲涼ちゃんが美しい満月だよ」
「軟派〜」
「靡かないね〜」
顔を見合わせて笑っていたら、モモタロスが大きな大きな舌打ちをした。
「オイ咲涼、帰るぞッ!」
「先輩、邪魔しないでよ。今喋ってるの分からない?」
「うるせぇスケベ亀ッ!!」
モモタロスはまたウラタロスを踏みつけてぐしゃぐしゃにしてしまった。だから何でそんなことするの!
少し待ってみたけど、ウラタロスはもう出てこなかった。私は服に飛んできた砂を軽く払ってから立ち上がる。
「愛理さんも待ってるだろうし、確かに帰った方がいいね」
「おう」
モモタロスが居たんじゃゆっくり話せない。……というか、あんな風に出てきてもいいの? 誰かに見られていたら困るんじゃないだろうか。
でも他の……悪いイマジンは人目を気にしてはいない。気にするくらいなら誰かを襲ったりしないんだから。
イマジンは別に、身を隠してるわけじゃないのかな。モモタロス達も、あの砂で形作られた姿でしか過ごせないから現実世界には居ないだけ。……うん、そうかも。
「モモタロスも今度、さっきのウラタロスみたいに会いに来てよ」
「何でだよ」
「モモタロスの顔、見たいから」
キンタロスやリュウタロスも来てくれたらいいのに。会いたいのは私だけ?
「……俺の顔見てビビんなよ」
「ごめん、それは保証できないかも」
モモタロスは鬼だって聞いた。鬼って実際に居たらどんなものか想像しにくいけど、きっと秋田のなまはげとか……そういう感じだと思う。どう考えても怖いじゃん。
……でも、どんなに怖くてもモモタロスだからね。
「たぶん、大丈夫」
「多分かよ」
「うーん、ぜったい?」
「疑問系かよっ!」
